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第4話
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期末の成績もまずまずで、なんとか補習を避けられた俺はキャスター付きのスーツケースを転がして、小田急線の経堂駅(北口)に立っていた。
迎えによこすって言ってたのに来ないじゃんか。なんか隣には派手だけど可愛い子が立ってるだけだしさ…まさかこの子じゃ…ないよなぁ…あ、ジロジロ見ちゃった…
「あのぉ…」
わっ!話かけられた!見すぎたかな
「あっあのすみません!なんかその、可愛いなって思ってみちゃいまし…」
「悠馬くん?」
「え?あ、はい…もしかして…」
その女性は、鎖骨辺りまでのまっすぐな金髪を揺らして近づいてきて
「よかった!ボスの甥っ子さんって聞いてたから、ゴッツイ子想像してたのよ~。こんな可愛らしい子だったのね。私小宮|唯希(いぶき)です。唯一の希望って書いていぶき。よろしくね。ボスの助手してます~」
ボ…ボス…?
「もー、ボスったら画像なり見せてから迎えに来させて欲しいわよねー。じゃあこっちだからいきましょ」
唯希さん…よく喋る人だな…明るくていいけど派手…あの肩出しTシャツ(?)とあんな短いパンツは、目の毒だ…
「すぐそこだからね。あ、荷物持とうか?」
「いえいえ、大丈夫」
女性に荷物持たせるわけにはいかないよ。ちょっとカッコつけたりして。
「受験生なんだって?」
「はい。俺恥ずかしながらちょっと地元の国立危なくて、おじさんが東京の塾の夏期講習で揉まれてみれば…みたいなこと言うもので」
「ボスの地元っていうと、S大かな?あそこが危ないんだぁ…」
ん?なんか今…んん?
「夏休み中いるんだって?」
「そうなんです。こっち方面は全くわからないから、おじさんのいうこと聞いて大人しくしてないとなーとは思ってるけど。ちょっと遊びにも行きたいかなとかも思ってて」
「そうだね、せっかくきてるならちょっとは遊んでもね。あたしも勉強教えてあげるし、もう一人仲間いるけどそいつも教えてくれるよ。叩き込んでやるから、そしたら遊びに行こ」
なんだかさっきから…俺…ほのか~にサゲスマレテル?
駅前の道を線路沿いに少し歩いてから、一回曲がって少し歩いたところで
「ここ、ここの6階最上階が事務所兼ボスの家だよ。悠馬くんの部屋はあたしが片付けておいたからね、綺麗になってるよー」
なんて言ってくれて、それは嬉しい。こんなでかいマンションに住んでたんだなおじさん…探偵って儲かるのかなぁ…
唯希さんはエレベーターを開けてくれて、ーどうぞーと俺を先に入れてくれた。
慣れたように6階を押して、エレベーターは上昇する。
この感覚は実はあまり好きじゃない…けど1ヶ月半もあれば慣れるだろうな。
キンコンと鳴って、エレベーターは止まった。いい音だ。
唯希さんは降りてすぐのドアを開けた。
ドアを入ってすぐに壁があって、そこにはドアがあった。
俺たちはそのドアを横目に右側に歩き、そこにあったもう一つのドアを開けて中に入った。
「ボスー、悠馬くん来ましたよ」
「んー?ああ、サンキューな唯希。もう少しで終わるから、ジュースでも出しててあげてくれ」
少し遠いところからおじさんの声がした。しかし!ジュースって!子供扱いか!
「はあい」
そこは普通にリビングルームが広がり、目の前奥には今どきの離れた流し…(アイランドキッチン)が見える。
「そこのソファに座っててね。ボスは今写真の現像中だからもう少し待ってあげて」
現像?おじさんそんなことまでできんのか?すげー!
唯希さんはそのキッチンへ向かって、冷蔵庫からリンゴジュースのパックをとりだしてジュースを注ぎ、パックごと持ってもどってきた。
「はい、暑かったでしょ?パック持ってきたから、おかわり自由」
とか言って、俺の前にジュースを置いてっくれたけど、なんで俺の隣に座るの?しかも密着しすぎじゃあ…。
「塾はね、今来た道をもっと先に5分ほど行ったところにあるよ。川井ゼミナールっていうとこ。そこの夏期講習に申し込んであるから、明日からいきましょう。頑張って!で、これが事前に渡されたクラス分けテスト。今日中にやっておいてね」
テーブルになんか紙が置いてあるなあとは思ってたけど…え?クラス分けテスト…?
