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私は、貴方の優しさに甘え過ぎていたのでしょう。よん。
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「…?どうした、セシリア。体調でも悪いのか?」
私が何も話さないことを不審に思ったのか、アレクサンダー団長に心配されてしまう。
そんなにいつも喋っているのだろうか?と思う間も無く、喋っているな。私。と気付いた。
「え?全然!全く!いつものセシリアですよ⁉︎」
ねぇ⁉︎ノア団長⁉︎、と言えば、そうだねぇ、さっきまではいつものセシリーだったねぇ。と余計なことを言ってくれる。
ギロリと睨めば、ニヤリと笑われた。
……確信犯か!この野郎!
きっとこの人は、私とシャロン様に何があったかも知っていることだろう。なんせ、兄なのだから。
「いつもだったらシャロン様シャロン様って言ってるからな。きっと誰でも気付くぞ?お前達何かあったのか?」
私そんなにシャロン様しゃろn……言ってたな。うん。考えるまでもなかった。
しかし、迷惑だ。と言われてしまった手前、何時もの通りだなんて無理だ。出来る人がいるならして見て欲しい。
結構打たれ強い子だと思っていたが、私はこんなにもダメダメだったのか…。
うぅ…あの時の事を思い出してしまって胸が痛い。
シャロン様の綺麗な瞳も、もしまたあの冷たい、拒絶されるような瞳だったらと思うと見ることはできなかった。
そんなに時間も経っていないと思うが、私にはすごく長く感じる、無言の空間が続く。
何も答えない私達に、アレクサンダー団長がもう一度口を開いた。
「もしかして、あの日、何かあったのか…?」
「—ッ!」
それは、質問と言うにはあまりにも確信を持った響きをしていた。
その声色に、慌てた私はこの場をすぐに離れようとノア団長の腕を掴み、
「あ、あの!私達、行かなければならない所があって!だから、すみません!アレクサンダー団長と、シャロンs…副団長!じゃあ、失礼します!」
逃げ出した。
その場に残ったのは、おい!と叫ぶアレクサンダー団長と、息を飲む、シャロン様。
これ以上嫌われないように出来てたかな…?、と走りながら私は思ったのである。
「はぁ、はぁ、はぁ、も、はぁ、はぁ、走れ、はぁ、ない、」
「体力ないねぇ、セシリー。」
鍛え直そうかなぁ?と言う顔は生き生きとしている。
悪魔か。…いや、魔王だった。
私はこれでも体力はある方だと思ってはいるが、市場から別荘地まで走って来て、息が一つも乱れていないとは、この魔王の能力は計り知れない。
「いきなり走るからびっくりしたよぉ。」
「…ごめんなさい。」
「まぁ、もぉ帰る頃だったしぃ、良いんだけどねぇ。」
でもぉ、嘘をつくならもう少しうまくやらないとねぇ。と言って笑うノア団長に、苦笑いしかできない。
それ以上何も言ってこないノア団長と各自部屋に戻り、私は海の見えない窓から外を眺める。
この窓からは森が見え、青々とした木々が穏やかな風に揺れている。
気持ちの良い風が入ってこれば、思い出すのはやはりシャロン様のことで。
初めて出会った時は、このくらいの季節で。
あの時から私の世界には住人が2人になって。
意地悪だけど心配性で優しい兄に、冷たいけどいつも助けてくれるカッコいい想い人。
もう、これからはあの頃のように戻ることはない未来。
「ふっ、う…、」
あの時は、驚き過ぎて涙も出なかった。
「…うぇ、グスッ、シャロン、さま…っ、」
この旅で後ろ姿を見ても、
話すことはなくても、
涙は出なかった。
多分、夢だと思っていた。
夢だと思いたかった。
それが、気付いた。
自分が言った言葉に。
____シャロンs…副団長!
あの時、これが現実だと。
夢にはできないのだと。
私は、シャロン様に振られてしまった。
……嫌われてしまった。
「シャロ、様…っ!」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
もう、シャロン様って言わないから。
もう、好きだなんて言わないから。
だからお願い。
嫌いにならないで。
こう思うのは、私の我が儘なのだろう。
あの村から兄に見つけてもらって、
あの森からシャロン様に見つけてもらって、
私は幸せだった。
それが当たり前になって、気付くこともなくなって。
これは、そんな私への罰なのだろう。
人の優しさに甘え過ぎた、私への罰。
「苦しいなぁ……。」
ルシヨン副団長も、こんな気持ちだったのだろうか。
それなのに、諦めないと、それでも良いと言えるルシヨン副団長は、なんて強いのだろう。
「うぅ…グスッ、嫌だよ…。」
諦めなきゃ。
そう思うのに、涙も、苦しさも、止まることはない。
___流れ続けるこの涙が、彼への想いなら良いのに。
そうならきっと、明日には全て無くなってしまうのに。
その晩は、一晩中泣いた。
泣き過ぎて、頭が痛くなるほどに。
ただ、少しだけ、心が軽くなった様な気もした。
10年以上ものの想いはこんなにもすぐ忘れていけるのかと、私は笑った。
私が何も話さないことを不審に思ったのか、アレクサンダー団長に心配されてしまう。
そんなにいつも喋っているのだろうか?と思う間も無く、喋っているな。私。と気付いた。
「え?全然!全く!いつものセシリアですよ⁉︎」
ねぇ⁉︎ノア団長⁉︎、と言えば、そうだねぇ、さっきまではいつものセシリーだったねぇ。と余計なことを言ってくれる。
ギロリと睨めば、ニヤリと笑われた。
……確信犯か!この野郎!
