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Chapter12:クリスマスの夜に

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「えへへ♡ お外でかんぱーいってするの、初めてだよね?」
「あー、確かに! はなとするのは初めてだ!!」
「いつもはまさやんさんと?」
「そうそう、ビールジョッキでね」

 あおくんと外食する事はちょくちょくあるけど、居酒屋じゃないからグラスをカチンとするのは初めての経験だった。

「そっかぁ」

 ミツキさんの件はこの前解決してるから、「私以外の誰かとあおくんが乾杯してる」ってなってても嫉妬はしない。

「マグカップで乾杯って、なんか新鮮な気分だよ! しかもそれをはなと出来てるっていうのが嬉しいし幸せだなぁ♡」

 それにあおくんが言葉通り幸せそうな表情をしてくれているから私は素直に喜ぶ事が出来ていた。

「うんうん♡ 私もすっごく嬉しいしすっごく幸せ♡」

 私の「すっごく」にあおくんは更に喜んでくれる。

「じゃあ飲んでみよっか♪」
「うん! せっかくのあったか飲み物だもんね」
「そうだよ~」
「じゃあ早速、いただきまーす」

 私がマグカップに口をつけるのを確かめた上で

「ふふふ♪」

 あおくんもコクっとホットワインを飲んでみる。

「「ふわぁ~」」

 同時にほわほわの白い息と共にため息が出て

「「えへへ♡」」

 同時に照れ笑いして、幸せ気分に浸る


「ね、あおくんの中身ってワインなんだよね? あったかいワインってどんな感じ?」

 中身が違うからか、同柄であっても私のスーベニアマグとあおくんのとでは色が違う。

「ああこれ? そうだねーお砂糖やフルーツやスパイス……色んな味や香りがするよ」

 あおくんは水色のマグカップを持ち上げながら説明してくれたんだけど

「色んな味と香りかぁ。普通のワインをあっためただけじゃないんだね」
「うん、しかもこれはノンアルコールワインだし」

 ……と、意外な点を口にする。

「えっ?! ノンアルコールワインなの?」

 てっきりアルコール入りの普通の赤ワインだと思っていたからめちゃくちゃビックリしてる。

「え? 逆になんでアルコール入りだと思ったの?」

 っていうか、あおくんがそんな発言をする事自体がビックリで……

「いやいやいやいや、あおくんお酒飲めるじゃん! 20歳過ぎてるんだから!!」

 なんで今ノンアルコールワインを飲んでいるのか、全く意味が分からない。

「えっ? 昨夜だって飲んだのはグレープジュースや炭酸飲料だよ?」
「それは私とシェアしたからじゃん! まだ19歳の私と飲み物をシェアするのと、今日みたいにそれぞれ注文したのを飲むのとでは違うよ?
 あおくん、今日くらいはお酒飲んじゃえば良いのにぃ……」

 確かに昨夜のおうちクリスマスではノンアルコールを2人で楽しんだ。でもそれはまだ20歳の誕生日が来てない私に配慮しての行動だと思っていた。

(今日は飲み物シェアしないのに……あおくん、今日くらいビールやワイン飲んじゃえば良いのにぃ)

「あのね、はな……」

 なのにあおくんはニコニコと優しく微笑んで

「はなは俺の誕生日が何月か知ってるよね?」

 って訊いてきたんだ。

「あおくんの誕生日……もちろん知ってるよ」

 お互いの誕生日は、知り合ってすぐに教えあっていて一度も忘れた事がない。

「あおくんは3月16日がお誕生日。ちゃんと覚えてるよ!」

 私がそう答えるとすぐに

「そうだよ、そしてはなの誕生日は2月14日。俺もはなも早生まれでさ、俺自身お酒飲めるようになってまだ2年も経ってないんだよ」

 と、優しい口調で語りかける。

「うん……」
「俺がはなと同じ早生まれ……しかも3月だから『友達はもう飲めるのに自分だけまだ』って経験をはな同様してきたんだよ」
「……」

 確かに、大学2年の今私は沙羅ちゃん音羽ちゃんに対して「まだ」を経験中だ。

「はなは敢えて俺にそういう話をしないんだと思う。だけど俺も経験してるから、はなが20歳になるまでは俺もノンアルで楽しもうって考えてたんだ」
「……私が今、『自分だけ飲めない』を経験してるから?」
「そう、俺自身ちょっと嫌な気分だったからね。まぁ仕方のない事でもあるんだけど」
「……」
「俺は彼女に、嫌な気分になって欲しくないんだ。それが年齢に関わるどうにもならない内容であってもね」

 あおくんは本当に優しい。クリスマスデートの最中でも、すっごくすっごく私に優しくしてくれる。

「あおくん……」
「まぁ、今の時代はノンアルのバリエーションが豊富だからさ、全く苦にならないんだよ。今もノンアルのホットワインを飲んでるけどアルコール入ってるんじゃないかってくらいに満足感あるし」

 20歳未満の私に合わせてノンアルホットワインにしてくれているんだけど、それを飲んでいる彼の様子には全くの嫌味がない。

「あおくんが美味しく飲めてて満足なら、私も嬉しいけどぉ」

 私はチョコレートスプーンをかき混ぜながらミルクに溶かして、またコクンと飲むと

「はなが嬉しいなら何よりだよ。俺は単純に、はなには心地よく俺と食事してもらいたいって気持ちがあるの」

 あおくんもコクンと飲んで頬をほっこりとピンク色に染める。

「そっかぁ」
「うん、スパイスの効果かな?実際体がジンジン熱くなる感覚あるからね。アルコール飲んでるみたいな火照りを感じるっていうか」
「火照るんだ? 確かにあおくんのほっぺがピンク色になってきてるけど」

 頬の赤らめは単に感情や飲み物の温かさだけが原因ではなかったみたい。

「うん、スパイスって血行良くするみたいだからね。すっごくポカポカしてる」
「そうなんだぁ~それなら良かったぁ」

 ノンアルなら私もあおくんと同じホットワインを飲んでみたい気持ちがあるけど「基本的にノンアル飲料は20歳以上を想定した飲料になっているから飲んだらダメ」ってチャコ叔母さんにきつく言われている。今ここで飲んでも絶対にバレないけど、一応私は酒類販売するコンビニ経営者の親族なんだからルールはしっかり守っておかなくちゃならない。

「じゃああらためて乾杯♡」
「うん、乾杯♡」

 あおくんの考えがしっかりと理解出来た上で私達はまたマグカップをカチンとやって

「美味しいね!」
「うんうん! ドイツ料理美味しい!」

 お腹いっぱい料理や飲み物を楽しんだ。



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