24 / 70
23.経過は良好
しおりを挟む
「おい、起きろ、ルイ」
「うぁい」
アクスに肩を揺すられて、俺は頭をガクガクしながら返事をした。
場所はアクスの部屋だ。
もう入学から八ヶ月。
あらかたのカプがまとまり、ひたすらいちゃつきだした近頃、俺は中々ハードな日々を送っていた。早朝は図書館に向かい、日中は当然ながら授業を受け、その合間で様々な場所に駆け回る。深夜は同じ寮のセナとミレイ達を見守ったり、聞き耳立てたり、相変わらず時々やってきてあれこれしてるアデルとカイルにも注意を払ったりしていた。
日中はニアさんと手分けしているとはいえ寮では一人なもんだから、結構忙しくて、というか、精神的な興奮が激しいのでオフになると眠気が酷いのだ。ニアさん曰くアクスとクルスのストーリーが動きだすのはもうそろそろらしいけど。まだなので、ついアクスの側ではオフになりがちなんだよ。
「いや、起きろって言ってんだが」
「うぇい」
「………」
ああ、このベッド、シャンプーと同じシトラスの匂いがする。まぁ、そりゃそうか、シャンプーで頭洗ってここで寝るんだもんな。うん。いい匂いだ。おやすみなさい。
めっちゃ起こされたんだけど、起きれなくて、アクスのベッド占領した俺の意識が、次に覚醒した時。
抑えた声でアクスと誰かが会話しているのが聞こえた。
「そうか。それで? お前はどうするつもりなんだ?」
「どうも何も…どうしようもないよ」
いつかのような、告白とかそういう甘い感じではないらしい。
俺はのそりとベッドから這い出して、暗い寝室の扉に近付いてぺたりと耳を扉にくっ付けた。
「私の事は今更だ、それより、お前はどうなんだ?」
「俺の方こそ今更だな。まぁ、あと一年、やれるだけはやってみるさ」
「そうか」
何だろう。
この声聞き覚えが…ってああ!
クルスじゃん。
この声クルスだよ。
え、嘘。やばい、もしかして俺起こされた時に帰らなかったから二人のお邪魔虫になってるんじゃ。
そろそろだって聞いてたけど、まだだと思って油断してた。でも、考えてみればイベント以前からアデルとカイルだってできてた訳で、此処だってもう繋がりはあるんだからいつナニがあってもおかしくない訳で、ってもうやっちまったぁ。
俺の焦燥感が漏れ出してしまったのかどうかは解らないが。
急に耳を付けていた扉が開いた。
かなり絞ったランプの灯りを後光に、アクスが立って見下ろしている。
「えへ」
「お前なぁ」
だって盗み聞きが趣味なんだもん。とか言う空気ではなさそうだな。本気で呆れられとる。
額を押さえるアクスの背後から、クルスの小さな笑い声が聞こえた。
「お邪魔みたいだから、私は帰るよ」
「ああ、解った」
え、待って、むしろお邪魔なのは俺だろうから俺が帰ります、って思ってすぐ口に出す。
「すみません。俺が帰りますから」
「アクスに泊めてもらった方がいいと思うよ。もう寮の門限が過ぎてるから。じゃあね」
「え」
「じゃあな」
慌てて時計を確認する俺を残して、クルスは出て行ってしまう。
「なんかすみません」
「ベッドを占領した件か? 親切に起こしてやったのに起きなかった件か?」
「…両方ともです」
「端に寄ってくれればそれで良いし、疲れてたんだろ。怒ってねぇよ」
アクスは溜息混じりに笑って、俺の頭を撫でながらそう言った。
兄貴、俺一生付いて行きます。とか、感動する場面かもしれないけど、一生付いてっちゃうと、アクスとクルスがあれこれできないだろうから、俺は無言で頭を撫でられるにとどめた。
ていうか、アクスの手が温かくて、ぶっちゃけ眠気がまたそこまで来ていたんだわ。本当、申し訳ない。
「うぁい」
アクスに肩を揺すられて、俺は頭をガクガクしながら返事をした。
場所はアクスの部屋だ。
もう入学から八ヶ月。
あらかたのカプがまとまり、ひたすらいちゃつきだした近頃、俺は中々ハードな日々を送っていた。早朝は図書館に向かい、日中は当然ながら授業を受け、その合間で様々な場所に駆け回る。深夜は同じ寮のセナとミレイ達を見守ったり、聞き耳立てたり、相変わらず時々やってきてあれこれしてるアデルとカイルにも注意を払ったりしていた。
日中はニアさんと手分けしているとはいえ寮では一人なもんだから、結構忙しくて、というか、精神的な興奮が激しいのでオフになると眠気が酷いのだ。ニアさん曰くアクスとクルスのストーリーが動きだすのはもうそろそろらしいけど。まだなので、ついアクスの側ではオフになりがちなんだよ。
「いや、起きろって言ってんだが」
「うぇい」
「………」
ああ、このベッド、シャンプーと同じシトラスの匂いがする。まぁ、そりゃそうか、シャンプーで頭洗ってここで寝るんだもんな。うん。いい匂いだ。おやすみなさい。
めっちゃ起こされたんだけど、起きれなくて、アクスのベッド占領した俺の意識が、次に覚醒した時。
抑えた声でアクスと誰かが会話しているのが聞こえた。
「そうか。それで? お前はどうするつもりなんだ?」
「どうも何も…どうしようもないよ」
いつかのような、告白とかそういう甘い感じではないらしい。
俺はのそりとベッドから這い出して、暗い寝室の扉に近付いてぺたりと耳を扉にくっ付けた。
「私の事は今更だ、それより、お前はどうなんだ?」
「俺の方こそ今更だな。まぁ、あと一年、やれるだけはやってみるさ」
「そうか」
何だろう。
この声聞き覚えが…ってああ!
