上 下
5 / 48
第1章

第2.5話 『縛り』と『約束』(後編)

しおりを挟む
 頭にステータスが浮かび上がる。

  名前    四條 陸 
  年齢    22
  種族    人間
  職業    勇者
 ――――――――――――――
  レベル     1
  攻撃力   140
  防御力   300
  素早さ   100
  スタミナ   60
  状態耐性  250
 ――――――――――――――
  スキル   縛りプレイ
 ――――――――――――――
  現在の縛り ルーナに指一本も触れさせない


 さっきと比べると、増え方にばらつきがあるな。
 攻撃力は微増だが、防御力と状態耐性が5倍も上がってる。
 そうか。守勢の『縛り』だから、防御面の数値が増えたのか。

 ところで、この縛り。
 指以外なら大丈夫なんだろうか。
 まあ、どうでもいいか。
 とにかく、ルーナには指でも足でも触れさせるつもりはない。

「おら! 死ねぇ!」

 1人の男がショートソードを振りかざし襲いかかってくる。
 相変わらずスローリーだ。
 これなら――。

 パシッ!!

 俺は剣を両手で掴む。
 真剣白羽取りってヤツである。
 おお。出来た。

「この離せ!」

 男は剣を引こうにも、ビクともしないらしい。
 俺は全く力を入れていないんだがな。
 もっと強く押さえてみるか。

 パキィン!

 鉄の刃が折れた。
 男は驚く。
 ついでに俺も驚いていた。

 ――と惚けてる場合じゃない。

 俺は拳を振り上げる。
 男の顔面を捉えると、そのまま吹き飛ばした。
 森の闇の中に消えていく。

「な、なんだ、今の力……」
「今、こいつ……」
「おいおい。剣を折りやがったぞ」
「しかも素手で」

 男たちが俺の力を見て、おののき始める。
 足が止まった。
 攻勢に出るなら今を置いて他にはない。

 俺は自ら男たちの懐に飛び込んでいく。
 一瞬にして間合いを制圧すると、ボディブローを食らわせた。
 男は吹き飛ばされ、また闇の中に消える。

「この野郎!!」

 1人の男が背後から俺を斬りつける。

 がぎぃいぃいぃ!!

 甲高い音が響き渡った。
 何かが空中で回ると、側の地面に突き刺さる。
 森に差し込んだ月光が、ショートソードの切っ先を映した。

「げぇ! なんだよ、これ」

 俺に斬りつけた男は、先のないショートソードを持って狼狽える。

 痛ってぇ……。
 けど、全然血が出てこないところを見ると、衝撃だけで怪我はしていないようだ。
 やべぇな、俺の身体。
 防御力上がり過ぎだろ。

 俺は刃を失った男もあっさり倒す。
 これで3人。
 あとは2人だけだ。

「きゃあ!!」

 悲鳴が聞こえる。
 残り2人がルーナを取り囲んでいた。
 しまった。ちょっと突出しすぎたか。

「こうなったら、お前だけでも!」

 男はショートソードをルーナに向かって振り上げた。

 俺は走る。
 風のようにだ。

「やめろぉぉぉおおぉぉおぉおぉぉおぉおおお!!」

 勢いのまま男を蹴り飛ばす。

 着地すると、ルーナを挟んで反対側にいた男の顔面に拳を見舞った。
 鼻骨を砕かれた男は、そのまま意識を断たれ、倒れる。

「ルーナ、大丈夫か」

「うん。ありがとう、リックお兄ちゃん」

「はあああんんん……」

「どうしたの? 顔、赤いよ?」

「いや、なんでもない。ただちょっとご褒美をもらっただけだ」

「?」

 ルーナは首を傾げる(その仕草もまた可愛い)。

 だが、今説明するわけにはいかない。
 ちょっと説明が難しいからな。
 もう少し大人になってからだ。

「ねぇ、リックお兄ちゃん」

「なんだ?」

「ルーナのパパとママ。探してくれる?」

「ああ。もちろんだ。俺がルーナのパパとママを探してあげる。絶対にだ」

 これは『縛り』なんかじゃない。
 俺とルーナの『約束』だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

なぜか俺だけモテない異世界転生記。

一ノ瀬遊
ファンタジー
日本で生まれ日本で育ったこの物語の主人公、高崎コウが不慮?の事故で死んでしまう。 しかし、神様に気に入られ異世界クラウディアに送られた。 現世で超器用貧乏であった彼が異世界で取得したスキルは、 彼だけの唯一無二のユニークスキル『ミヨウミマネ』であった。 人やモンスターのスキルを見よう見まねして習得して、世界最強を目指していくお話。 そして、コウは強くカッコよくなってハーレムやムフフな事を望むがどういう訳か全然モテない。 バチくそモテない。 寄ってくるのは男だけ。 何でだ?何かの呪いなのか!? ウオォォォ!! プリーズ、モテ期ィィ!! 果たしてこの主人公は世界最強になり、モテモテハーレム道を開けるのか!?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...