きっとこの人は、私とシャロン様に何があったかも知っていることだろう。なんせ、兄なのだから。
「いつもだったらシャロン様シャロン様って言ってるからな。きっと誰でも気付くぞ?お前達何かあったのか?」
私そんなにシャロン様しゃろn……言ってたな。うん。考えるまでもなかった。
しかし、迷惑だ。と言われてしまった手前、何時もの通りだなんて無理だ。出来る人がいるならして見て欲しい。
結構打たれ強い子だと思っていたが、私はこんなにもダメダメだったのか…。
うぅ…あの時の事を思い出してしまって胸が痛い。
シャロン様の綺麗な瞳も、もしまたあの冷たい、拒絶されるような瞳だったらと思うと見ることはできなかった。
そんなに時間も経っていないと思うが、私にはすごく長く感じる、無言の空間が続く。
何も答えない私達に、アレクサンダー団長がもう一度口を開いた。
「もしかして、あの日、何かあったのか…?」
「—ッ!」
それは、質問と言うにはあまりにも確信を持った響きをしていた。
その声色に、慌てた私はこの場をすぐに離れようとノア団長の腕を掴み、
「あ、あの!私達、行かなければならない所があって!だから、すみません!アレクサンダー団長と、シャロンs…副団長!じゃあ、失礼します!」
逃げ出した。
その場に残ったのは、おい!と叫ぶアレクサンダー団長と、息を飲む、シャロン様。
これ以上嫌われないように出来てたかな…?、と走りながら私は思ったのである。
「はぁ、はぁ、はぁ、も、はぁ、はぁ、走れ、はぁ、ない、」
「体力ないねぇ、セシリー。」
鍛え直そうかなぁ?と言う顔は生き生きとしている。
悪魔か。…いや、魔王だった。
私はこれでも体力はある方だと思ってはいるが、市場から別荘地まで走って来て、息が一つも乱れていないとは、この魔王の能力は計り知れない。
「いきなり走るからびっくりしたよぉ。」
「…ごめんなさい。」
「まぁ、もぉ帰る頃だったしぃ、良いんだけどねぇ。」
でもぉ、嘘をつくならもう少しうまくやらないとねぇ。と言って笑うノア団長に、苦笑いしかできない。
それ以上何も言ってこないノア団長と各自部屋に戻り、私は海の見えない窓から外を眺める。
この窓からは森が見え、青々とした木々が穏やかな風に揺れている。
気持ちの良い風が入ってこれば、思い出すのはやはりシャロン様のことで。
初めて出会った時は、このくらいの季節で。
あの時から私の世界には住人が2人になって。
意地悪だけど心配性で優しい兄に、冷たいけどいつも助けてくれるカッコいい想い人。
もう、これからはあの頃のように戻ることはない未来。
「ふっ、う…、」
あの時は、驚き過ぎて涙も出なかった。
「…うぇ、グスッ、シャロン、さま…っ、」
この旅で後ろ姿を見ても、
話すことはなくても、
涙は出なかった。
多分、夢だと思っていた。
夢だと思いたかった。
それが、気付いた。
自分が言った言葉に。
____シャロンs…副団長!
あの時、これが現実だと。
夢にはできないのだと。
私は、シャロン様に振られてしまった。
……嫌われてしまった。
「シャロ、様…っ!」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
もう、シャロン様って言わないから。
もう、好きだなんて言わないから。
だからお願い。
嫌いにならないで。
こう思うのは、私の我が儘なのだろう。
あの村から兄に見つけてもらって、
あの森からシャロン様に見つけてもらって、
私は幸せだった。
それが当たり前になって、気付くこともなくなって。
これは、そんな私への罰なのだろう。
人の優しさに甘え過ぎた、私への罰。
「苦しいなぁ……。」
ルシヨン副団長も、こんな気持ちだったのだろうか。
それなのに、諦めないと、それでも良いと言えるルシヨン副団長は、なんて強いのだろう。
「うぅ…グスッ、嫌だよ…。」
諦めなきゃ。
そう思うのに、涙も、苦しさも、止まることはない。
___流れ続けるこの涙が、彼への想いなら良いのに。
そうならきっと、明日には全て無くなってしまうのに。
その晩は、一晩中泣いた。
泣き過ぎて、頭が痛くなるほどに。
ただ、少しだけ、心が軽くなった様な気もした。
10年以上ものの想いはこんなにもすぐ忘れていけるのかと、私は笑った。
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