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どちら様ですか?……貴方様でしたか。
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とある日の朝。
食堂のおばちゃんからもらった、小魚が入った袋を持って植物園に向かう。
扉を開け、猫ちゃーんと呼べば、ニャァと返事が来る。
声がした方に進めば、薬草を植えている花壇の上で、毛繕いをしている姿があった。
「今日はね、プレゼントがあるんだよー!」
ほらっ、と握っていた袋を見せれば、その白猫は琥珀色の瞳を輝かせて近づいてきた。
「ふふっ、たんとお食べー。」
そう言って、袋から小魚を取り出せば、ミャウミャウと言って食べ始めた。
その光景を可愛いなーと眺めていると、その白猫は君が飼っているの?とどこかで聞いたことある声がした。
誰もいないと思っていたため、ビクリと体を揺らし、声がした方に振り向けば、植物園の天井から降り注ぐ朝日に照らされた綺麗な金髪が目に入る。
その眩しさに目を細めれば、その人物は私の隣に来た。
「—ッ!」
「かわいいね、猫ってやっぱり魚が好きなんだ。」
そう言って、ふふっと笑う人物に、私は驚きすぎて言葉が出なかった。
「お、王太子…殿下…。」
以前、一度だけ会ったことがあるその人物は、やだな、王太子殿下だなんて呼ばないでよ。今は完全なプライベートなんだから。と言い、ほら。と私に名を呼ぶ様に催促をしてきた。
「ニコル…王子。」
「ふふっ、まぁ、仕様がないか。」
いやいや、様付けとかレベル高すぎなのでできません!と拒否した私は、ニコル王子呼びで許していただいた。
一緒に猫ちゃんを見ている王子に、今日はどうしてこちらに?と問えば、ここの植物園に興味があってね。と返ってきた。
ニコル王子は薬草に興味があるのか…。と思って猫ちゃんに最後の小魚をあげていると、ニコル様が立ち上がって言った
「ねぇ、セシリア。ここの植物のこと教えてよ。」
園内にある水道で手を洗い、ニコル王子に薬草とハーブの説明をしていく。
小心者の私に、王子の頼みを断る勇気はなかったのだ。
「……これは、一度乾燥させた方が成分の抽出がうまくいきやすいです。」
「へぇ、そうだったんだ。」
「そしてこっちの方が……。」
教えてよ、と言った王子は、私の話を真剣に聞いていく。
知っている植物も多く、これはこうなんだったよね。と言って来ることも多かった。
薬草の事は独学で学んだというニコル王子に、すごいですね。と驚けば、まだまだだけどね。と謙遜される。
「それを言うなら、君の方が若いのに、本当にすごいよね。」
「仕事道具ですからね。今もまだ勉強しながらですけど。」
「いや、本当、若くで第4騎士団に入っただけあるよ。」
そう言って微笑むニコル王子に、ありがとうございます。と言う。
こう、褒められるのは、私の頑張りが認めてもらえた様でとても嬉しい。
「ここまで来れたのは兄のおかげでもあるんですけどね。」
「君の兄は、ノア団長だったかな。たまに会うけど、よく君の話を聞いているよ。」
……あの兄は何をやっているんだ。
一国の王子にまで私の話をしているとは…!
「すみません…。兄の話は無視してくださって構いませんよ。」
「ふふっ、いや、いつも楽しませてもらっているよ。」
「…何の話をされてるんですか?」
「そうだね…勝てもしないのに、すぐ魔術対決をしようとしてくる。とか、この間一緒に街に行ってピアスを買ってもらったとか。」
「そんなことを…。」
「ピアス、すごく嬉しそうだったよ。」
「…そうですか。」
本人もすごく喜んでくれたから知ってはいたが、他人からそれを聞かされると、照れくさくなる。
話の話題を変えようと、あたりを見渡していたら、ニコル王子が1つの薬草の前でしゃがむ。
「あ、この薬草は体力回復のポーションに使うんだよね。」
「あ、そうですよ。この薬草と、向こうにある黄色の薬草と…。」
気を利かせてくれたのか、話題を元に戻し、色々聞いてくるニコル王子に、私も自分の持っている知識を教えたのである。
____________________
「おはよーございまーす。」
「あれぇ?セシリー、遅かったねぇ。」
「植物園でニコル王子とお勉強会してました。」
「へぇ、ニコル様ぁ、早速来たんだねぇ。」
「知っていたんですか…?」
「今日来るのは知らなかったけどぉ、一度来たいって行ってたからねぇ。」
「そうなんですか。…あ、あと、あまり私の事は喋らないでくださいね。」
「なんでぇ?可愛いセシリーを自慢したいじゃーん!セシリーのかわいさを僕の中で秘めきれないんだよねぇ。」
