魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu

文字の大きさ
上 下
39 / 53

さんじゅうきゅう。

しおりを挟む
side.メリル
____________________

「じゃあ、また明日ね。リウ。…メリルも。」

そう言って研究室を出て行くセシルを見送る。

バタン、と小さな音がして扉が閉まった。

突っ立ったままのリウを見れば、下を向いていた。

ついに、セシルは話したのか。

そう思った。


_____リウが聖女と会った。



そう、セシルに話したのは自分だ。

まさか、彼女がここに来るとは思わなかったから。

この裏口から研究室までの敷地は、基本的に僕以外は立ち入れない。

これは、王国一の魔術師となった時に僕が国王に望んだことだから。

力があると言うことは、待望と嫉妬、色々な感情を向けられる。

昔から、煩わしかった。

それが面倒で、いつも研究室にこもるようになった。

例外は、ゼノとセシルだけだった。

それに最近加わったのが、リウ。

僕の中では、すでに大きな存在の3人。

いつまでもこんな日々が続くとは思ってもいなかったけれど。


____ゼノ団長は、数名の団員と一緒に、ドミニク王子と聖女様のところに行っています。


今日、ゼノに話そうと思って第1騎士団の元へ行くと、第1騎士団員にそう言われる。

王城に向かうと、2人を部屋に軟禁しているのだろう。

扉の前で見張りをしている彼等を見付けた。

僕を見たゼノの表情が、全て知っている。そう言っていた。

そうか。

なら、特に用はないと踵を返せば、メリル。と呼ばれる。

近付いてきたゼノは、僕に言った。


____明日、リウが国王に謁見することが決まった。


だろうな、と思った。

分かった。と返事をして、ゼノに背を向ければ、


____俺は、______。


感情を押し殺したような声が聞こえた。

その言葉は、僕だって____。



「リウ。」

「メリル、様……、」

彼女はいまだ、下を向いたまま。

「メリル様は、知っていたんですよね。」

そう言って顔を上げ、僕の目を見つめる。

「…ゼノさんも。」

「……そうだよ。」

彼女は、泣きそうな綺麗な瞳を向けた。

「全部、とは言えないけど、分かってた。」

「じゃあ…!」

「でも、」

彼女の言葉を遮るように言葉を続ける。

「これは、セシルが決めたことだ。」

国の王子だとか、関係ない。僕の、僕達の大事な存在の彼が決めたことだから。

そう言うと、唇を噛む彼女の姿が眼に映る。

僕の声は、震えていなかっただろうか。

僕の顔は、君が好きだと言う笑顔を浮かべていただろうか。

利用されていると知っても、その者を心配し、泣ける彼女はどれだけお人好しなのか。

バカなんじゃないかと思った。

怒って、良いのだ。

泣いて、

喚いて、

彼女には、そうするだけのコトがあったはずだ。

「私は、」

彼女の頬に、一筋の跡が出来る。

「思い通りになんて、させない。」

このままで、いてやるもんか。

そう言った彼女に、

「メリル様、お願いがあります。」

僕は、今度こそ笑えた気がした。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

彼の愛が重い 重すぎる

keikocchi
ファンタジー
次期王妃になりたくない私は 策をねる

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...