7 / 9
少女に出会って3年後から。さん。
しおりを挟む
今日は、会いに来たと言っても、本当に彼女であるかの確認と、無事でいるかの確認だけだとヴァンス王子に言われている。
なぜ俺のことを話してはいけないのかと抗議すれば、もし彼女が君の事を忘れていたらどうする?それと、覚えていたとしても待っていなかったら?と言われ、俺は何も言えなかった。
不安と緊張で汗ばむ手に力を入れ、少し古びた食堂の扉を開ける。
カランカラン
そんな音が鳴りながら中に入ると、
「いらっしゃいま…せ……。」
元気な声が聞こえたかと思ったら、その声が尻すぼみになっていった。
目の前にいた女性は、ピンクの瞳を大きく見開き、ポカンと口を開けている。
あの頃よりも綺麗になっているこの女性が、彼女だとすぐに気付く。
柔らかいプラチナブロンドの髪を一つに結び、コップを両手に持っている彼女に、心臓がドクンと大きく鳴った。
俺に気付いているのかは分からないが、先に用事を済まさなければと、席を確認する。
その後、テキパキと片付けをした彼女は、どうぞお好きな席へ。と笑顔で言った。
その笑顔に、自分の顔が赤くなるのが分かる。
隠すようにお礼を言い、外に出ると、ニヤニヤとこちらを向いていた。
それに舌打ちしたい気分をグッと抑え、中へ促す。
ヴァンス王子が店に入った時、彼女が彼を呼ぶ声がした。
「久しぶりだね、レイラ。」
そう言って、彼女に笑みを向けるヴァンス王子に嫉妬心が芽生える。
俺はこんなにも心の狭い男だったのかと、苦笑した。
フランはここね。とヴァンス王子に言われ、彼の向かいの席に座る。
水を配り終えた彼女に、料理を注文すれば、周りからの視線が痛かった。
カウンターに注文の書いた紙を渡したのを確認すると、ヴァンス王子が彼女を呼ぶ。
ヴァンス王子が、こちらを見てニヤリと笑った気がした。
なんでしょう?と言って近付いてくる彼女に、心臓が早くなる。
そんな俺の状況などお構い無しに、ヴァンス王子は彼女と話を進めていた。
何回か言葉を交わしているのを耳にした時、ヴァンス王子が、初恋の人かと質問した。
その言葉に目を丸くしたのは、彼女だけではない。俺もだ。
そんな話を聞いたのは初めてだ、と彼に視線を送る。
初恋の人が誰だかは分からないが、その人の為に大事な婚約を破棄したと言うのだろうか?
それなら、俺に勝ち目なんて……。と思った気持ちは、すぐにかき消された。
彼女が、首元につけていた、あのネックレスを大事そうに触れたからだ。
なぜ今までそこにあるのを気付けなかったのかと、自分を責めるのと同時に、心が震えた。
彼女の、今でも忘れられない。と言う言葉を聞き、今すぐに口を開きたいのをグッと堪える。
レイラちゃん!とその後すぐに呼ばれた彼女は、料理を運び始める。
美味しそうに湯気のたつ料理は、緊張で味が分からなかった。
食事が終わり、会計を済ませ外に出る。
馬車や馬の準備をしている中、ヴァンス王子が彼女と話をしていた。
準備が終わり、ヴァンス王子を見送る彼女の近くに行く。
最後に、どうしても確認しておかなければならない事があるのだ。
彼女の名前を呼び、俺の名前を教えれば、フラン様、と名を呼ばれる。
夢にまで見たその言葉に、自分でもひくくらい気分が高揚した。
「初恋の人、と言うのはまだ忘れられないのですか?大事な婚約を、無しにしてしまうほどに。」
そう彼女に聞くと、その綺麗な瞳でこちらを見つめ返してくる。
「……そうですね。私もバカだとは思っているのですが。」
おかげで、結婚適齢期も過ぎそうです。と彼女は笑った。
そんな彼女に、胸が苦しくなる。
背後から小さな声で、出るぞ。と団長が言った。
最後に一つだけ、と思い、深く息を吸い、口を開く。
「会いたいと、思いますか。…迎えに来て欲しい、と。」
緊張で乾いた口から出たのは、呟くような声だった。
しかし彼女にはちゃんと届いたらしい。
「はい。」
綺麗な笑顔で、そう、答えた。
なぜ俺のことを話してはいけないのかと抗議すれば、もし彼女が君の事を忘れていたらどうする?それと、覚えていたとしても待っていなかったら?と言われ、俺は何も言えなかった。
不安と緊張で汗ばむ手に力を入れ、少し古びた食堂の扉を開ける。
カランカラン
そんな音が鳴りながら中に入ると、
「いらっしゃいま…せ……。」
元気な声が聞こえたかと思ったら、その声が尻すぼみになっていった。
目の前にいた女性は、ピンクの瞳を大きく見開き、ポカンと口を開けている。
あの頃よりも綺麗になっているこの女性が、彼女だとすぐに気付く。
柔らかいプラチナブロンドの髪を一つに結び、コップを両手に持っている彼女に、心臓がドクンと大きく鳴った。
俺に気付いているのかは分からないが、先に用事を済まさなければと、席を確認する。
その後、テキパキと片付けをした彼女は、どうぞお好きな席へ。と笑顔で言った。
その笑顔に、自分の顔が赤くなるのが分かる。
隠すようにお礼を言い、外に出ると、ニヤニヤとこちらを向いていた。
それに舌打ちしたい気分をグッと抑え、中へ促す。
ヴァンス王子が店に入った時、彼女が彼を呼ぶ声がした。
「久しぶりだね、レイラ。」
そう言って、彼女に笑みを向けるヴァンス王子に嫉妬心が芽生える。
