魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

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さんじゅうさん。

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桃山ももやま こずえ

私の、前の世界の唯一のお友達で、大切な人。

私には手の届かない場所に行ってしまった、優しい子。

もうすぐハロウィンだね、って笑ってた、可愛い子。

その子は、私と同じ歳だった。

こんな、

_____幼くはなかった。




「りっちゃん!やっと会えた…っ!」

そう言って涙する子は誰だろう…?

彼女は、

ふわふわした感じの子で、

でも、

いつも元気いっぱいで、

私には、

眩しかった。

そう。

こんな感じで、

嬉しいことがあったら、

大きな目に涙をためて笑う子だった。

こんな感じで、

「…りっちゃん!!!」

私を、呼ぶ子だった。



何も理解できていないのに、頬を伝う涙が止まらない。


聞きたいことはいっぱいある。

言いたいこともいっぱいある。

ねぇ、なんでここにいるの?

ねぇ、なんで幼くなってるの?

ねぇ、なんで私がいるってわかったの?

ねぇ、なんで…なんでいなくなっちゃったの?

寂しかった。

辛かった。

悲しかった。



_____大好きだよって、伝えたかった。





「こずえ、ちゃん。」

「うん。りっちゃん。」

「…こ、ずえ、ちゃん…、」

「うんうん。こずえだよ。」

「会いた、かった…っ!」


あの頃より、少しだけ低くなった彼女に手を回せば、その存在の大きさを、私の中に感じた。





どのくらいそうしていたのだろう。

廊下には、私達のすすり泣く音しかしない。

そんな私達の空気を動かしたのは、

「リウ。遅いけど何して……本当、なにしてるの?」

我等が天使、メリル様だった。




「そんなところにいたら目立つから、早く入りなよ。」

不細工な泣き顔も見せたくないでしょ。

そう言って、扉を開けてくれた。

私達はそれに従い、室内に入る。

私達が向かい合うように座れば、メリル様がハーブティーをいれてくれる。

これで少しは落ち着くんじゃない?と言うメリル様は本当に優しいと思う。

「それで、なんであんなところで抱き合ってたの?」

それに、君、聖女様でしょう?

私の隣に腰かけたメリル様は、こずえちゃんにそう問いかける。

その言葉に、私は驚いた。

「聖女、様…?こずえちゃんが…?」

あ、いや、なっていてもおかしくはないくらいの子だけど……。

信じれなくて、目の前の彼女を見れば、

「…はい。この世界に来てからは、そう呼ばれています。」

そう、返事をした。




私の中で、時が止まった気がした。

あの時、手を差し伸べてくれた少女を思い出した。

視界が滲んでいて、顔は覚えていない。

正直、声も曖昧だ。

でも、黒髪だったという事実は覚えている。

この世界では、黒髪は聖女様だけ。

……私は例外だけど。

目の前の彼女は、黒髪黒目。

私の知っている子より、少し見た目は幼いけど。

心が優しい、女の子。

私を、助けようとしてくれた子。

なぜ、あの時気付かなかったのだろう。

こんなにも、近くにいたのに…。

「こ、ずえ、ちゃん、」

「なに?りっちゃん?」

「泉で、あった時、なんだけど……、」

「泉?…あぁ。あの時だね。」

そう言って苦笑いする彼女に、私は首をかしげる。

どうしたのだろうか?

そんな私に彼女は言った。



_____記憶がなかったの。



どういうことかと思った。

「すぐに思い出したんだけどね。」

10日くらいだったかな?それまでは、不安で仕方なかったよ。あっ、今は勿論全部思い出してます!

そう言って笑う彼女は、強い子だと思った。

そして、



_____助けてあげられなくて、ごめんね。




彼女は、私に起こったことを、知っていた。

それには、メリル様を驚いたのか、カップを置く手が止まった。

目を見開く私に、彼女は自分が来てからのことを話しだす。



それは、私とはまた違う物語_____。



それは、私にとっても______。





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