「……。」
「セシリア、もう今更だし、諦めなさい。」
食堂のおばちゃんからもらった、小魚が入った袋を持って植物園に向かう。
扉を開け、猫ちゃーんと呼べば、ニャァと返事が来る。
声がした方に進めば、薬草を植えている花壇の上で、毛繕いをしている姿があった。
「今日はね、プレゼントがあるんだよー!」
ほらっ、と握っていた袋を見せれば、その白猫は琥珀色の瞳を輝かせて近づいてきた。
「ふふっ、たんとお食べー。」
そう言って、袋から小魚を取り出せば、ミャウミャウと言って食べ始めた。
その光景を可愛いなーと眺めていると、その白猫は君が飼っているの?とどこかで聞いたことある声がした。
誰もいないと思っていたため、ビクリと体を揺らし、声がした方に振り向けば、植物園の天井から降り注ぐ朝日に照らされた綺麗な金髪が目に入る。
その眩しさに目を細めれば、その人物は私の隣に来た。
「—ッ!」
「かわいいね、猫ってやっぱり魚が好きなんだ。」
そう言って、ふふっと笑う人物に、私は驚きすぎて言葉が出なかった。
「お、王太子…殿下…。」
以前、一度だけ会ったことがあるその人物は、やだな、王太子殿下だなんて呼ばないでよ。今は完全なプライベートなんだから。と言い、ほら。と私に名を呼ぶ様に催促をしてきた。
「ニコル…王子。」
「ふふっ、まぁ、仕様がないか。」
いやいや、様付けとかレベル高すぎなのでできません!と拒否した私は、ニコル王子呼びで許していただいた。
一緒に猫ちゃんを見ている王子に、今日はどうしてこちらに?と問えば、ここの植物園に興味があってね。と返ってきた。
ニコル王子は薬草に興味があるのか…。と思って猫ちゃんに最後の小魚をあげていると、ニコル様が立ち上がって言った
「ねぇ、セシリア。ここの植物のこと教えてよ。」
園内にある水道で手を洗い、ニコル王子に薬草とハーブの説明をしていく。
小心者の私に、王子の頼みを断る勇気はなかったのだ。
「……これは、一度乾燥させた方が成分の抽出がうまくいきやすいです。」
「へぇ、そうだったんだ。」
「そしてこっちの方が……。」
教えてよ、と言った王子は、私の話を真剣に聞いていく。
知っている植物も多く、これはこうなんだったよね。と言って来ることも多かった。
薬草の事は独学で学んだというニコル王子に、すごいですね。と驚けば、まだまだだけどね。と謙遜される。
「それを言うなら、君の方が若いのに、本当にすごいよね。」
「仕事道具ですからね。今もまだ勉強しながらですけど。」
「いや、本当、若くで第4騎士団に入っただけあるよ。」
そう言って微笑むニコル王子に、ありがとうございます。と言う。
こう、褒められるのは、私の頑張りが認めてもらえた様でとても嬉しい。
「ここまで来れたのは兄のおかげでもあるんですけどね。」
「君の兄は、ノア団長だったかな。たまに会うけど、よく君の話を聞いているよ。」
……あの兄は何をやっているんだ。
一国の王子にまで私の話をしているとは…!
「すみません…。兄の話は無視してくださって構いませんよ。」
「ふふっ、いや、いつも楽しませてもらっているよ。」
「…何の話をされてるんですか?」
「そうだね…勝てもしないのに、すぐ魔術対決をしようとしてくる。とか、この間一緒に街に行ってピアスを買ってもらったとか。」
「そんなことを…。」
「ピアス、すごく嬉しそうだったよ。」
「…そうですか。」
本人もすごく喜んでくれたから知ってはいたが、他人からそれを聞かされると、照れくさくなる。
話の話題を変えようと、あたりを見渡していたら、ニコル王子が1つの薬草の前でしゃがむ。
「あ、この薬草は体力回復のポーションに使うんだよね。」
「あ、そうですよ。この薬草と、向こうにある黄色の薬草と…。」
気を利かせてくれたのか、話題を元に戻し、色々聞いてくるニコル王子に、私も自分の持っている知識を教えたのである。
____________________
「おはよーございまーす。」
「あれぇ?セシリー、遅かったねぇ。」
「植物園でニコル王子とお勉強会してました。」
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「知っていたんですか…?」
「今日来るのは知らなかったけどぉ、一度来たいって行ってたからねぇ。」
「そうなんですか。…あ、あと、あまり私の事は喋らないでくださいね。」
「なんでぇ?可愛いセシリーを自慢したいじゃーん!セシリーのかわいさを僕の中で秘めきれないんだよねぇ。」
「……。」
「セシリア、もう今更だし、諦めなさい。」
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