「お金払って夏期講習行ってやってるのに、選別とかやらしいわよね、塾もさ」
自分用に持ってきたグラスにリンゴジュースを入れて、唯希さんなんだか怒り出した。うん、俺もそう思う。
「プロなら平等に教えろっていうのよ、ねえ」
めっちゃ近いところで首を傾げられて、ちょっと俺ドキドキしちゃうじゃん。なんでこんな近くに座んの?
太もも擦り付けないで(歓泣)
「お、来たな。お前ら順調に会えたみたいだな」
「何言ってるんですかー。顔も知らない相手と待ち合わせなんて順調なわけがないでしょ。駅で30分隣り合って待ってましたよ。ねえ」
ねえって覗き込む顔も近いんだよなー!可愛いんだけどなんだろうこの距離感の無さは…
「ほ、ほんとだよ!おじさん!迎えの人にくらい俺の顔みせといたって…」
「お前の画像なんてないからなあ」
食い気味に言われたけど、まあ確かにそうかも…
「じゃあこのお姉さんの顔を俺に送ってくれたってよかったんじゃないですか?」
俺は真っ当なことを言ったぞ!もっともなことを言ったんだ!
なのになんでそんな顔する?
「お姉さん?」
どこをどう見たってお姉さんだろー
「あー!まあ仕方ないか。お前もまた紛らわしい格好しやがって」
おじさん笑うけど?お姉さんも笑うけど…え?
「そいつは男だぞ」
はあ?え?おとこ?本当に楽しそうに笑うね!おじさん!
「えーあたし女に見えた?嬉しいな~」
どこからか鏡を取り出して、髪を整えるおね…お兄さんなん???
「唯希って名前も結構どっちにも使うからな。ああおもしれ」
おじさん笑うけど、この見た目は誰だって勘違いするよ!
「じゃあ改めて自己紹介しとくね。小宮唯希です。はい、これ名刺。ここでボス、時臣さんの助手やってます。よろしくね。あ、あと悠馬くんの勉強係も言いつかってるから、わからないところはなんでも聞いて。後で塾まで一度いってみようね」
いっぺんに言われた…えっと、探偵の助手で、俺の勉強係?そういえばおじさん、母さんにこっちでも勉強教えるし…みたいなこと言ってたな…
「そいつは東大のロースクール出た元検事だよ。そんな形で頭は良いからさ、教わっとけ」
え?東大…?ロースクール?元検事?
かなり近めな隣にいる唯希さんを、ちょっと身体ひいて見つめちゃった
「ヤメ検です~ドラマでよく聞くでしょ?このフレーズ」
確かに聞いたことあるけど、実際のそういう人見たのは初めてだな。
という事は、おじさんはマジで夏期講習と、この人に勉強見てもらうために俺をここに呼んだってこと?え~…結構俺のこと考えてくれてる…
「夏休みなんてさ、自宅に至って遊んじまうもんだしな。まあここに居たって遊ぶかもだけど」
なんか意味深なこと言うな…俺だってS大は受からないと困るからさ、頑張るよ?なんで水刺すようなこと言う?
「そういや唯希、写真できたから典孝と一緒にデータ化と、各所に配布しといてな。スマホで送れりゃあ楽なのによ、まったくめんどくせえ」
「本当人使い荒いなぁ」
とぼやく唯希にーだよなぁーっておじさんは共感してる。そう言うことじゃないんじゃないかな。でも唯希さんはーはあいーと次にはいい返事をして、暗室と思われる方へ歩いて行った、が…典孝って誰?
