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15.保健室にて
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俺がシャワールームから飛び出すと、二アさんはもうそこに居て、保健室の先生ことスレインと談笑していた。
「はやくないですか」
「女の子にはいろいろな技があるのだよ」
「そう、ですか」
よく解らないが頷いておこう。
「じゃあ、先生、後はお願いします。私達、教室に戻りますので」
「はい。解りました」
スレインは笑顔で頷いているが、俺にはさっぱり解らない。だが、ニアさんがいい笑顔を浮かべている以上、予想はつく。会釈をしてニアさん共々保健室を出て行った。
素早く人差し指を立てて唇に当てるニアさんに、頷き返す。
今出てきたばかりの保健室の扉を、相変わらずのマジックハンドで音も立てずに横にずらし、ニアさんは隙間を作った。
そろーっと二人して覗き込むと、シャワー室を出てきたグランが困った顔で立ち尽くす。
「二人は授業に向かったよ」
「あ、じゃあ、僕も…」
「待って。二人に聞いたよ。友達を庇って下敷きになったんだろう? きっと打ち身が出来てるから見てやってって、頼まれてるんだ。こっち座って」
「いえ、僕、大丈夫です」
「痛みはなくても、打ち身とかも薬を塗っておいた方が痕がなく治りが早いから、ほら、おいで」
元々グランは固辞するという事はできなさそうだし、スレインの優しい態度にも落ち着いたのだろう。おずおずと近付いて、寝そべる事もできる診察台に腰掛けた。ニアさんによって膝を打っているはずだと聞いているスレインは、グランの足元に跪いて、ズボンの裾を捲くり上げた。
自分の足にどんな傷痕が有るのか、グランは解っているのだろう。息を飲んだスレインからそっと目を逸らして、悲しそうに俯いていた。
「痛いかい?」
「…いえ、もう」
「そう、良かった」
スレインはそっとグランの傷痕を辿るように触れる。
「んっ…先生、あの、くすぐったいです」
「ああ、ごめんね」
スレインは呟くと、反対のズボンも捲くり上げ、その両足共に拘束を受けたような擦過傷痕や白い火傷痕を見つけて溜息を吐いていた。
「こっちへ」
グランの手をとって立たせると、カーテンが引けるベッドへと連れて行く。
ああ、見えなくなってしまったと俺が思っていると、マジックハンドのニアさんは音を立てずに引き戸を開け、室内へ滑り込んだ。親指を立ててイイ顔をするニアさんに思わずトゥンクしたが、そんなのは一瞬で、俺もさささっと虫のような動きで室内へ入り込む。
俺達がこそこそ覗いている等とは思いもしていないだろう二人は、ベッドの上に居た。
「はやくないですか」
「女の子にはいろいろな技があるのだよ」
「そう、ですか」
よく解らないが頷いておこう。
「じゃあ、先生、後はお願いします。私達、教室に戻りますので」
「はい。解りました」
スレインは笑顔で頷いているが、俺にはさっぱり解らない。だが、ニアさんがいい笑顔を浮かべている以上、予想はつく。会釈をしてニアさん共々保健室を出て行った。
素早く人差し指を立てて唇に当てるニアさんに、頷き返す。
今出てきたばかりの保健室の扉を、相変わらずのマジックハンドで音も立てずに横にずらし、ニアさんは隙間を作った。
そろーっと二人して覗き込むと、シャワー室を出てきたグランが困った顔で立ち尽くす。
「二人は授業に向かったよ」
「あ、じゃあ、僕も…」
「待って。二人に聞いたよ。友達を庇って下敷きになったんだろう? きっと打ち身が出来てるから見てやってって、頼まれてるんだ。こっち座って」
「いえ、僕、大丈夫です」
「痛みはなくても、打ち身とかも薬を塗っておいた方が痕がなく治りが早いから、ほら、おいで」
元々グランは固辞するという事はできなさそうだし、スレインの優しい態度にも落ち着いたのだろう。おずおずと近付いて、寝そべる事もできる診察台に腰掛けた。ニアさんによって膝を打っているはずだと聞いているスレインは、グランの足元に跪いて、ズボンの裾を捲くり上げた。
自分の足にどんな傷痕が有るのか、グランは解っているのだろう。息を飲んだスレインからそっと目を逸らして、悲しそうに俯いていた。
「痛いかい?」
「…いえ、もう」
「そう、良かった」
スレインはそっとグランの傷痕を辿るように触れる。
「んっ…先生、あの、くすぐったいです」
「ああ、ごめんね」
スレインは呟くと、反対のズボンも捲くり上げ、その両足共に拘束を受けたような擦過傷痕や白い火傷痕を見つけて溜息を吐いていた。
「こっちへ」
グランの手をとって立たせると、カーテンが引けるベッドへと連れて行く。
ああ、見えなくなってしまったと俺が思っていると、マジックハンドのニアさんは音を立てずに引き戸を開け、室内へ滑り込んだ。親指を立ててイイ顔をするニアさんに思わずトゥンクしたが、そんなのは一瞬で、俺もさささっと虫のような動きで室内へ入り込む。
俺達がこそこそ覗いている等とは思いもしていないだろう二人は、ベッドの上に居た。
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