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1st season 第一章

020 喪失

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カインがギルドの扉を開くと、一瞬室内が静まり返った。
集まる視線なぞ完全に無視して、採取袋から白月草しらつきくさをカウンターに出す。
驚きのどよめきが起こる。

「これで依頼完了ですよね?報酬は口座に、じゃ、急ぐんで。」
「あ、カインさん・・・」

何かを言いかけたスタッフを置き去りにし、カインは小走りにギルドを出ていく。

~~~~~

まみれ、泥まみれ、ゲロまみれのカインは、金鶏亭の階段を駆け上がる。

コンコン

「カインです。あけて下さい。ユリア、迎えに来たよ!」

ゴンゴン、ゴンゴン

「カインです。誰か!あけて下さい!」

ギィー・・・開いたのは隣の扉だった。

「兄ちゃん、勘弁してくれよ。寝られねぇだろ?」
「すみません。仲間がココにいるんです」
「あー、要塞フォートレスなら引っ越すって出てったぜ?」
「え、どこに行ったかわかりますか?」
「知らねーな?」

金鶏亭の主人に聞いても彼らの行方はわからなかった。
伝言を頼もうとギルドへ戻る。

「あっ、カインさん、戻られたのですね」
「はい、ユリアか要塞フォートレスに伝言お願いできますか?」
「やっぱり、ご存知無かったんですね?、一昨日ユリアさんが見えられて、シシラル・ヴィレッジの解散を知った途端に大泣きしてしまって・・・その日のうちの要塞フォートレスの皆さんと・・・暫く旅に出るから依頼は受けられないって・・・」
「行き先は?行き先はどこですか?」
「特におっしゃっていませんでした。どこかで落ち着いたらそこのギルドに滞在届けを出されると・・・」

カインはフラフラと外へ出た。

あいつら・・・ユリアを連れ去りやがった!
どこだ?どこに向かった?
以前のように延々彷徨さまようような事はしない。
広場の噴水に腰掛け、前世記憶を総動員して対抗策を考える。

冒険者が向かうところと言えば、大抵はギルドの支部がある街だ。
本部のある王都って線もある。
いや、でもD級ならダンジョンって事もあるか?

選択肢は無限にある、虱潰しらみつぶしにあたるにしても、そもそもダンジョンであればカインは入れない。

入れ違いになるリスクを考えれば、エルダーサの街で待っている方がよほど確実だ。
だが、戻ってこなかったら・・・いや、戻ってこない可能性は少ないはずだ、D級にもなればしがらみも増える、ここで待ってるのが一番可能性が高い。

待つべきか追うべきか?
以前のカインであれば激情に駆られ、あてもなく飛び出していたはずだが、知識量の増えた今、もっともクレバーな解を選ぶため、必死に感情を押し留める。

夜が来て、日が昇り、日が沈み、夜が来る。
カインはホームレスのように座り続けた。
実際、定宿じょうやどを引き払ってしまったカインはホームレスだった。
金鶏亭の出来事から今日までの間、食べたり飲んだりした記憶が殆ど無い。
それどころか殴られて気絶したくらいしか眠った記憶もない。
悩み続けるカインの意識を、限界を迎えた肉体が強制的に遮断した。
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