「悠馬腹減ってないか?中途半端な時間だけど昼飯食ったのか?」
「さっきマックで食ってきたよ」
若えなぁ、って言うおじさんて、本当におじさんなんだな…。
「じゃ、夕飯にどっか行くか。それまでに荷物片付けておけな。唯希、頼むな」
「おじさんはどこ行くの?」
「俺はちょっと野暮用。晩飯までには帰るから心配すんな」
忙しいんだな。探偵ってそんなに仕事あるんだ。
迎えによこすって言ってたのに来ないじゃんか。なんか隣には派手だけど可愛い子が立ってるだけだしさ…まさかこの子じゃ…ないよなぁ…あ、ジロジロ見ちゃった…
「あのぉ…」
わっ!話かけられた!見すぎたかな
「あっあのすみません!なんかその、可愛いなって思ってみちゃいまし…」
「悠馬くん?」
「え?あ、はい…もしかして…」
その女性は、鎖骨辺りまでのまっすぐな金髪を揺らして近づいてきて
「よかった!ボスの甥っ子さんって聞いてたから、ゴッツイ子想像してたのよ~。こんな可愛らしい子だったのね。私小宮|唯希(いぶき)です。唯一の希望って書いていぶき。よろしくね。ボスの助手してます~」
ボ…ボス…?
「もー、ボスったら画像なり見せてから迎えに来させて欲しいわよねー。じゃあこっちだからいきましょ」
唯希さん…よく喋る人だな…明るくていいけど派手…あの肩出しTシャツ(?)とあんな短いパンツは、目の毒だ…
「すぐそこだからね。あ、荷物持とうか?」
「いえいえ、大丈夫」
女性に荷物持たせるわけにはいかないよ。ちょっとカッコつけたりして。
「受験生なんだって?」
「はい。俺恥ずかしながらちょっと地元の国立危なくて、おじさんが東京の塾の夏期講習で揉まれてみれば…みたいなこと言うもので」
「ボスの地元っていうと、S大かな?あそこが危ないんだぁ…」
ん?なんか今…んん?
「夏休み中いるんだって?」
「そうなんです。こっち方面は全くわからないから、おじさんのいうこと聞いて大人しくしてないとなーとは思ってるけど。ちょっと遊びにも行きたいかなとかも思ってて」
「そうだね、せっかくきてるならちょっとは遊んでもね。あたしも勉強教えてあげるし、もう一人仲間いるけどそいつも教えてくれるよ。叩き込んでやるから、そしたら遊びに行こ」
なんだかさっきから…俺…ほのか~にサゲスマレテル?
駅前の道を線路沿いに少し歩いてから、一回曲がって少し歩いたところで
「ここ、ここの6階最上階が事務所兼ボスの家だよ。悠馬くんの部屋はあたしが片付けておいたからね、綺麗になってるよー」
なんて言ってくれて、それは嬉しい。こんなでかいマンションに住んでたんだなおじさん…探偵って儲かるのかなぁ…
唯希さんはエレベーターを開けてくれて、ーどうぞーと俺を先に入れてくれた。
慣れたように6階を押して、エレベーターは上昇する。
この感覚は実はあまり好きじゃない…けど1ヶ月半もあれば慣れるだろうな。
キンコンと鳴って、エレベーターは止まった。いい音だ。
唯希さんは降りてすぐのドアを開けた。
ドアを入ってすぐに壁があって、そこにはドアがあった。
俺たちはそのドアを横目に右側に歩き、そこにあったもう一つのドアを開けて中に入った。
「ボスー、悠馬くん来ましたよ」
「んー?ああ、サンキューな唯希。もう少しで終わるから、ジュースでも出しててあげてくれ」
少し遠いところからおじさんの声がした。しかし!ジュースって!子供扱いか!
「はあい」
そこは普通にリビングルームが広がり、目の前奥には今どきの離れた流し…(アイランドキッチン)が見える。
「そこのソファに座っててね。ボスは今写真の現像中だからもう少し待ってあげて」
現像?おじさんそんなことまでできんのか?すげー!
唯希さんはそのキッチンへ向かって、冷蔵庫からリンゴジュースのパックをとりだしてジュースを注ぎ、パックごと持ってもどってきた。
「はい、暑かったでしょ?パック持ってきたから、おかわり自由」
とか言って、俺の前にジュースを置いてっくれたけど、なんで俺の隣に座るの?しかも密着しすぎじゃあ…。
「塾はね、今来た道をもっと先に5分ほど行ったところにあるよ。川井ゼミナールっていうとこ。そこの夏期講習に申し込んであるから、明日からいきましょう。頑張って!で、これが事前に渡されたクラス分けテスト。今日中にやっておいてね」
テーブルになんか紙が置いてあるなあとは思ってたけど…え?クラス分けテスト…?
