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1st season 第三章
047 聖剣のゆくえ
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「ユリアだった。話は済んだ。帰ろう」
子爵邸をあとにするカインは怒りに支配されていた。
あの男に対するものでは無い、これだけ距離を置いて尚、カインの自尊心を踏みにじってばかりのユリアに対する怒りだ。
(なんであんな女が幼馴染なんだよっ!)
「アンタ、大丈夫?・・・じゃないわね。宿に戻って落ち着いて聞くわ」
「ワタシも同行させてもらって良いだろうか?」
シリアとアベルに顛末を説明しないのは態度が悪いと感じながらも、カインは口を開くことが出来ないでいた。
口を開いたが最後、辺り構わず八つ当たりの言葉しか吐けない気がしているのだ。
二人の宿に三人が着く。
甲冑は椅子には座りにくそうだったので、アベルとシリアがベッドに腰掛けた。
「ユリアだったよ。娼婦でも着ないようなふざけた服で、尻を揉まれてダラダラ汁を垂らしてた」
「・・・・・」
「・・・・・どうするの?」
「やめさせる・・・わるい、勝手に話を決めてきちまった」
カインは今更気づいた。
「あー、すまん。やめさせるの、やめるかもしれん」
「少し落ち着きなさいよ。お茶でも貰ってくるから」
シリアが食堂からお茶を買ってきた。
化学物質に染まっていないこの世界の人間に、お茶の鎮静作用はそれなりに効く。
シリアはメイのようにキュアーを乱用しない。
いや、そもそもキュアーは戦闘用で、メイのように私生活で多用するものの方が稀だ。
「久々にカッーとなったよ。あの女、どこまで俺に嫌がらせすれば気が済むんだって話」
「何を言われたのだ?」
「ああ、言われたんじゃなくて存在そのものだよ。二人の前でなんだけど、俺、本気で大事にしてたんだぜ?俺に隠れて乱交するだけじゃ飽き足らず、今度は性奴隷だよ!俺の立場ってなんなの?あんな女、なんで幼馴染なんかに生まれたんだよ」
一度落ち着いた怒りが、言葉にする事で再燃してしまう。
怒りはキモチワルイ。
そのキモチワルサをもたらした者に更に怒りが大きくなる。
「いや、最初は俺もさ、なんか助けるとか思って行ったんだよ。でもあの格好ひと目見てそんなの忘れた。腹立つわー。まただぜまた?」
「そんな風には見えなかったのだが・・・」
「あー、うん。俺以外には違って見えるかもな。泣いてたし。でも俺には無理だわ」
「なのにアンタ、助けるの?」
「いや、助けるとかそういうのじゃねーな。文字通り首に輪つけて引きずって、シシラルのおじさんおばさんに引き渡して、あとはもう俺の視界に入らないで欲しい。なんつーかホラ、このままエルダーサ帰っても、昔惚れてた女が王都で性奴隷やってるとか、知っちゃったらずっとイラッと来るだろ?でも・・・あたまに血のぼっておまえの事とか全然考えてなかった、悪い」
「そのくらい別に付き合うわよ」
「いや、違うんだ。売る条件が白金貨10枚と、三ヶ月屋敷に寝泊まりして、ヤってるユリアを見続けろだと。」
「しっ、白金貨!?」
「三ヶ月・・・」
「ああ、金なら売るモンもあるしどうとでもなるだろうけど、冷静になったらお前三ヶ月も置いてくわけじゃん、それはちょっとな?」
「カイン君、少し会わない間に随分とお金持ちになったのだな・・・」
「いや、なんかその、前に作ったものが売れたのと、お詫びにってホルジス様に貰ったものもあるし」
「ホルジス様?いや、すまん、その話は今度また聞こう。して、どうするつもりだ?」
「いや、どうするも何も、コイツとあの女じゃそもそも天秤にすらのらないし、ラティアさんだって心配させちゃうし」
「決めたわ。アンタ、その女買ってきなさいっ!」
「はぁ?」
「三ヶ月くらい待っててあげる。この先ずっと思い出して青い顔してへたり込まれるよりずっとマシよっ!女将さんには手紙でも出せばいいじゃないっ!」
「いやでもな、俺もお前と離れて胸くそ悪いとこ三ヶ月も居たくないし・・・」
「何ヘタレた事言ってんのよっ!胸くそ悪いくらい我慢しなさいっ!こっちはもぅずっと待ってるっつーのっ!」
「・・・面目無い」
「まぁ、ホントに辛くなったら途中で帰ってきなさい・・・ここで待っててあげるから」
その日のうちに貰ったばかりのエクスカリバーをオークション・ホールに持って行った。
鑑定の結果、これから告知して来月オークションを開催すれば、やはり白金貨100枚は下らないだろうと言われた。
そんなに待っていられないとシリアがゴネ、ホールがすぐに動かせる限界、白金貨20枚で売り払った。
ホールの役員は本当にいいのかしつこく確認してきたが、俺達には白金貨20枚でも100枚でも、みたことも無い大金ってだけで、細かい金額の差、まぁ実際は細かくないんだが、その差なんて実感が無かった。
もう、金銭感覚がおかしすぎる。
あとでホルジス様にお詫びに行かなきゃ。
俺が居ない間、シリアはアベルさん達と一緒に行動させてもらう事になった。
アベルさんの人の話を聞かないお節介が発動したからだ。
有り難い。
明日からあの胸くそ悪い世界で過ごすのかと思うと気が重くなったので、めちゃめちゃ拝み倒してシリアに『つんっ』ってさせて貰った、また「ひゃんっ!」って変な音が出たので、三ヶ月頑張れると思う。
そして翌朝、シリアに見送られて、再び俺は子爵邸の門をくぐった。
子爵邸をあとにするカインは怒りに支配されていた。
あの男に対するものでは無い、これだけ距離を置いて尚、カインの自尊心を踏みにじってばかりのユリアに対する怒りだ。
(なんであんな女が幼馴染なんだよっ!)
「アンタ、大丈夫?・・・じゃないわね。宿に戻って落ち着いて聞くわ」
「ワタシも同行させてもらって良いだろうか?」
シリアとアベルに顛末を説明しないのは態度が悪いと感じながらも、カインは口を開くことが出来ないでいた。
口を開いたが最後、辺り構わず八つ当たりの言葉しか吐けない気がしているのだ。
二人の宿に三人が着く。
甲冑は椅子には座りにくそうだったので、アベルとシリアがベッドに腰掛けた。
「ユリアだったよ。娼婦でも着ないようなふざけた服で、尻を揉まれてダラダラ汁を垂らしてた」
「・・・・・」
「・・・・・どうするの?」
「やめさせる・・・わるい、勝手に話を決めてきちまった」
カインは今更気づいた。
「あー、すまん。やめさせるの、やめるかもしれん」
「少し落ち着きなさいよ。お茶でも貰ってくるから」
シリアが食堂からお茶を買ってきた。
化学物質に染まっていないこの世界の人間に、お茶の鎮静作用はそれなりに効く。
シリアはメイのようにキュアーを乱用しない。
いや、そもそもキュアーは戦闘用で、メイのように私生活で多用するものの方が稀だ。
「久々にカッーとなったよ。あの女、どこまで俺に嫌がらせすれば気が済むんだって話」
「何を言われたのだ?」
「ああ、言われたんじゃなくて存在そのものだよ。二人の前でなんだけど、俺、本気で大事にしてたんだぜ?俺に隠れて乱交するだけじゃ飽き足らず、今度は性奴隷だよ!俺の立場ってなんなの?あんな女、なんで幼馴染なんかに生まれたんだよ」
一度落ち着いた怒りが、言葉にする事で再燃してしまう。
怒りはキモチワルイ。
そのキモチワルサをもたらした者に更に怒りが大きくなる。
「いや、最初は俺もさ、なんか助けるとか思って行ったんだよ。でもあの格好ひと目見てそんなの忘れた。腹立つわー。まただぜまた?」
「そんな風には見えなかったのだが・・・」
「あー、うん。俺以外には違って見えるかもな。泣いてたし。でも俺には無理だわ」
「なのにアンタ、助けるの?」
「いや、助けるとかそういうのじゃねーな。文字通り首に輪つけて引きずって、シシラルのおじさんおばさんに引き渡して、あとはもう俺の視界に入らないで欲しい。なんつーかホラ、このままエルダーサ帰っても、昔惚れてた女が王都で性奴隷やってるとか、知っちゃったらずっとイラッと来るだろ?でも・・・あたまに血のぼっておまえの事とか全然考えてなかった、悪い」
「そのくらい別に付き合うわよ」
「いや、違うんだ。売る条件が白金貨10枚と、三ヶ月屋敷に寝泊まりして、ヤってるユリアを見続けろだと。」
「しっ、白金貨!?」
「三ヶ月・・・」
「ああ、金なら売るモンもあるしどうとでもなるだろうけど、冷静になったらお前三ヶ月も置いてくわけじゃん、それはちょっとな?」
「カイン君、少し会わない間に随分とお金持ちになったのだな・・・」
「いや、なんかその、前に作ったものが売れたのと、お詫びにってホルジス様に貰ったものもあるし」
「ホルジス様?いや、すまん、その話は今度また聞こう。して、どうするつもりだ?」
「いや、どうするも何も、コイツとあの女じゃそもそも天秤にすらのらないし、ラティアさんだって心配させちゃうし」
「決めたわ。アンタ、その女買ってきなさいっ!」
「はぁ?」
「三ヶ月くらい待っててあげる。この先ずっと思い出して青い顔してへたり込まれるよりずっとマシよっ!女将さんには手紙でも出せばいいじゃないっ!」
「いやでもな、俺もお前と離れて胸くそ悪いとこ三ヶ月も居たくないし・・・」
「何ヘタレた事言ってんのよっ!胸くそ悪いくらい我慢しなさいっ!こっちはもぅずっと待ってるっつーのっ!」
「・・・面目無い」
「まぁ、ホントに辛くなったら途中で帰ってきなさい・・・ここで待っててあげるから」
その日のうちに貰ったばかりのエクスカリバーをオークション・ホールに持って行った。
鑑定の結果、これから告知して来月オークションを開催すれば、やはり白金貨100枚は下らないだろうと言われた。
そんなに待っていられないとシリアがゴネ、ホールがすぐに動かせる限界、白金貨20枚で売り払った。
ホールの役員は本当にいいのかしつこく確認してきたが、俺達には白金貨20枚でも100枚でも、みたことも無い大金ってだけで、細かい金額の差、まぁ実際は細かくないんだが、その差なんて実感が無かった。
もう、金銭感覚がおかしすぎる。
あとでホルジス様にお詫びに行かなきゃ。
俺が居ない間、シリアはアベルさん達と一緒に行動させてもらう事になった。
アベルさんの人の話を聞かないお節介が発動したからだ。
有り難い。
明日からあの胸くそ悪い世界で過ごすのかと思うと気が重くなったので、めちゃめちゃ拝み倒してシリアに『つんっ』ってさせて貰った、また「ひゃんっ!」って変な音が出たので、三ヶ月頑張れると思う。
そして翌朝、シリアに見送られて、再び俺は子爵邸の門をくぐった。
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