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遠征先でも楽しく食事が出来るのです。
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屋外での食事と言ったらやっぱりこれでしょ!、という事で、カレー作りに励む。
約60名の食事の支度をするのは、5人でしていてもとても大変である。
ここ、東の森に着いてから7日。
ようやく魔物の討伐が終わり、明日は一度、残っている魔物がいないか確認してから帰還となる予定だ。
今回の魔物は力もそこそこあり、なんと言っても数が多かった。
最初の3日ほどは寝ずに動いていたような気がする。忙し過ぎて記憶も曖昧だ。
そんな日々から解放されると思うと嬉しくて、思わず夕食当番に名乗り上げたほどだ。
ただ一つ、残念だと思うのが、遠征中24時間ずっと同じ空間にいれたシャロン様と離れ離れになってしまうという事だろうか。
シャロン様は帰還後、2日ほどの休日があり、その後遠征に出かけてしまう。
それに私も、3日ほどしたら、北の鉱山近くに生える貴重な薬草を取りに10日ほど出かけてしまうのだ。次に会えるのは早くて2週間後だろうか?シャロン様不足で死んでしまうかもしれない。
「セシリアー、もうみんなにカレー配ったから、セシリアも自分の分ついで食べちゃいなさい。」
そんなことを本気で考えていると、今回遠征で一緒だった第4騎士団魔術師副団長のアリア・フランソワーズ様が声を掛けてきた。
いつもはおろしている栗色の髪を今は一つに結んでおり、緑色の瞳をこちらに向けている。
女性にしては高めの167cmの身長に、私が目指すボンキュッボンのスタイルが素晴らしい。
歳は26で、顔立ちはキツめの美人である。
ちなみに、私とノア団長のケンカを止めるのは、いつもこの人である。ご迷惑おかけしています…。
ちなみのちなみに、迷惑をかけている片割れであるノア団長は、うーん、東の森の魔物くらい君たちだけでいけるでしょー?と言って別の遠征に向かっている。
「はーい!アリア副団長のも一緒についでおきますねー?」
そう返事をすると、よろしくー!と少し離れたところから返ってくる。
お盆に二つのカレーと水をのせ、近くの空いている席に座る。
焚き火を囲むようになっているその席は、夜になり冷えてきた体を暖めるのにもちょうど良い。
少しして、仕事を終わらせたアリア団長が来る。
どうぞ、とカレーと水がのっているお盆を渡す。
ありがとう、と優しく微笑み受け取るアリア副団長の姿に、周りの視線が突き刺さる。
美人って大変ですね、と視線を送ると、生温い視線を送られた。
少し冷めてしまったカレーを談笑しながら食べていると、アレクサンダー団長が近くに来た。
「アリア副団長、セシリア、お疲れ様。」
カレーのおかわりの帰りに見かけたからと、わざわざ声を掛けてくれたらしい。
山盛りになっているカレーを確認し、男の人はよく食べるなーと思う。
アレクサンダー団長がいるなら、シャロン様もいるかな?と周りを確認するが、どうやらアレクサンダー団長1人のようだ。
そんな、キョロキョロしている私に気付いたアレクサンダー団長が、シャロンならあそこだぞ、と教えてくれる。
指差された方を見ると、二つ隣の焚き火の場所に座っていた。
私が視線を向けた時に、ちょうどシャロン様も視線をあげる。
食事中に突撃するのはいけないと思い、笑顔でシャロン様に手を振ると、私達の間の焚き火に座っていた剣士の男が、俺?と自分を指差す。
お前じゃねーよ!分かるだろ、どうみてもシャロン様だよ!という視線をその剣士に向け、改めてシャロン様を見ると、紫の瞳は、もうこちらを見ていなかった。
「シャロン様がこっちを見てくれない…。」
「はは、相変わらずだなー。」
「セシリアも何であんな無愛想が好きなの?」
「え?だってシャロン様は私の王子様ですもん!」
昔、出会った時から大好きなんです!と言うと、アレクサンダー団長が、シャロンは幸せ者だな、と笑う。
アリア副団長は、いやいや王子って!、いつも冷たくて酷い態度しか取ってないよ⁉︎と困惑気味だ。
誰になんと言われようと、シャロン様は私の想い人で王子様だ。
残りのカレーを食べながら、あとでシャロン様の所に行こう!と決める。
驚かそうとして後ろから近づき、剣を向けられるのは、そう遠くない未来である。
____________________
「ねぇ、昔って、いつシャロンと会ったの?」
「そうですね…私が5歳の時だから、12年前ですね。」
「へぇ!思っていたより前だね!」
「あの日は、兄であるノア団長と森に出かけたのです。」
「あ、出会いも話してくれるんだね。」
「そこで、ウサギを見つけ、追い掛けてたら、ノア団長とはぐれてしまいまして。」
「うん。」
「道に迷って泣いていたら、」
「あ、分かった!そこにシャロンが来たんだ!」
「いえ、あ、まぁそうなんですけど、先に魔獣と遭遇しまして、食べられそうになっている私をシャロン様が助けてくれたんです!」
「すごいね、シャロンもまだ10歳くらいでしょ?勇気あるわね。」
「そうなんです!シュバって一太刀で倒したんですよ!かっこいい!そのあと、魔獣の血塗れの私をノア団長に会わせてくれて、無事に帰れました!シャロン様のおかげです!」
「…良いお話だなと思ったら…貴方、なんでそんなに汚れているの⁉︎」
「え?あぁ、魔獣の近くにいたからですかね?その後の私を見たシャロン様の瞳が冷たくて、私の心は痺れました!そして気付いたのです!これが、噂の、恋!だと!」
「ねぇそれ絶対違う。それにシャロンの瞳はきっと汚いものを見る瞳だよそれ。」
約60名の食事の支度をするのは、5人でしていてもとても大変である。
ここ、東の森に着いてから7日。
ようやく魔物の討伐が終わり、明日は一度、残っている魔物がいないか確認してから帰還となる予定だ。
今回の魔物は力もそこそこあり、なんと言っても数が多かった。
最初の3日ほどは寝ずに動いていたような気がする。忙し過ぎて記憶も曖昧だ。
そんな日々から解放されると思うと嬉しくて、思わず夕食当番に名乗り上げたほどだ。
ただ一つ、残念だと思うのが、遠征中24時間ずっと同じ空間にいれたシャロン様と離れ離れになってしまうという事だろうか。
シャロン様は帰還後、2日ほどの休日があり、その後遠征に出かけてしまう。
それに私も、3日ほどしたら、北の鉱山近くに生える貴重な薬草を取りに10日ほど出かけてしまうのだ。次に会えるのは早くて2週間後だろうか?シャロン様不足で死んでしまうかもしれない。
「セシリアー、もうみんなにカレー配ったから、セシリアも自分の分ついで食べちゃいなさい。」
そんなことを本気で考えていると、今回遠征で一緒だった第4騎士団魔術師副団長のアリア・フランソワーズ様が声を掛けてきた。
いつもはおろしている栗色の髪を今は一つに結んでおり、緑色の瞳をこちらに向けている。
女性にしては高めの167cmの身長に、私が目指すボンキュッボンのスタイルが素晴らしい。
歳は26で、顔立ちはキツめの美人である。
ちなみに、私とノア団長のケンカを止めるのは、いつもこの人である。ご迷惑おかけしています…。
ちなみのちなみに、迷惑をかけている片割れであるノア団長は、うーん、東の森の魔物くらい君たちだけでいけるでしょー?と言って別の遠征に向かっている。
「はーい!アリア副団長のも一緒についでおきますねー?」
そう返事をすると、よろしくー!と少し離れたところから返ってくる。
お盆に二つのカレーと水をのせ、近くの空いている席に座る。
焚き火を囲むようになっているその席は、夜になり冷えてきた体を暖めるのにもちょうど良い。
少しして、仕事を終わらせたアリア団長が来る。
どうぞ、とカレーと水がのっているお盆を渡す。
ありがとう、と優しく微笑み受け取るアリア副団長の姿に、周りの視線が突き刺さる。
美人って大変ですね、と視線を送ると、生温い視線を送られた。
少し冷めてしまったカレーを談笑しながら食べていると、アレクサンダー団長が近くに来た。
「アリア副団長、セシリア、お疲れ様。」
カレーのおかわりの帰りに見かけたからと、わざわざ声を掛けてくれたらしい。
山盛りになっているカレーを確認し、男の人はよく食べるなーと思う。
アレクサンダー団長がいるなら、シャロン様もいるかな?と周りを確認するが、どうやらアレクサンダー団長1人のようだ。
そんな、キョロキョロしている私に気付いたアレクサンダー団長が、シャロンならあそこだぞ、と教えてくれる。
指差された方を見ると、二つ隣の焚き火の場所に座っていた。
私が視線を向けた時に、ちょうどシャロン様も視線をあげる。
食事中に突撃するのはいけないと思い、笑顔でシャロン様に手を振ると、私達の間の焚き火に座っていた剣士の男が、俺?と自分を指差す。
お前じゃねーよ!分かるだろ、どうみてもシャロン様だよ!という視線をその剣士に向け、改めてシャロン様を見ると、紫の瞳は、もうこちらを見ていなかった。
「シャロン様がこっちを見てくれない…。」
「はは、相変わらずだなー。」
「セシリアも何であんな無愛想が好きなの?」
「え?だってシャロン様は私の王子様ですもん!」
昔、出会った時から大好きなんです!と言うと、アレクサンダー団長が、シャロンは幸せ者だな、と笑う。
アリア副団長は、いやいや王子って!、いつも冷たくて酷い態度しか取ってないよ⁉︎と困惑気味だ。
誰になんと言われようと、シャロン様は私の想い人で王子様だ。
残りのカレーを食べながら、あとでシャロン様の所に行こう!と決める。
驚かそうとして後ろから近づき、剣を向けられるのは、そう遠くない未来である。
____________________
「ねぇ、昔って、いつシャロンと会ったの?」
「そうですね…私が5歳の時だから、12年前ですね。」
「へぇ!思っていたより前だね!」
「あの日は、兄であるノア団長と森に出かけたのです。」
「あ、出会いも話してくれるんだね。」
「そこで、ウサギを見つけ、追い掛けてたら、ノア団長とはぐれてしまいまして。」
「うん。」
「道に迷って泣いていたら、」
「あ、分かった!そこにシャロンが来たんだ!」
「いえ、あ、まぁそうなんですけど、先に魔獣と遭遇しまして、食べられそうになっている私をシャロン様が助けてくれたんです!」
「すごいね、シャロンもまだ10歳くらいでしょ?勇気あるわね。」
「そうなんです!シュバって一太刀で倒したんですよ!かっこいい!そのあと、魔獣の血塗れの私をノア団長に会わせてくれて、無事に帰れました!シャロン様のおかげです!」
「…良いお話だなと思ったら…貴方、なんでそんなに汚れているの⁉︎」
「え?あぁ、魔獣の近くにいたからですかね?その後の私を見たシャロン様の瞳が冷たくて、私の心は痺れました!そして気付いたのです!これが、噂の、恋!だと!」
「ねぇそれ絶対違う。それにシャロンの瞳はきっと汚いものを見る瞳だよそれ。」
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