魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

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さんじゅうきゅう。

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side.メリル
____________________

「じゃあ、また明日ね。リウ。…メリルも。」

そう言って研究室を出て行くセシルを見送る。

バタン、と小さな音がして扉が閉まった。

突っ立ったままのリウを見れば、下を向いていた。

ついに、セシルは話したのか。

そう思った。


_____リウが聖女と会った。



そう、セシルに話したのは自分だ。

まさか、彼女がここに来るとは思わなかったから。

この裏口から研究室までの敷地は、基本的に僕以外は立ち入れない。

これは、王国一の魔術師となった時に僕が国王に望んだことだから。

力があると言うことは、待望と嫉妬、色々な感情を向けられる。

昔から、煩わしかった。

それが面倒で、いつも研究室にこもるようになった。

例外は、ゼノとセシルだけだった。

それに最近加わったのが、リウ。

僕の中では、すでに大きな存在の3人。

いつまでもこんな日々が続くとは思ってもいなかったけれど。


____ゼノ団長は、数名の団員と一緒に、ドミニク王子と聖女様のところに行っています。


今日、ゼノに話そうと思って第1騎士団の元へ行くと、第1騎士団員にそう言われる。

王城に向かうと、2人を部屋に軟禁しているのだろう。

扉の前で見張りをしている彼等を見付けた。

僕を見たゼノの表情が、全て知っている。そう言っていた。

そうか。

なら、特に用はないと踵を返せば、メリル。と呼ばれる。

近付いてきたゼノは、僕に言った。


____明日、リウが国王に謁見することが決まった。


だろうな、と思った。

分かった。と返事をして、ゼノに背を向ければ、


____俺は、______。


感情を押し殺したような声が聞こえた。

その言葉は、僕だって____。



「リウ。」

「メリル、様……、」

彼女はいまだ、下を向いたまま。

「メリル様は、知っていたんですよね。」

そう言って顔を上げ、僕の目を見つめる。

「…ゼノさんも。」

「……そうだよ。」

彼女は、泣きそうな綺麗な瞳を向けた。

「全部、とは言えないけど、分かってた。」

「じゃあ…!」

「でも、」

彼女の言葉を遮るように言葉を続ける。

「これは、セシルが決めたことだ。」

国の王子だとか、関係ない。僕の、僕達の大事な存在の彼が決めたことだから。

そう言うと、唇を噛む彼女の姿が眼に映る。

僕の声は、震えていなかっただろうか。

僕の顔は、君が好きだと言う笑顔を浮かべていただろうか。

利用されていると知っても、その者を心配し、泣ける彼女はどれだけお人好しなのか。

バカなんじゃないかと思った。

怒って、良いのだ。

泣いて、

喚いて、

彼女には、そうするだけのコトがあったはずだ。

「私は、」

彼女の頬に、一筋の跡が出来る。

「思い通りになんて、させない。」

このままで、いてやるもんか。

そう言った彼女に、

「メリル様、お願いがあります。」

僕は、今度こそ笑えた気がした。
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