「お金払って夏期講習行ってやってるのに、選別とかやらしいわよね、塾もさ」
自分用に持ってきたグラスにリンゴジュースを入れて、唯希さんなんだか怒り出した。うん、俺もそう思う。
「プロなら平等に教えろっていうのよ、ねえ」
めっちゃ近いところで首を傾げられて、ちょっと俺ドキドキしちゃうじゃん。なんでこんな近くに座んの?
太もも擦り付けないで(歓泣)
「お、来たな。お前ら順調に会えたみたいだな」
「何言ってるんですかー。顔も知らない相手と待ち合わせなんて順調なわけがないでしょ。駅で30分隣り合って待ってましたよ。ねえ」
ねえって覗き込む顔も近いんだよなー!可愛いんだけどなんだろうこの距離感の無さは…
「ほ、ほんとだよ!おじさん!迎えの人にくらい俺の顔みせといたって…」
「お前の画像なんてないからなあ」
食い気味に言われたけど、まあ確かにそうかも…
「じゃあこのお姉さんの顔を俺に送ってくれたってよかったんじゃないですか?」
俺は真っ当なことを言ったぞ!もっともなことを言ったんだ!
なのになんでそんな顔する?
「お姉さん?」
どこをどう見たってお姉さんだろー
「あー!まあ仕方ないか。お前もまた紛らわしい格好しやがって」
おじさん笑うけど?お姉さんも笑うけど…え?
「そいつは男だぞ」
はあ?え?おとこ?本当に楽しそうに笑うね!おじさん!
「えーあたし女に見えた?嬉しいな~」
どこからか鏡を取り出して、髪を整えるおね…お兄さんなん???
「唯希って名前も結構どっちにも使うからな。ああおもしれ」
おじさん笑うけど、この見た目は誰だって勘違いするよ!
「じゃあ改めて自己紹介しとくね。小宮唯希です。はい、これ名刺。ここでボス、時臣さんの助手やってます。よろしくね。あ、あと悠馬くんの勉強係も言いつかってるから、わからないところはなんでも聞いて。後で塾まで一度いってみようね」
いっぺんに言われた…えっと、探偵の助手で、俺の勉強係?そういえばおじさん、母さんにこっちでも勉強教えるし…みたいなこと言ってたな…
「そいつは東大のロースクール出た元検事だよ。そんな形で頭は良いからさ、教わっとけ」
え?東大…?ロースクール?元検事?
かなり近めな隣にいる唯希さんを、ちょっと身体ひいて見つめちゃった
「ヤメ検です~ドラマでよく聞くでしょ?このフレーズ」
確かに聞いたことあるけど、実際のそういう人見たのは初めてだな。
という事は、おじさんはマジで夏期講習と、この人に勉強見てもらうために俺をここに呼んだってこと?え~…結構俺のこと考えてくれてる…
「夏休みなんてさ、自宅に至って遊んじまうもんだしな。まあここに居たって遊ぶかもだけど」
なんか意味深なこと言うな…俺だってS大は受からないと困るからさ、頑張るよ?なんで水刺すようなこと言う?
「そういや唯希、写真できたから典孝と一緒にデータ化と、各所に配布しといてな。スマホで送れりゃあ楽なのによ、まったくめんどくせえ」
「本当人使い荒いなぁ」
とぼやく唯希にーだよなぁーっておじさんは共感してる。そう言うことじゃないんじゃないかな。でも唯希さんはーはあいーと次にはいい返事をして、暗室と思われる方へ歩いて行った、が…典孝って誰?
「悠馬腹減ってないか?中途半端な時間だけど昼飯食ったのか?」
「さっきマックで食ってきたよ」
若えなぁ、って言うおじさんて、本当におじさんなんだな…。
「じゃ、夕飯にどっか行くか。それまでに荷物片付けておけな。唯希、頼むな」
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