クルスじゃん。
この声クルスだよ。
え、嘘。やばい、もしかして俺起こされた時に帰らなかったから二人のお邪魔虫になってるんじゃ。
そろそろだって聞いてたけど、まだだと思って油断してた。でも、考えてみればイベント以前からアデルとカイルだってできてた訳で、此処だってもう繋がりはあるんだからいつナニがあってもおかしくない訳で、ってもうやっちまったぁ。
俺の焦燥感が漏れ出してしまったのかどうかは解らないが。
急に耳を付けていた扉が開いた。
かなり絞ったランプの灯りを後光に、アクスが立って見下ろしている。
「えへ」
「お前なぁ」
だって盗み聞きが趣味なんだもん。とか言う空気ではなさそうだな。本気で呆れられとる。
額を押さえるアクスの背後から、クルスの小さな笑い声が聞こえた。
「お邪魔みたいだから、私は帰るよ」
「ああ、解った」
え、待って、むしろお邪魔なのは俺だろうから俺が帰ります、って思ってすぐ口に出す。
「すみません。俺が帰りますから」
「アクスに泊めてもらった方がいいと思うよ。もう寮の門限が過ぎてるから。じゃあね」
「え」
「じゃあな」
慌てて時計を確認する俺を残して、クルスは出て行ってしまう。
「なんかすみません」
「ベッドを占領した件か? 親切に起こしてやったのに起きなかった件か?」
「…両方ともです」
「端に寄ってくれればそれで良いし、疲れてたんだろ。怒ってねぇよ」
アクスは溜息混じりに笑って、俺の頭を撫でながらそう言った。
兄貴、俺一生付いて行きます。とか、感動する場面かもしれないけど、一生付いてっちゃうと、アクスとクルスがあれこれできないだろうから、俺は無言で頭を撫でられるにとどめた。
ていうか、アクスの手が温かくて、ぶっちゃけ眠気がまたそこまで来ていたんだわ。本当、申し訳ない。
1
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
BLが蔓延る異世界に転生したので大人しく僕もボーイズラブを楽しみます~愛されチートボーイは冒険者に溺愛される~
はるはう
BL
『童貞のまま死ぬかも』
気が付くと異世界へと転生してしまった大学生、奏人(かなと)。
目を開けるとそこは、男だらけのBL世界だった。
巨根の友人から夜這い未遂の年上医師まで、僕は今日もみんなと元気にS〇Xでこの世の窮地を救います!
果たして奏人は、この世界でなりたかったヒーローになれるのか?
※エロありの話には★マークがついています
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
プロデューサーの勃起した乳首が気になって打ち合わせに集中できない件~試される俺らの理性~【LINE形式】
あぐたまんづめ
BL
4人の人気アイドル『JEWEL』はプロデューサーのケンちゃんに恋してる。だけどケンちゃんは童貞で鈍感なので4人のアプローチに全く気づかない。思春期の女子のように恋心を隠していた4人だったが、ある日そんな関係が崩れる事件が。それはメンバーの一人のLINEから始まった。
【登場人物】
★研磨…29歳。通称ケンちゃん。JEWELのプロデューサー兼マネージャー。自分よりJEWELを最優先に考える。仕事一筋だったので恋愛にかなり疎い。童貞。
★ハリー…20歳。JEWELの天然担当。容姿端麗で売れっ子モデル。外人で日本語を勉強中。思ったことは直球で言う。
★柘榴(ざくろ)…19歳。JEWELのまとめ役。しっかり者で大人びているが、メンバーの最年少。文武両道な大学生。ケンちゃんとは義兄弟。けっこう甘えたがりで寂しがり屋。役者としての才能を開花させていく。
★琥珀(こはく)…22歳。JEWELのチャラ男。ヤクザの息子。女たらしでホストをしていた。ダンスが一番得意。
★紫水(しすい)…25歳。JEWELのお色気担当。歩く18禁。天才子役として名をはせていたが、色々とやらかして転落人生に。その後はゲイ向けAVのネコ役として活躍していた。爽やかだが腹黒い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる