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人の話は最後まで聞きましょう。
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その日は午後から豪雨になった。
午前中の青空が嘘だったかのような雨の降り様に、セシリアは、最悪だ…と呟く。
アリア副団長に頼まれて、街に買い物に来たのがお昼半ば。
先に食事を済ませていた私は、ねぇセシリア、一つ、頼まれてくれない?と言うアリア副団長に、そのお願いを二つ返事で引き受けたのだ。
「まさか雨が降ってくるとは思わなかったなぁ…。」
はぁ、とため息が出る。この雨はいつ止むのだろうか、と空を見上げるが、相変わらずの真っ暗さである。
今は街の中心にある、大きな木の下で雨宿り中。
ここもその内雨が来るだろうな、とは思うが、近くのお店に入るためには、この雨の中を走らなければいけない。
そうしたら、せっかく買った物を濡らしてしまう。
小雨になるか、ヤバくなったら考えるか、と今はこの雨が少しでも良くなるように待つことしか出来なかった。
20分ほど経っただろうか。
雨は一向に止まない。それどころか、雷まで鳴り出した。
流石にここに居るのは危ないかな、と顔を引きつらせた時、目の前に豪華な馬車が止まった。
え?誰?と思い、その馬車を見る。
「あ、やっぱり。セシリアだ。」
「ルシヨン副団長…?」
その豪華な馬車から顔を出したのは、ルシヨン副団長で、そんな所にいたら風邪ひくよ、と中に招いてくれた。
恐る恐る、その馬車に入ると、ルシヨン副団長とは別にもう1人いた。
外の天気とは違い、輝かんばかりの金の髪に、澄んだ海を思わせる青い瞳、端正な顔立ちの、この、人々が服従したくなるようなオーラの持ち主は、
「…王太子殿下……⁉︎」
そう、我が国、ヨシュクラダンカ王国の王太子殿下、ニコル・バーデン・ヨシュクラダンカ様だったのである。
「しっ、失礼しましたー!」
まさかこんな所で会うなんて!と思い、思わず飛び出す。
よく見ると、この豪華な馬車は、王室の物である。なぜ気づかなかった私…!と自分自身を責めていると、ルシヨン副団長が馬車から降りてきた。
「ルシヨン副団長!濡れますよ⁉︎」
「セシリアが飛び出すからじゃないか。…大丈夫、ニコル様には許可を貰っている。」
だから早くおいで、君が乗らないと出発できないよ、と言われると、乗るしかなかった。
改めて馬車に乗り、先に出来なかった挨拶を済ませ、ルシヨン副団長の隣に腰掛ける。
居心地の悪さを感じていると、もっとリラックスしていいんだよ、とニコル王子に声をかけられた。
それにますます緊張してしまうと、ルシヨン副団長が笑う気配がする。
なんですか、とジト目を向けると、頭を撫でてきた。
ますます訳が分からない、と困惑していると、仲が良いんだね、とニコル王子も笑った。
その顔がとても綺麗だなと思っていると、アレクサンダー団長が以前言っていたことを思い出す。
『この国の王子は人気者だから…』
『第1師団の奴等より人気だぞ?』
サァ……と青くなる私に、ルシヨン様が笑いを止める。ニコル王子も、どうした?と心配気だ。
「る、ルシヨン様…どうしましょう……⁉︎」
「ん?何がだ?」
「私、貴方たちのファンに、刺されるかもしれません……!」
そう言った私に、2人は一瞬呆け、その後、馬車の中は笑い声に包まれた。
「本当に、ありがとうございました。」
「いえいえ。あんな所に放って置けなかったし、気付いてよかったよ。」
第4師団の敷地の入り口に付き、馬車を降りる。
ここに来るまでに、雨は上がったようだ。グレーの雲の間に、青空が見えていた。
それじゃあ、また。と言って門を潜ろうかとする時、セシリア!と呼び止められる。
なんか前もあったな、と思いながら振り向くと、ルシヨン副団長が思ったよりも近くに来ていた。
「ネックレス、付けてくれているんだね。」
そう聞かれ、はい、可愛いですよね、これ。とネックレスを指差す。
嬉しい、と笑うルシヨン副団長は、その顔を引き締め、もう一度、セシリア、と私の名前を呼んだ。
はい?と返事をすると、ルシヨン副団長は一拍して口を開く。
「あのね、セシリア。本当は早く言うべきだと分かっていたんだけど、遅くなった。」
真剣な、マゼンタ色の瞳を見つめる。
「俺が好きなのは、シャロンじゃない。」
「…え?」
「君だよ、セシリア。」
やっぱり、気付いてなかったんだね、結構アピールしたつもりなんだけど…と苦笑いするルシヨン副団長を、私は、ポカンと間抜けに開いた口のまま、見つめることしか出来なかった。
____________________
「あ、セシリアお帰りー。ごめんね、まさか雨降るなんて思わなくて…。大丈夫だった?」
「アリア副団長…。」
「うわぁ、結構濡れっちゃったね。今タオル持って来るね。」
「アリア副団長………。」
「あ、買ってきたケーキはそこに置いておいてくれていいから!」
「アリア副団長…!」
「ん?どうしたのセシリア?」
「私の話をきいてくださいよー!!」
「え⁉︎ちょっと、セシリア⁉︎分かった!分かったから!取り敢えず拭いて!濡れちゃうから!お願い!」
午前中の青空が嘘だったかのような雨の降り様に、セシリアは、最悪だ…と呟く。
アリア副団長に頼まれて、街に買い物に来たのがお昼半ば。
先に食事を済ませていた私は、ねぇセシリア、一つ、頼まれてくれない?と言うアリア副団長に、そのお願いを二つ返事で引き受けたのだ。
「まさか雨が降ってくるとは思わなかったなぁ…。」
はぁ、とため息が出る。この雨はいつ止むのだろうか、と空を見上げるが、相変わらずの真っ暗さである。
今は街の中心にある、大きな木の下で雨宿り中。
ここもその内雨が来るだろうな、とは思うが、近くのお店に入るためには、この雨の中を走らなければいけない。
そうしたら、せっかく買った物を濡らしてしまう。
小雨になるか、ヤバくなったら考えるか、と今はこの雨が少しでも良くなるように待つことしか出来なかった。
20分ほど経っただろうか。
雨は一向に止まない。それどころか、雷まで鳴り出した。
流石にここに居るのは危ないかな、と顔を引きつらせた時、目の前に豪華な馬車が止まった。
え?誰?と思い、その馬車を見る。
「あ、やっぱり。セシリアだ。」
「ルシヨン副団長…?」
その豪華な馬車から顔を出したのは、ルシヨン副団長で、そんな所にいたら風邪ひくよ、と中に招いてくれた。
恐る恐る、その馬車に入ると、ルシヨン副団長とは別にもう1人いた。
外の天気とは違い、輝かんばかりの金の髪に、澄んだ海を思わせる青い瞳、端正な顔立ちの、この、人々が服従したくなるようなオーラの持ち主は、
「…王太子殿下……⁉︎」
そう、我が国、ヨシュクラダンカ王国の王太子殿下、ニコル・バーデン・ヨシュクラダンカ様だったのである。
「しっ、失礼しましたー!」
まさかこんな所で会うなんて!と思い、思わず飛び出す。
よく見ると、この豪華な馬車は、王室の物である。なぜ気づかなかった私…!と自分自身を責めていると、ルシヨン副団長が馬車から降りてきた。
「ルシヨン副団長!濡れますよ⁉︎」
「セシリアが飛び出すからじゃないか。…大丈夫、ニコル様には許可を貰っている。」
だから早くおいで、君が乗らないと出発できないよ、と言われると、乗るしかなかった。
改めて馬車に乗り、先に出来なかった挨拶を済ませ、ルシヨン副団長の隣に腰掛ける。
居心地の悪さを感じていると、もっとリラックスしていいんだよ、とニコル王子に声をかけられた。
それにますます緊張してしまうと、ルシヨン副団長が笑う気配がする。
なんですか、とジト目を向けると、頭を撫でてきた。
ますます訳が分からない、と困惑していると、仲が良いんだね、とニコル王子も笑った。
その顔がとても綺麗だなと思っていると、アレクサンダー団長が以前言っていたことを思い出す。
『この国の王子は人気者だから…』
『第1師団の奴等より人気だぞ?』
サァ……と青くなる私に、ルシヨン様が笑いを止める。ニコル王子も、どうした?と心配気だ。
「る、ルシヨン様…どうしましょう……⁉︎」
「ん?何がだ?」
「私、貴方たちのファンに、刺されるかもしれません……!」
そう言った私に、2人は一瞬呆け、その後、馬車の中は笑い声に包まれた。
「本当に、ありがとうございました。」
「いえいえ。あんな所に放って置けなかったし、気付いてよかったよ。」
第4師団の敷地の入り口に付き、馬車を降りる。
ここに来るまでに、雨は上がったようだ。グレーの雲の間に、青空が見えていた。
それじゃあ、また。と言って門を潜ろうかとする時、セシリア!と呼び止められる。
なんか前もあったな、と思いながら振り向くと、ルシヨン副団長が思ったよりも近くに来ていた。
「ネックレス、付けてくれているんだね。」
そう聞かれ、はい、可愛いですよね、これ。とネックレスを指差す。
嬉しい、と笑うルシヨン副団長は、その顔を引き締め、もう一度、セシリア、と私の名前を呼んだ。
はい?と返事をすると、ルシヨン副団長は一拍して口を開く。
「あのね、セシリア。本当は早く言うべきだと分かっていたんだけど、遅くなった。」
真剣な、マゼンタ色の瞳を見つめる。
「俺が好きなのは、シャロンじゃない。」
「…え?」
「君だよ、セシリア。」
やっぱり、気付いてなかったんだね、結構アピールしたつもりなんだけど…と苦笑いするルシヨン副団長を、私は、ポカンと間抜けに開いた口のまま、見つめることしか出来なかった。
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「あ、セシリアお帰りー。ごめんね、まさか雨降るなんて思わなくて…。大丈夫だった?」
「アリア副団長…。」
「うわぁ、結構濡れっちゃったね。今タオル持って来るね。」
「アリア副団長………。」
「あ、買ってきたケーキはそこに置いておいてくれていいから!」
「アリア副団長…!」
「ん?どうしたのセシリア?」
「私の話をきいてくださいよー!!」
「え⁉︎ちょっと、セシリア⁉︎分かった!分かったから!取り敢えず拭いて!濡れちゃうから!お願い!」
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