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私の家族は、この人だけなんです。さん。※
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※流血表現あり。
____________________
「おにいちゃん…、ねぇ、ねぇ、」
止まることのない血が、
「ねぇ、帰ろう…?」
血溜まりの面積を広げていく。
「もう、終わったんだよ?ねぇ、」
激しく降る雨が、
「ほら、帰ろう…?」
2人の体温を奪っていき、
「帰ったら、行きたいところ、いっぱい、いっぱい、あるんだよ…?」
冷たくなっていく。
「ねぇ……。」
お兄ちゃんがいなくなったら、
誰が私とご飯を食べてくれるの…?
ねぇ、これからは、好き嫌いなんて言わないから。
まだ、魔術でのケンカも勝ててないの。
ねぇ、私が勝つまで付き合ってくれるんでしょう…?
それに、次の休みに一緒にお出かけしようって、約束したじゃん。
ねぇ。
ねぇ、お兄ちゃん。
私、泣いてるよ……?
抱きしめてくれるんでしょう…?
ねぇ、お兄ちゃん。
私、今、この17年で1番困ってるの。
____助けてよ。
ねぇ、
ねぇ、
ねぇってば……。
「お兄ちゃん……っ!」
そっと、白銀の髪に手を伸ばせば、
「誰よりも、笑顔にしてくれるって、言ったじゃんか…っ!」
とても綺麗な顔が見えた。
「勝手にぃ、…ガハッ、殺さないで、よぉ。」
「おにい、ちゃん……?」
「セシリアっ!無事で…ッ⁉︎ノア団長!!」
「…アリア……副団、長…。」
「セシリア、後は任せなさい。」
「…おに、ちゃんが……!」
「セシリア!」
「ゲホッ、セシリー、ッ!…大丈夫。お兄ちゃん、は、ガハッ、大丈夫、だよ、セシリー、信じ、て。」
「ぃ、ちゃん…っ!」
「ね、セシリー。僕の可愛い妹。お兄ちゃんは、ゴホッ、大丈夫。…ね。」
___そこから先は、ただただ、見守ることしか出来なかった。
アリア副団長が他の治癒特化の魔術師にポーションを持ってこさせ、自分は魔術を酷使する。
背中の傷が徐々に狭まっていくのを見ながら、自分の無能さに絶望した。
ただ、座って見ているだけの私を、後から来たアレクサンダー団長が立たせてくれる。
戻るか、と聞かれたが、首を横に振った。
脇腹から流れる血に気付いた仲間が、治療にあたってくれる。
私より魔力の低い彼女には、私の傷を表面だけしか塞ぐことができない。
私が助けた少年は、誰かが連れていったくれたのか、いなくなっていた。
アリア副団長が、何本目かの魔力回復のポーションを飲むのを眺める。
傍らには、空になった容器が数え切れないほど落ちていた。
私は、それを眺める。
倒れないように支えてれるアレクサンダー団長も、魔術を酷使して兄を助けてくれてるアリア副団長も、周りでアリア副団長の補助をする皆も、そんな何もできない私に、何も言わなかった。
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「おにいちゃん…、ねぇ、ねぇ、」
止まることのない血が、
「ねぇ、帰ろう…?」
血溜まりの面積を広げていく。
「もう、終わったんだよ?ねぇ、」
激しく降る雨が、
「ほら、帰ろう…?」
2人の体温を奪っていき、
「帰ったら、行きたいところ、いっぱい、いっぱい、あるんだよ…?」
冷たくなっていく。
「ねぇ……。」
お兄ちゃんがいなくなったら、
誰が私とご飯を食べてくれるの…?
ねぇ、これからは、好き嫌いなんて言わないから。
まだ、魔術でのケンカも勝ててないの。
ねぇ、私が勝つまで付き合ってくれるんでしょう…?
それに、次の休みに一緒にお出かけしようって、約束したじゃん。
ねぇ。
ねぇ、お兄ちゃん。
私、泣いてるよ……?
抱きしめてくれるんでしょう…?
ねぇ、お兄ちゃん。
私、今、この17年で1番困ってるの。
____助けてよ。
ねぇ、
ねぇ、
ねぇってば……。
「お兄ちゃん……っ!」
そっと、白銀の髪に手を伸ばせば、
「誰よりも、笑顔にしてくれるって、言ったじゃんか…っ!」
とても綺麗な顔が見えた。
「勝手にぃ、…ガハッ、殺さないで、よぉ。」
「おにい、ちゃん……?」
「セシリアっ!無事で…ッ⁉︎ノア団長!!」
「…アリア……副団、長…。」
「セシリア、後は任せなさい。」
「…おに、ちゃんが……!」
「セシリア!」
「ゲホッ、セシリー、ッ!…大丈夫。お兄ちゃん、は、ガハッ、大丈夫、だよ、セシリー、信じ、て。」
「ぃ、ちゃん…っ!」
「ね、セシリー。僕の可愛い妹。お兄ちゃんは、ゴホッ、大丈夫。…ね。」
___そこから先は、ただただ、見守ることしか出来なかった。
アリア副団長が他の治癒特化の魔術師にポーションを持ってこさせ、自分は魔術を酷使する。
背中の傷が徐々に狭まっていくのを見ながら、自分の無能さに絶望した。
ただ、座って見ているだけの私を、後から来たアレクサンダー団長が立たせてくれる。
戻るか、と聞かれたが、首を横に振った。
脇腹から流れる血に気付いた仲間が、治療にあたってくれる。
私より魔力の低い彼女には、私の傷を表面だけしか塞ぐことができない。
私が助けた少年は、誰かが連れていったくれたのか、いなくなっていた。
アリア副団長が、何本目かの魔力回復のポーションを飲むのを眺める。
傍らには、空になった容器が数え切れないほど落ちていた。
私は、それを眺める。
倒れないように支えてれるアレクサンダー団長も、魔術を酷使して兄を助けてくれてるアリア副団長も、周りでアリア副団長の補助をする皆も、そんな何もできない私に、何も言わなかった。
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