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少女に出会って3年後から。に。

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入団式後、ヴァンス王子に呼ばれた俺は、彼の部屋に行く。

コンコン、と扉を叩けば、中から、どうぞ。と声が聞こえる。

ガチャリと音をたて中に入ると、そこに座るように。といつかのように椅子を勧められた。

高価なソファーに身を預け、向かいにいるヴァンス王子を見る。

約束のことかと期待する俺に、彼は言った。

『君が昔出会った少女は、レイラ・アマドールと言う。』

『レイラ、…アマドール…。』

この国の者ではないのだろう。

聞いたことがない名前だった。

ヴァンス王子が言う彼女の名を繰り返すと、彼は一つ頷き、

『そして彼女は、ユナカ王国の第一王子であるカルロ・アシュリー・ユナカと婚約が決まっている。』

地獄に突き落とした。

何も言えず、ただ呆然と彼を見る。

何を言っているのか、理解ができなかった。

いや、…理解、したくなかった。

貴族の女性は、政略結婚が多い。

それは、分かっていた事だった。

でも、彼女は違うと、俺を待っていてくれると思っていた。

そう、信じたかった。

そんな俺に、彼はまた口を開く。

次は、何を言われるのかと、身構えた。

彼の口が、スローモーションのように見える。

『だが、この婚約は、カルロ王子により、破棄される。』

『…え……?』

なぜ……、と呟く声に、シナリオは変わらないからね。と彼は言う。

シナリオ。

意味がわからず繰り返す俺に、彼は一つ、笑みを浮かべただけだった。



それから、4年の歳月が流れた。

俺は、近衛第5師団で実力が認められ、副団長になった。

自分の抱えきれない思いを、仕事にぶつけていたからかもしれない。

ただ、仕事だけをする毎日に、俺は安心していた。

だが、ふとした瞬間に思い出す。

彼女の色をしたモノを見た時とか、彼女のような可憐な花を見た時とか。

そういう時は決まって、あの時の笑顔が思い出された。

だけど、夢の中に出てくる彼女は、俺に背を向け、違う男の手を引き去って行く。

手を伸ばしても届かない距離に、何度も魘され、目がさめる。

彼女は貴族で、相手は王室。

庶民の俺なんかより、よっぽど幸せな暮らしが出来るのではないかと諦めようとしたのは、一度や二度ではない。

会いに行ったところで、忘れられていたらどうしようと、拒絶されたらどうしようと、不安に思った事も数えきれない程ある。

彼女が幸せなら、俺は____。

ヴァンス王子の言葉を信じたわけではない。

だが、それがなくても諦めきれないのは、それほど俺が彼女に恋をしている証だった。



そんなある日。

ヴァンス王子から呼び出された。

急いで向かうと、苛立ちをあらわにした彼がいた。

何かをしてしまっただろうかと、記憶を辿るが、特に何も問題になるような事はしていない。

どうしたのかと彼を見れば、

『レイラが失踪した。』

想像もしていなかった言葉に、血の気が引いた。

『ど…ういう、こと、ですか…?』

『そのままの意味だ。』

震える声で問えば、怒りがこもった声で返答がくる。

『婚約破棄された後、家に戻ったまでは確認が取れている。…だが、その後の行方が分からない。』

家にはいないと、確認は取れたが…。

そう言って彼は、一つ大きく息を吐き出した。



それからの俺は、ヴァンス王子の力も借りながら、彼女を探した。

アマドール家にも行ったが、娘はもういない者としており、話を聞くことは出来なかった。


それから2年近くが経ち、ヴァンス王子がパーティーの場で一つの噂を聞いてきた。

国境沿いにある村で、元侯爵令嬢が働いているらしい。

彼女だと思った。

ようやく、長い時を待って掴んだ一筋の光。

だが、仕事の関係上、長期に抜けることが出来ない。

どうすれば…、と頭を悩ませていると、ヴァンス王子が、俺が行けば良いだろう?と言った。

ヴァンス王子が行くと言うことは、近衛第5師団が動くという事だ。

俺の為にそこまでは…、と言うと、会いたくないのか?と返される。

それに言葉をつまらせていると、近くにいた団長が、俺達の事は気にするな。面白そうだし。と言った。


それから一月後。

俺達は5日かけて、彼女がいるかもしれない村に着いた。
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