上 下
137 / 165
Chapter:11 可愛いジェラシー

7

しおりを挟む
(言っちゃった……あおくんに、コルクボード見ちゃった事……)


 居た堪れない気持ちになった私は俯き肩も震え出す。

「はな……」

 あおくんは私の呼び、両手で震える肩に触れながら……

「はなは、俺の部屋を掃除しようとしてくれたんだね。一応、お風呂とか洗面台とかは綺麗にしておいてお留守番してくれるはなの手を煩わせないようにって努力してみたんだけど……足りてなかったね、ごめんね」

 落ち着いたトーンで優しく語りかけるようにしながら、はなに「ごめんね」をまた口にする。

「うぅ……」

(3回目の「ごめん」は、なんか意味合いが違う……? どういう事?)

 1回目2回目の謝りは、元カノミツキさんと私との事をさしているんじゃないかと思っていた。けど、なんかこの3は違うような雰囲気がする。

「俺が小物置いてるカウンターをきちんと片付けしなかったのもあるし、普段からあのコルクボードの上半分しか使ってなかったから……だから俺が悪いんだよ」

 あおくんの「ごめんね」は明らかに「写真」ではなく「片付け」を差していて……

「…………っ、ぅぅぅ」

 私はあおくんの身体からだにギュッとしがみつき

「元カノさんとの写真……見ちゃったのぉ」

 声を絞り出しながら決定的な内容を言ったら

「うん、それが原因だよね……本当にごめん」

 あおくんは優しく私を抱き締めて「写真は意図してなかった」と気付かせてくれたんだ。

(わざと隠していたんじゃなかったんだ……)

 あおくんの優しい声と温もりが、私の気持ちを落ち着かせる。

「あのね……私、本当はテーブルを拭くだけにしようとしてたの」
「うん……」

 私はようやく、頭の中を整理しながらあおくんに状況説明する事が出来て

「合鍵もらったの嬉しかったし、昨日私の部屋のもあおくんに渡して……嬉しかった。
 今日があおくんの鍵を使ってお留守番する日だからって、いつも以上にウキウキして、浮かれてて……」
「うん」
「でも、掃除もキチンとしてくれていたから、敢えて私が細かな部分まで掃除したら逆にいけないなって思ったの。なんていうか……そういう、粗探しみたいな行動取りたくなかったし、必要以上に小物を動かして掃除してしまったらあおくんの気持ちを害してしまうかなって思って」
「そうだったんだ……」

 あおくんも私の話に相槌を打ちながら、どうして私がニコニコ顔になれなかったのかを把握してくれているようだ。

「ご飯の準備する時にね、お尻がそこの壁にドンって当たっちゃって……」

 顔をあおくんの胸部分に押しつけたままの状態で腕だけを伸ばし、私はお尻が当たってしまったという壁の方向を指差す。

「ああ」

 そこであおくんは「完全に理解した」という様子で

「はな……お尻、痛かったでしょ。撫でていい?」

 大きな手を私の肩から背中の方に滑らしながら伺いを立てて……

「うん」

 コクンと首を振ったのと同時に、その手が腰の方へと下りていって……

「どの辺? 右? 左?」
「ひだりぃ」
「そっか……痛かったね、なでなでするよ」

 お尻の左側をスリスリと優しく撫でてくれた。

(良かった……あおくんのお部屋での、まだ私の知らなかった部分が、きちんと理解出来て……)

 コルクボードを見た瞬間、私の心が騒ついたのには理由があった。

 私達は付き合って2ヶ月で、お互い知らない部分がまだまだあるんじゃないかって感じていたから。

 合鍵交換をして、お互いの部屋を行き来するようになって初めて知る新たな部分を見知ってしまう可能性はあると多少の予測はしていたんだ。

「私ね……お留守番してる最中にって思ったの。
 お付き合い始めて2か月経って、お互いのお部屋に遊びに行く事もあるけど、まだまだお互いのお部屋の中で知らない部分がいっぱいあると思うから」
「うん……そうだよね。気遣ってくれてありがとう」

 その予測はあくまで「あおくんはエッチな本やDVDを隠してるんじゃないか」程度の内容だったわけで、そのくらいなら受け入れる覚悟はあったんだ。でも実際見たのは元カノのミツキさんとあおくんとの楽しげなツーショット写真だったものだから、必要以上に取り乱してしまった。

「ううん、大事だと思うから。そういうの」
「そういう細かな心遣いが嬉しいんだよ、ありがとう」

 ハグの温もりでなんとなく、「元カノに未練がある」とか「私に内緒で会ってる」とかの意味合いを含んでいない事は察する事が出来ている。

 でもなんでコルクボードの下半分に写真を貼り付けたままなのか、フィギュアで隠すような事をしていたのかの謎がまだ残っていた。

(なんとなく不安にならなくて良いのは理解出来たけど、その点は気になるなぁ)

 優しいハグやお尻なでなでが嬉しい分、やっぱりあおくんの方からキチンとした説明が欲しいと感じた。

 けど、あおくんはしばらく黙ったままでいて…………。

「私と知り合う前に別の女性とお付き合いしていたのは知ってるし、あおくんがそれまで経験してきた思い出は大事にしてほしい。だから、『写真を捨てて』なんて言いたくないし言うつもりないんだよ」

 煮え切らない態度にまたモヤモヤして、私の方から話を切り出す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜

船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】 お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。 表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。 【ストーリー】 見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。 会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。 手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。 親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。 いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる…… 托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。 ◆登場人物 ・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン ・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員 ・ 八幡栞  (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女 ・ 藤沢茂  (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

【R18】彼の精力が凄すぎて、ついていけません!【完結】

茉莉
恋愛
【R18】*続編も投稿しています。 毎日の生活に疲れ果てていたところ、ある日突然異世界に落ちてしまった律。拾ってくれた魔法使いカミルとの、あんなプレイやこんなプレイで、体が持ちません! R18描写が過激なので、ご注意ください。最初に注意書きが書いてあります。

処理中です...