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7章

第44.5話 らりほー!(後編)

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「火の精霊がどこにあるかは知らぬが、心当たりならあるぞ」

 どこか威厳たっぷりの声が聞こえてきた。
 今気付いたけど、すでに俺たちは多くのドワーフに取り囲まれていた。
 音を聞いて、集まってきたのだ。

 その人垣が割れる。
 1人のドワーフが進み出てきた。

 相変わらず子どものように小さいけど、赤いマントを引きずって歩いてくる様には、独特の威厳がある。
 頭に被った王冠からして、ドワーフの族長だろう。
 どうやら、族長は似非中国人みたいな口調ではないらしい。
 その代わり、視線は鋭く、睨まれただけで背筋が凍った。
 如何にも族長らしい。ザ・族長だ。
 ソンチョーとミャジィに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらだい。

「ラリホー!! 大魔王殿とお見受けするが……」

 ら、ラリホー??
 あ! 似非中国人の次は、そっちのドワーフかよ。
 懐かしすぎるわ!!

「ら、らりほー……。そうです。大魔王のダイチです」
「――――ッ!!」
「え? なんで驚いた顔をしてるんですか?」
「す、すまない。ラリホーといって、ラリホーと返してきたのは、大魔王様だけだったので」
「んん? ラリホーってドワーフの挨拶の言葉じゃないの?」
「違うアル。族長が勝手に流行らせようとしている言葉アル」

 族長が勝手に…………って――――。

「ちなみに意味は〇〇〇って意味だぞ」

 卑猥!
 下ネタを挨拶にしようとするなよ。

 前言撤回……。
 どうして、種族の族長ってこう変わったというか、性に奔放というか。

「平たく言えば、変態ですよね」

 ステノ、君はいつからそんなに容赦のない女の子になったんだい……。

「何をしに来たアルか、族長」
「族長ではなく、パパと呼びなさい」
「え? メーリンって族長の娘だったの??」
「そうアルよ。……あ。でも、パパっていっても金銭的な繋がりで――」

 ちょちょちょちょ! やめて!
 色々と夢を壊すのはやめて。

「はっはっはっ……。メーリンは照れ屋なのだ」
「あ……。族長、今わたしのことを呼び捨てにしたナ? はい。……銀貨5枚、早く払うがよろし」

 メーリンは手を差し出す。
 すると、族長は涙を流しながら、懐にあった銀貨をその手の平に置いた。
 一体、この2人ってどういう関係なんだろうか。

「それで族長……。火の精霊の心辺りがあるって」
「ああ。この城から地下空洞を伝って東に行ったところに、封印の洞窟と呼ばれる入口が魔法の門に閉ざされた場所がある」
「チッ!」

 突然、メーリンが舌打ちする。
 あ……。さては知ってて、言わなかったな。
 きっと情報を下に、俺から金をせびろうとしていたのだろう。
 油断も隙もないヤツだ。

「そこに火の精霊がいると?」
「わからん。だが、魔獣が徘徊しておってな。とても危険な場所であることは確かだ」
「魔獣か……」

 手がかりがない以上、そこを当たってみるしかないか。

「行くみゃ、ダイチ!」
「参りましょう、ダイチ様」
「そうだね。行ってみよう」

 まあ、ミャア、ステノ、ルナがいれば…………って、ルナはどこへ?

 俺は周りを見渡す。
 ルナはまだ像の前で立ち尽くしていた。
 顔を下に向けて、何やら落ち込んでいる。

「どうした、ルナ?」
「はい。……その、折角ダイチ様から買っていただいた物を――」
「なんだ。そういうことか。気にしてなくていいのに」
「でも……。初めてダイチ様に買ってもらったものだから」

 そんなことを考えていたのか。

 俺はルナの頭に手を置く。

「ありがとう、ルナ。そう大事に思ってくれて」
「ダイチ様?」
「俺の贈り物を大事にしてくれるのは嬉しいよ。でも、壊れたものを元通りにはできない。だから、今度はルナがもっと大事にしてもらえるような武器を贈るよ」

 俺はルナの目を見て、言った。

「手伝ってくれるかい?」
「……はい。喜んで」

 ようやくルナに笑顔が戻る。

 金砕棒を持った時のルナも勇敢で頼もしい。
 けど、やっぱりルナには笑顔が似合う。
 ルナやみんなの笑顔を側で見るためにも、早く火の精霊を見つけないとね。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

金砕棒、永遠なれ……。
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