俺はこんなにも心の狭い男だったのかと、苦笑した。
フランはここね。とヴァンス王子に言われ、彼の向かいの席に座る。
水を配り終えた彼女に、料理を注文すれば、周りからの視線が痛かった。
カウンターに注文の書いた紙を渡したのを確認すると、ヴァンス王子が彼女を呼ぶ。
ヴァンス王子が、こちらを見てニヤリと笑った気がした。
なんでしょう?と言って近付いてくる彼女に、心臓が早くなる。
そんな俺の状況などお構い無しに、ヴァンス王子は彼女と話を進めていた。
何回か言葉を交わしているのを耳にした時、ヴァンス王子が、初恋の人かと質問した。
その言葉に目を丸くしたのは、彼女だけではない。俺もだ。
そんな話を聞いたのは初めてだ、と彼に視線を送る。
初恋の人が誰だかは分からないが、その人の為に大事な婚約を破棄したと言うのだろうか?
それなら、俺に勝ち目なんて……。と思った気持ちは、すぐにかき消された。
彼女が、首元につけていた、あのネックレスを大事そうに触れたからだ。
なぜ今までそこにあるのを気付けなかったのかと、自分を責めるのと同時に、心が震えた。
彼女の、今でも忘れられない。と言う言葉を聞き、今すぐに口を開きたいのをグッと堪える。
レイラちゃん!とその後すぐに呼ばれた彼女は、料理を運び始める。
美味しそうに湯気のたつ料理は、緊張で味が分からなかった。
食事が終わり、会計を済ませ外に出る。
馬車や馬の準備をしている中、ヴァンス王子が彼女と話をしていた。
準備が終わり、ヴァンス王子を見送る彼女の近くに行く。
最後に、どうしても確認しておかなければならない事があるのだ。
彼女の名前を呼び、俺の名前を教えれば、フラン様、と名を呼ばれる。
夢にまで見たその言葉に、自分でもひくくらい気分が高揚した。
「初恋の人、と言うのはまだ忘れられないのですか?大事な婚約を、無しにしてしまうほどに。」
そう彼女に聞くと、その綺麗な瞳でこちらを見つめ返してくる。
「……そうですね。私もバカだとは思っているのですが。」
おかげで、結婚適齢期も過ぎそうです。と彼女は笑った。
そんな彼女に、胸が苦しくなる。
背後から小さな声で、出るぞ。と団長が言った。
最後に一つだけ、と思い、深く息を吸い、口を開く。
「会いたいと、思いますか。…迎えに来て欲しい、と。」
緊張で乾いた口から出たのは、呟くような声だった。
しかし彼女にはちゃんと届いたらしい。
「はい。」
綺麗な笑顔で、そう、答えた。
12
お気に入りに追加
917
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。
白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。
筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。
ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。
王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?
平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子
深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……?
タイトルそのままのお話。
(4/1おまけSS追加しました)
※小説家になろうにも掲載してます。
※表紙素材お借りしてます。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!
白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。
その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。
でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~
春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。
かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。
私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。
それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。
だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。
どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか?
※本編十七話、番外編四話の短いお話です。
※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結)
※カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる