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第一章 新世界から冒険する賭剣士
第18話 ミイの成長秘話
しおりを挟む夢から目覚めたミイは拒絶反応を起こした。
一旦はジェントルマンの抑制を振りほどいたが、力の差は歴然だ。
ジェントルマンはミイの身体を押さえつけ、着ていた服を引き裂いた。
悲鳴を上げるミイ。
ジェントルマンは叫ぶミイの口を押さえようともしなかった。
ミイは足や手で抵抗し、助けが来るでの時間を稼ごうとしていた。
抵抗し続けるミイ。数十秒経っても誰も駆けつけてくれない。
この大きな声が聞こえないとでも言うのか。
と、瞬時に頭の中に過ったが誰も駆けつけない理由が一目瞭然。
扉が少し開いている。隙間から流し目でこちらを確認する執事やメイド。
このジェントルマンに仕える者たちだ。
ミイは希望を失い、力が抜けてくる。
徐々に瞼が重くなり、視界が真っ暗になったー
※ ※ ※
〈朝〉
変な夢を見たー
襲われる夢ー
ミイは頭を抱えた。頭がガンガンに痛い。
周囲を確認するが特に変わった様子も無い。
引き裂かれた服も、夜と何も変わらない。
夢だったのか?
少し安堵したミイは着替えを行うため、執事から言われた引き出しを開けた。
引き出しの中には、ミイが着ているパジャマ。
色も形も皆一緒。
何着も敷き詰められていた。
部屋に備え付けられた簡易的なキッチンの床には
段ボール詰めにされた2Lペットボトルのオレンジジュースが3箱積み重なっていた。
化粧台の鏡で自身を見ると、首元に内出血の跡。
ミイは半信半疑のまま、ダイニングへ降りるとテーブルには朝食が用意されていた。
執事が挨拶を交わすが、まともに挨拶を返せなかった。
ジェントルマンは顔を新聞紙で隠れ表情を窺えない。
「おはよう」
新聞越しにジェントルマンは挨拶を交わすと、小さな声でミイは返した。
フォークを手にするが
並ぶ食事を食したいが食せない恐怖にかられていた。
メイドがジェントルマンに、グラス一杯の水とカプセル薬を手渡した。
そのカプセルをジェントルマンは飲むと、口から数適溢れる水を手で拭いながら、ミイを舐め回すように見つめた。
ミイは全身に鳥肌が立ち、フォークが手から拒絶。
恐怖で言葉にならない。
執事やメイドも平然と仕事をしている。
どうかしている。
まず1番に
私の身体はどうなった? その事ばかりが頭を過った。
2番目に
一刻もこの家から抜け出さなければ
3番目に
どうやって家から抜け出すか
「落ち着きなさい」
「安心していい」
「私は病気なのだよ」
「・・・」
「無精子症という病気でね」
「私の精液に精子は存在しないんだよ」
そういうことじゃない。
道理に反した行為だ。
ミイはジェントルマンの言う通りに一度落ち着きを保つと、再度フォークを握りしめ、ジェントルマンの顔面にめがけて穂先を向けたー
フォークはジェントルマンの頬へ突き刺さり、差し込まれた反動で皮膚が引っ張られ、垂れ下がった。
血液の一滴すら出ない。皮膚が裂けただけ。
裂けた皮膚の中で動く黒い物体。
低い声。
「何だこのざまは」
「貴様! 何の仕打ちだ」
「金は渡しただろ」
「!!・・・」
「たく、人間という者は脆く、感情的で自分勝手すぎる」
「等価交換。お金と性欲。正しい判断じゃねーか!?」
「人間の道理を通しただけだろ!」
ジェントルマンは垂れ下がった自身の皮膚を引きちぎった。人間の皮を被った何か、
人間の様で人間でない。
額の皮膚からメキメキと2本の角、八重歯が伸びる。
真っ黒い瞳からパッチリとした目。
肌は人間の皮膚に近く、筋肉質の身体。
鬼。
「人間の環境化での常識じゃないのか?」
こいつらは何を言っているのだと疑問と恐怖にかられるミイ。
「俺らにとっちゃ、人間はただの生産機に過ぎない」
「なのに、金まで払ってこの仕打ち」
「落とし前は付けてもらうぞ」
鬼はテーブルを全てひっくり返した。
ミイは数mほど下がり構えた。
執事やメイドは平然としている。
ミイは表情を確認すると、元ジェントルマンと同じ状況だろうと理解した。
「そんな身構えるな」
「別に取って食おうってわけじゃない」
「やってもらいたいことがあるだけだ」
ミイは鬼の言うことなんか聞く訳は無いが
とりあえず話だけでも耳を傾けた。
「単純な話だ」
「俺らの生産機になってくれればいい」
「皆心待ちにしている」
「ただそれだけのことだ」
鬼はよだれを垂らしながら言った。
執事やメイドも表情は平然としているが、口元が緩み、よだれが垂れ始めた。
イカれているー
鬼の爪が10センチ程伸びた。狩り。
素早い動き。一瞬にして鬼の手がミイの口を押さえ持ち上げた。
動きが取れず足をバタバタするが、筋肉質野身体に抵抗など出来ない
執事やメイドも集まりミイは注目を集める。
この状況からどうにか抜け出さないと・・・
脳をフル回転させていると、執事がこちらへ針を向けた。
注射器だ。
含まれる液体が何なのか粗方予想はつく。
ミイは激しく抵抗した。
それを阻害するように、メイドが手足を抑え、袖を捲った。
注射器の針管から垂れる透明の液体が恐怖感を引き立てる。
ゆっくりとミイの腕に進行を進める注釈は、皮膚から角度45度程度の角度から真っすぐに刺さった。
メイドが押子に可能な限り早く親指で圧力を加えた。
すると、黒いガスケットが目盛りを5から4、4から3、3から2、2から1へと前進させている。
液体が血液と結合してしまった。
見えるのは笑顔の鬼。
徐々に曇るその笑顔。
ミイは意識を失ったー
「(ここから抜け出さなければ・・・)」
「(どうしたらいい?)」
「(・・・・)」
「(造作も無い)」
「こいつらを・・・」
「(殺せばいい・・・)」
【NEXT】
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