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1st season 第四章
080 銭湯のゆくえ
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##### 従業員募集 白兎亭 #####
資格:水魔法が使える女性
報酬:月に金貨1枚
仕事内容:風呂掃除、水張り、湯沸かし
※風呂とは、贅沢な湯浴みの様式で、お湯で出来た池に人が入ります。
※広さ5m×5mで、深さが55cmの池を2つ、毎日いっぱいに出来る魔力量が必要です。
※湯沸かしは、薪を焚いて水をお湯にする仕事です。
※勤務時間14時~21時。
※夕食付き(住み込み希望の場合、朝夕の食事がついて給与は月に銀貨6枚)
※10日に一度、休日(仕事をせず、自由にしていい日)があります。
########################
結局、女湯は高さ8m、男湯は高さ6mに落ち着いた。
6mあれば城壁の向こうがギリギリ見渡せる。
端まで行ったら俺から女湯が見えちゃうけど、一人で入ることはまぁ無いので『どうでもいんじゃね?』って事になった。
「よし、スージー。この条件から、妥当な入浴料を計算してみて」
「わっかんないよ・・・お客さんは毎日何人来る?」
「『何人来る』じゃなく『何人来ないとダメ』って考え方をしないと。まずは最低限必要な一日の売上を考えて」
「えーと、従業員の報酬が金貨1枚だから、3日で銀貨一枚。一日銅貨3枚くらい?」
「あー、そこからか。計算する時はレアにしてから考えるんだ。月に三日休みがあるから、27日で1,000レア。一日だと?」
「37レアとちょっと!そっか、銅貨3枚と鉄貨7枚!」
「うん、純粋に計算が速いのか・・・じゃ、赤字にならないためにはいくらにする?」
「銅貨4枚っ!薪代は採ってくればタダだっしー、毎日一人くれば、黒字っすー!」
「ホントに?銅貨4枚もかかるのに毎日一人来るかな?」
「ナルドさんが居るから大丈夫っ!」
「・・・ナルドさんからお金取らないから・・・街のお客さんで考えよう」
「・・・銅貨一枚で四人?」
「うん、その辺りが出発点だね。そして今回は予算組の練習だから、建築費とかも回収出来るよう計算しよう。その場合『何年で回収するか』っていう計画が必須になる。この年数の事を『減価償却年数』って言うんだ。基本的には、その年数経ったら古くなって使えなくなる年数にする。もっと細かい考え方もあるけど、まずは基本からだね」
「うーん。石とナルドさんはタダだから、鉄の代金が建築費?」
「うん。まぁそれでいっか。ざっくり金貨10枚くらいかな?」
「減価償却年数は?」
「そこが難しい。やった事のないことだと、何年で壊れるかわかんないだろ?この読みを外すと、予算計画が破綻する。スージーは何年くらいもつと思う?」
「・・・うーん、お鍋が3~4年だから、3年くらい?」
「うん、これは俺もわからん。じゃ、3年で計算してみよう」
「27日の12ヶ月の3年で972日。10,000レアを割ると、一日あたり10レアともう少し?」
「あー、折角だから少数の概念について教えとこう・・・(ごにょごにょ)・・・わかった?」
「わかった!そうすると、従業員が37.04レアで、減価償却が10,29レア、合わせて47.33レアだから、銅貨4枚と鉄貨8枚売り上げれば赤字にならないっすー」
「うん、これで最低目標が出来たね。でも商売でやるなら儲けが出ないと面白くないだろ?今度はそれを加味して、『いくらで何人来たら毎月どれだけ儲かるか』を考えるんだ。値段が安ければ沢山来るだろうけど、安すぎても意味が無い。例えば鉄貨一枚で1,000人来られても対応し切れないし、銅貨一枚で100人の方が同じ売上でも効率がいい」
「なるほどー」
「実際は銅貨一枚で、日に10人くらいのお客さんの商売にしておいたほうが、面倒が無くていいよね」
「毎日100レアの売上で儲けが52.67レア。一ヶ月で1422.09レア、一年で17,065.08レアの儲けっすー」
「うん、年間金貨17枚じゃ、儲かった気にはならないだろうけど、これで俺達が居ないときにもラティアとアリスがお風呂に入れるなら問題ないな」
「主様、やっさしんっだ~~~っ」
「おう」
~~~~~
半月後、白兎亭。
「・・・甘かった~~~~っ!」
「は~い、最後尾はこちらで~す!只今6時間待ちとなっておりま~す!」
「な~?だから言ったろ?金貨一枚でも入るって」
「ちょ、アンタ、なんとかしなさいよっ!」
5m×5mの浴槽。
ゆったり入るなら10人程度。
お貴族様気分を味わうために人数制限を設け、一人上がったら一人入る方式で始めた銭湯だったが、四日目にして噂が人を呼び、16時の開店時には既に、白兎亭の外まで長蛇の列を作っている。
