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私の家族は、この人だけなんです。ご。

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綺麗な薄桃色の髪の少女は、僕と似た瞳の色をしていて。

怯えるその子を逃さないように話しかければ、最初は警戒していたものの、最後には小さな笑みを向けてくれた。

小動物みたいだと思った。

それから、その子を僕の妹にして、リューココリーネの名前を付けて。

セシリー、と初めて呼んだときは、蜂蜜色の瞳を瞬かせていた。

セシリアのセシとリューココリーネのリーでぇ、セシリー!、どぉ?可愛くなーい?と言う僕に、セシリアのセシリーじゃないんだ、と笑った。

その笑みが、僕には眩しくて、思わず目を細めれば、セシリーかぁ、うん!凄く良い!可愛い!ありがとう、お兄ちゃん!とさっきよりも綺麗な笑みを浮かべたんだ。



「……大きくなったね、セシリー。」

あれから14年が過ぎた。

僕の半分ほどしかなかった背は、いつのまにか胸付近まで高くなっていて、昔から可愛かった顔は、僕もびっくりするくらいにさらに可愛く、綺麗になった。

「本当に、無事でよかった…っ、」

今でもあの時を思い出すと心臓が止まりそうになる。

まさか、自分が傷を負うとは思わなかったが、あれは、本当に自分のミスだと思う。自分の魔力を、才能を、実力を、過信し過ぎていた、己の失態ミス

傷が痛む感覚よりも、血が流れる気持ち悪さに危機を覚えるよりも、セシリーが無事なことに、安堵した。

僕は守れたのだと、自分のセシリーを。己の、を。


「…ねぇ、セシリー。」

僕は、君が望むなら、君の隣にずっといるから。

僕は、君が望まなくても、君を独りになんてさせないから。

だから、君も、


「僕を、…独りにしないでよね。」


僕の服を握って離さない、可愛い僕の妹セシリー






「あぁ、…アリア副団長にお礼しなきゃなぁ。」

僕の傷を治すのに、どれだけの魔力を必要としたんだろう。

きっと、無理をしてくれたに決まっている。

あの傷を、跡も残さず綺麗にした、魔力の痕跡がある。

「セシリーの傷も治さないとねぇ。」

僕も光の魔術で傷を治せば、セシリーが身動ぎする。

ふふっ、と笑みがこぼれ、綺麗な頬を突けば、おにいちゃん、と口が動いた気がした。



これから先、君はきっと誰か違う人と血の繋がった家族を作るのだろう。

そうなったら、自分は、耐えられるのだろうか。

笑顔で、送り出せるだろうか。

幸せになってと、心の底から言えるだろうか。


これから先の未来のことなんて、考えたって仕様がないけど、



今はまだ、どうか、このままで____。








said.セシリア
_____________________

「セシリー、起きてぇ。」

「ん……。」

「ほらぁ、朝ご飯食べに行くよぉ。」

「ごはん…?」

「うん、ほらぁ、早くー。」

兄の声に目を開ければ、テントの天井と、兄の顔が映る。

昨夜のことが嘘のようなその姿に、悪い夢を見ていたのではないかと錯覚するほどだ。

急かされるままに起きれば、手を引っ張られる。

よろめいて兄に抱きつく形になれば、ギューッと言いながら抱きしめられた。

「よぉしっ!充電完了ー!行こうかぁ。」

しばらくして離してくれた兄は、笑顔でそう言って私に手を差し出してきた。

それに手を重ねれば、うん、と言って一緒に外に出る。

あまりの眩しさに目を細めれば、アリア副団長が近づいて来た。

「ノア団長、セシリア。」

「アリア副団長ぉ、昨夜はぁ、ありがとうございましたぁ。」

「それは先ほども聞きました。貴方のその復活の早さには驚きます。」

「えぇ?そうかなぁ?アリア副団長の治癒魔術が良かったんですよぉ。」

本当に、ありがとうございました、と頭を下げる兄に、私も頭を下げる。

「アリア副団長、昨夜は本当にありがとうございました。それに、なにも出来なくて申し訳ありませんでした。」

「なに言ってるの、セシリア。私は治癒特化よ。みんなを助けることは、私の仕事でもありプライドでもあるの。」

貴方は、魔物を倒してくれたでしょう?と言うアリア副団長に涙が浮かぶ。

私は、こんなにも泣き虫だったのかと思えば、ほら、早くご飯食べていなさい!と背中を押された。

そこには、昨日私達を助けてくれた人達がいて、笑顔で迎え入れてくれる。

その人達に謝罪とお礼を言えば、みんな、無事でよかったな、と言ってくれた。


「おねえちゃん!」

「あ、君は……。」

アレキサンダー団長と話していたら、昨日の少年が声をかけて来た。
 
「無事だったんだね。」

「うん!おねえちゃんのおかげだよ!ありがとう!」

昨日のことがなかったかの様に振る舞う少年は、とても元気そうで、ホッと安心した。

そんな少年の頭を撫でるアレキサンダー団長が、私に視線を向けると、口を開いた。

「セシリア。君は、この少年の命を守ったんだ。それに、この少年だけじゃない。お前がいたからこの遠征は成功したし、村人たちの不安も解消された。沢山の命を救ったんだ。」

だから、自分を悪く言うなよ。と言う彼に、私は小さく返事をした。



「はい、セシリーの分のご飯だよぉ。」

「…ありがとう、お兄ちゃん。」

そう言って、パンとスープを受け取る。

いつもの遠征で食べるご飯と同じもののはずなのに、その日のご飯は幸せで、少しだけ、しょっぱい味がした。





____________________

「セシリア、貴方、脇腹まだ完治していなかったわよね?」

「そう言えば…。でも、痛くないから大丈夫ですよ。」

「なに言ってるの、今から一週間くらいずっと軍馬に乗るのよ。さぁ、こっち来なさい。」

「アリア副団長ー!セシリーの怪我はぁ、僕が治したから大丈夫ですよぉ。」

「は⁉︎ノア団長!私、言いましたよね⁉︎魔力は使わないでくださいって!言いましたよね!」

「言いましたねぇ。」

「何すぐ破っているんですか!」

「だってぇ、言われる前に使っちゃったしぃ…。」

「…はぁ、もう、怪我が完治したとは言え、まだ安静です。セシリアの怪我は私が治しますので、絶対に、魔力は使わないでください。良いですね?」

「…………気をつけまーす。」

「……絶対使うだろ、このシスコン。」
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