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じゅういち

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十分に体が温まった所で湯船を出る。

ペタペタと音を鳴らしながら浴室を出て、脱衣所に行くと、新しい服とタオルがあった。

パドマさんが持ってくると言っていたから、きっとこれを着れば良いのだろう。

この世界にはドライヤーがないのか見当たらない。

世界が違えば文明も違うのかと納得し、髪を拭き、体を拭く。

準備されていた物を手に取れば、下着も服も元の世界とさほど変わらないらしい。

白の下着を上下とも着用すると、ピッタリなサイズに少し恐怖を感じた。

それを誤魔化すように残りの服に手をかける。

薄青の無地のYシャツに、白のパンツを着る。

仕事に行くみたいだな。と思っていれば、床に置いてある薄茶色したショートブーツが目についた。

ここに来る前から履いていた靴はもうボロボロだったからな、とそのブーツを手に取り近くにある椅子に座る。

編み上げのブーツを少し時間をかけて履くと、前に流れ落ちてくるまだ湿り気のある髪が気になった。

さすがに髪をまとめる物まではないらしい。

ここに来る前に使っていた髪ゴムも森の中で落としたのかいつの間にか無くなっていた。

服が濡れるのが嫌で、もう一度タオルで髪を拭いていれば、脱衣所の扉が開く音がした。

「あら、あがってたの?ちょうど良かったわ。呼びに来たところだったの。」

そう言って私の近くに来たパドマさんに、服、ありがとうございます。とお礼を言えば、ぴったりだったでしょう?と笑う。

なんでも、実家が下着を扱っているらしく、以前私を着替えさせてくれた時にちゃっかり調べたらしい。

服はあまり身長も変わらないから私のだけど、と言うパドマさんは私の濡れた髪に手を伸ばす。

それにびくりと体を揺らせば、暖かい風が通った気がした。

「ほら、これで良いでしょう?」

「へ…?」

言われた意味が分からず、自身の髪に手を伸ばせば、サラサラと指が通った。

「あれ……髪が…。」

驚いてパドマさんを見ると、綺麗な緑の目を細め、これが魔法よ。とニヤリと笑う。

その姿に思わず、イケメン……っ、と呟いてしまったのは、仕方のないことである。




じゃぁ、食堂に行きましょうか。と連れてこられたのは、三つあった建物の真ん中の建物の中だった。

聞けば、ここは第1騎士団が生活している敷地で、門から見て一番左の建物が男子寮、真ん中が食堂や執務室などの仕事部屋が入っており、一番右、先ほど私たちがいた建物が女子寮となるとのことだ。

建物で見えないが、この敷地の奥には、屋外訓練場や馬小屋があるらしい。

さらに、この王国には13騎士団まであり、それぞれの騎士団にここと同じ物が与えられているらしい。

その話を聞いた私が、凄いですね。と言うと、まぁね。騎士団だし。と返ってくる。

その返事の意味はよく分からないが、この国の騎士団とはエリート集団だと言うことだけはなんとなく分かった。

そんな話をしている間に、一つの扉の前で立ち止まる。

「ここが食堂よ。」

そう言って扉を開けた先は、まだ私の目には眩しい色とりどりな髪と、整った顔の集団がいた。

「リウ。」

私が入った瞬間に、シン…、と静まり返った部屋で、ゼノさんの呼ぶ声が聞こえる。

声がする方を見ると、ここだよ。と、こちらに手を振るペティグリューさんがいて、ゼノさんとハロルド君が一緒に座っていた。

あちらに行けばいいのか?と考え、動かない私にパドマさんが手を引きそちらに連れて行かれる。

先にいた3人に頭を下げる私をハロルド君の隣に座らせ、私の逆隣にはパドマさんが座る。

目の前にはゼノさんで、ハロルド君の前にペティグリューさんと言う席順だ。

見知った面々にホッと安心すると、ペティグリューさんが、お前らこっち見過ぎ!飯食え!飯!と声をかけている。

それからザワザワと徐々に騒がしくなる頃、パドマさんとハロルド君が席を立つ。

一気に両隣が空き、寂しさを覚えれば、ゼノさんと目があった。

「パドマから説明は受けたか?」

その真剣な瞳にドキッとするが、返事
しなきゃと質問の意味を考える。

あ、多分、ここの寮とかのことかな?

「はい。パドマさんに教えていただきました。」

「そうか。」

そう言ったきり、ゼノさんは口を閉ざす。

2人が戻ってくるまで無言の空間が続くのかと思っていれば、次はペティグリューさんが口を開いた。

「そう言えばリウちゃん。」

「はい?」

「ゼノのことも名前で呼んでるのに、俺はまだそのままなの?」

「あっ…。」

そう言われ、森から王都への帰り道での出来事を思い出す。

顔を赤くする私に、ペティグリューさんは首を傾げ、ゼノさんは水を飲んでいた。

「別に呼び方なんてどうでも良いだろう。」

「ゼノは呼ばれてるからそう言うんだろ⁉︎」

俺も呼ばれたい!と言うペティグリューさんに、あの、じゃあ、アーロンさんって呼ばせてもらいますね。と言えば、そのワイルドな顔を綻ばせる。

この人は少年みたいに笑うな…。と思っていると、目の前にコトリ、と湯気のたつ料理がのったお盆を置かれた。

「ハロルド君、ありがとう。」

それを持って来てくれたのはハロルド君で、パドマさんはゼノさんとアーロンさんの前に料理がのったお盆を置いていた。

2人はこの為に席を立ったのかと、今更なことを思い、役に立てなかった自分を悔やむ。

片付けは私がしようと心に誓い、温かい料理に手をつけた。
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