「一時間に15人回したとして、男女で30人。これ・・200人は居るよな?」
「今打ち切っても閉店の21時までに収まりきらないわね」
「時間制の整理券作って今日は打ち切ろう・・・配り終わったら、作戦会議だ」
~~~~~
「第一回、銭湯流行り過ぎ対策会議~、はい、拍手~」
ぱちぱちぱちぱち
「呑気に拍手とかしてる場合じゃないからっ!」
「あー、まー、結構焦ったな?」
「どうすんのよっ!」
「あー、方向性としては二択だな。1.このまま勢いにのって拡大。2.現状維持で下火になるのを待つ」
「どちらがいいのだろう?」
「どっちも一長一短ある。まず拡大路線だけど、当然利益が増えるし、捌くのも楽になる。水魔法担当も増やして定休日を無しにしたり、相乗効果で白兎亭の食事客も増えるだろう。悪い点は、流行が去ったら設備投資が無駄になり、水魔法担当も最初の一人に戻る・・・更に、気持ち的にちょっと失敗した感が残る」
「現状維持は?」
「実は現業維持の方が当面の客数増える可能性が高い。『行列効果』って言って、たいして興味も無いのに、みんなが並んでると、なんだか凄くいいものに思えて、自分も並びたくなる。但し、その場合流行が終わるのも早い。何時間も並ぶほどのもんじゃないってそのうち気づくんだ。もしくは並んでるのを見て、別の商人が真似する。もともとそんなに儲けるつもりの事業じゃ無かったから、放っておいて当初予定の一日10人程度に落ち着かせる手も悪くない」
「で、どっちにすんのよ?もう決めてんでしょ?」
「あー、わかるか?ズバリ、超拡大するっ!」
翌日には同サイズの露天風呂を男女一つずつ追加、程よく行列を維持し続けたまま、カインの無茶振りが始まった。
「はい、エマはコレ。簡単なデザイン幾つか描いてるから、とりあえず男女合計様々なサイズで1000は作って。貸し出しと販売、両方やるから」
水着である。
しかも、この世界の水着にはパッドが入っていない!というか水着だけ教えてパッドという知識を教えないっ!
普通なら湯浴衣を量産するところだが、カインはこの期に『ビキニ天国』を顕現させる世紀の大事業に乗り出したのだ!
「リシェルはこの図面通りのどんどん作ってって。ナルドさんはリシェルが出来次第、風呂釜の設置をお願いします。あ、鉄は貸しといてください。絶対後悔させませんからっ!」
ウォータースライダー、サウナ、着衣混浴ジャグジー・・・etc。
そう、カインはいきなりスパリゾートの建設に着工したのだった。
・・・エルダーサの人口は僅か4万人・・・果たして・・・。
資格:水魔法が使える女性
報酬:月に金貨1枚
仕事内容:風呂掃除、水張り、湯沸かし
※風呂とは、贅沢な湯浴みの様式で、お湯で出来た池に人が入ります。
※広さ5m×5mで、深さが55cmの池を2つ、毎日いっぱいに出来る魔力量が必要です。
※湯沸かしは、薪を焚いて水をお湯にする仕事です。
※勤務時間14時~21時。
※夕食付き(住み込み希望の場合、朝夕の食事がついて給与は月に銀貨6枚)
※10日に一度、休日(仕事をせず、自由にしていい日)があります。
########################
結局、女湯は高さ8m、男湯は高さ6mに落ち着いた。
6mあれば城壁の向こうがギリギリ見渡せる。
端まで行ったら俺から女湯が見えちゃうけど、一人で入ることはまぁ無いので『どうでもいんじゃね?』って事になった。
「よし、スージー。この条件から、妥当な入浴料を計算してみて」
「わっかんないよ・・・お客さんは毎日何人来る?」
「『何人来る』じゃなく『何人来ないとダメ』って考え方をしないと。まずは最低限必要な一日の売上を考えて」
「えーと、従業員の報酬が金貨1枚だから、3日で銀貨一枚。一日銅貨3枚くらい?」
「あー、そこからか。計算する時はレアにしてから考えるんだ。月に三日休みがあるから、27日で1,000レア。一日だと?」
「37レアとちょっと!そっか、銅貨3枚と鉄貨7枚!」
「うん、純粋に計算が速いのか・・・じゃ、赤字にならないためにはいくらにする?」
「銅貨4枚っ!薪代は採ってくればタダだっしー、毎日一人くれば、黒字っすー!」
「ホントに?銅貨4枚もかかるのに毎日一人来るかな?」
「ナルドさんが居るから大丈夫っ!」
「・・・ナルドさんからお金取らないから・・・街のお客さんで考えよう」
「・・・銅貨一枚で四人?」
「うん、その辺りが出発点だね。そして今回は予算組の練習だから、建築費とかも回収出来るよう計算しよう。その場合『何年で回収するか』っていう計画が必須になる。この年数の事を『減価償却年数』って言うんだ。基本的には、その年数経ったら古くなって使えなくなる年数にする。もっと細かい考え方もあるけど、まずは基本からだね」
「うーん。石とナルドさんはタダだから、鉄の代金が建築費?」
「うん。まぁそれでいっか。ざっくり金貨10枚くらいかな?」
「減価償却年数は?」
「そこが難しい。やった事のないことだと、何年で壊れるかわかんないだろ?この読みを外すと、予算計画が破綻する。スージーは何年くらいもつと思う?」
「・・・うーん、お鍋が3~4年だから、3年くらい?」
「うん、これは俺もわからん。じゃ、3年で計算してみよう」
「27日の12ヶ月の3年で972日。10,000レアを割ると、一日あたり10レアともう少し?」
「あー、折角だから少数の概念について教えとこう・・・(ごにょごにょ)・・・わかった?」
「わかった!そうすると、従業員が37.04レアで、減価償却が10,29レア、合わせて47.33レアだから、銅貨4枚と鉄貨8枚売り上げれば赤字にならないっすー」
「うん、これで最低目標が出来たね。でも商売でやるなら儲けが出ないと面白くないだろ?今度はそれを加味して、『いくらで何人来たら毎月どれだけ儲かるか』を考えるんだ。値段が安ければ沢山来るだろうけど、安すぎても意味が無い。例えば鉄貨一枚で1,000人来られても対応し切れないし、銅貨一枚で100人の方が同じ売上でも効率がいい」
「なるほどー」
「実際は銅貨一枚で、日に10人くらいのお客さんの商売にしておいたほうが、面倒が無くていいよね」
「毎日100レアの売上で儲けが52.67レア。一ヶ月で1422.09レア、一年で17,065.08レアの儲けっすー」
「うん、年間金貨17枚じゃ、儲かった気にはならないだろうけど、これで俺達が居ないときにもラティアとアリスがお風呂に入れるなら問題ないな」
「主様、やっさしんっだ~~~っ」
「おう」
~~~~~
半月後、白兎亭。
「・・・甘かった~~~~っ!」
「は~い、最後尾はこちらで~す!只今6時間待ちとなっておりま~す!」
「な~?だから言ったろ?金貨一枚でも入るって」
「ちょ、アンタ、なんとかしなさいよっ!」
5m×5mの浴槽。
ゆったり入るなら10人程度。
お貴族様気分を味わうために人数制限を設け、一人上がったら一人入る方式で始めた銭湯だったが、四日目にして噂が人を呼び、16時の開店時には既に、白兎亭の外まで長蛇の列を作っている。
「一時間に15人回したとして、男女で30人。これ・・200人は居るよな?」
「今打ち切っても閉店の21時までに収まりきらないわね」
「時間制の整理券作って今日は打ち切ろう・・・配り終わったら、作戦会議だ」
~~~~~
「第一回、銭湯流行り過ぎ対策会議~、はい、拍手~」
ぱちぱちぱちぱち
「呑気に拍手とかしてる場合じゃないからっ!」
「あー、まー、結構焦ったな?」
「どうすんのよっ!」
「あー、方向性としては二択だな。1.このまま勢いにのって拡大。2.現状維持で下火になるのを待つ」
「どちらがいいのだろう?」
「どっちも一長一短ある。まず拡大路線だけど、当然利益が増えるし、捌くのも楽になる。水魔法担当も増やして定休日を無しにしたり、相乗効果で白兎亭の食事客も増えるだろう。悪い点は、流行が去ったら設備投資が無駄になり、水魔法担当も最初の一人に戻る・・・更に、気持ち的にちょっと失敗した感が残る」
「現状維持は?」
「実は現業維持の方が当面の客数増える可能性が高い。『行列効果』って言って、たいして興味も無いのに、みんなが並んでると、なんだか凄くいいものに思えて、自分も並びたくなる。但し、その場合流行が終わるのも早い。何時間も並ぶほどのもんじゃないってそのうち気づくんだ。もしくは並んでるのを見て、別の商人が真似する。もともとそんなに儲けるつもりの事業じゃ無かったから、放っておいて当初予定の一日10人程度に落ち着かせる手も悪くない」
「で、どっちにすんのよ?もう決めてんでしょ?」
「あー、わかるか?ズバリ、超拡大するっ!」
翌日には同サイズの露天風呂を男女一つずつ追加、程よく行列を維持し続けたまま、カインの無茶振りが始まった。
「はい、エマはコレ。簡単なデザイン幾つか描いてるから、とりあえず男女合計様々なサイズで1000は作って。貸し出しと販売、両方やるから」
水着である。
しかも、この世界の水着にはパッドが入っていない!というか水着だけ教えてパッドという知識を教えないっ!
普通なら湯浴衣を量産するところだが、カインはこの期に『ビキニ天国』を顕現させる世紀の大事業に乗り出したのだ!
「リシェルはこの図面通りのどんどん作ってって。ナルドさんはリシェルが出来次第、風呂釜の設置をお願いします。あ、鉄は貸しといてください。絶対後悔させませんからっ!」
ウォータースライダー、サウナ、着衣混浴ジャグジー・・・etc。
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