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Chapter:8ハロウィンコスプレイベント
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しおりを挟むそうして迎えたハロウィンイベント当日。
「わぁ~! 凄く似合ってるよ、はなぁ♪」
早朝に『フラワーショップ田上』の前であおくんと待ち合わせたら、店のバックヤードをお借りして着替えた衣装を見せ合っていた。
「そうかな? 可愛すぎてないかな?」
「はなはいつも可愛いんだから、可愛い過ぎていいんだよ♡」
「やだもぅっ♡ あおくんったらぁ」
「ふふ♪」
「あおくんのオオカミも凄く似合ってるよ! かっこいいのと可愛らしいのがちょうど合わさった感じ!」
「そうかなぁ~? はなに言われたら照れちゃう♡」
「ふふふ~♡」
オオカミと赤ずきんの衣装は、昨日あおくんが『After The Rain』への配達のついでに亮輔さんから受け取った村川夫婦の私物なんだとか。
毎年このハロウィンイベントの為に……って大事に使って綺麗にクリーニングしているのだそうだ。
「オオカミさんの毛並み綺麗だね♪ モフモフってしてるよ~」
手入れが行き届いているので、あおくんが着たオオカミさんの毛並みはフワッフワのモッフモフだ。
「うんうん♪ 着心地も良くてね、長時間フード被っても疲れなさそう」
「手の指のところ、肉球部分が外せるんだね! これなら作業しやすいね♪」
「だね♪」
コスプレ衣装の見せ合いをしている今のあおくんはとっても元気そうで自信に満ち溢れている。
(今週、バイト休みの日を狙ってあおくんとイラスト練習した甲斐があったのかなぁ)
あの時ビデオ通話で肩をガックリ落としていた彼の様子は今や、幻だったのかと思うくらいに見違えていて私はホッコリとした気持ちに包まれていた。
(うんっ♪ これから1日頑張れそう♪)
「ちょっとちょっとあおくんっ! イチャついちゃだめだよこんなところでっ!!」
するとバックヤードからお花屋店長の健人さんからお叱りの声が飛んできた。
「けっ……んとさんっ!」
「あっ! そうですよねっ!! イベント始まる前に商店街の皆さんのフェイスペイントをやらなくちゃいけないんですよねっ!!」
私達は顔を見合わせてハッとする。
(いけないっ! あおくんのお部屋くらいの気分でダラダラ話し込んじゃった!)
これは私も反省しなきゃいけないし
「あっ、健人さんに俺やりますっ! フェイスペイントっ!」
あおくんは健人さんの前に立ち、ペンの蓋をキュポンと開けた。
「そう? じゃあお願いしようっかなぁ。娘の美優も店に来てくれたところだから、華子さんは美優のほっぺたにしてくれる?」
「は……はいっ! もちろんです!」
美優ちゃんは健人さんの娘さんで小学三年生。今日はあおくんの代わりにお花配り係を担当するらしい。
「じゃあすぐに出てきてね♪」
健人さんはニッコリと微笑んで店内へと出て行ってくれた。
「ふぅ……」
一息ついているあおくんに私は
「今日は一緒に頑張ろうね! 何回か練習したし、イラストもパターンを絞ったから2人で乗り越えられるよ絶対」
と励まし、鼓舞させた。
「そうだね、2人で一緒に頑張ろう」
「うんっ!」
亮輔さんは絵が上手だからお客様一人一人にイラストの希望を聞いてアドリブで描いていたらしいんだけど、イラスト描き初心者の私達はそんな芸当は無理。
そこで私はあおくんのお家に泊まってイラスト練習に励むだけでなく、数多いお客様を2人で捌く為のルールを作ったんだ。
そのルールは二つ!
一つ目は「描き方やデザインを統一すること」
そしてもう一つは「イラストデザインをあらかじめ5種類に絞り、お客様に描いてもらいたいものを番号で指定してもらうこと」!!
漢字の書き順が定まっていれば誰でも綺麗な字が書けるのと同様に、イラストも使うペンの色や描き込んでいく順番を決めた通りにやればあおくんも上手に描く事が出来たので、その方法を採用する事にしたんだ。
(ちょうど今、書道のカリキュラムを大学で取っているから活用出来たアイデアなんだよね……)
実は「イラスト描き順」のアイデアは大学の教職課程で現在勉強している書道の先生の指導の賜物だったりする。
(中学高校の国語教師の資格……本当に教員になれるか不安なままカリキュラムを取っているけど、意外なところで役に立つんだなぁ)
大学の勉強はこんなところの発想に役立つと知れて嬉しい。
(将来私はどうなるのかまだまだ分からないけど……大学の勉強もこれからしっかり頑張っていこうっと!)
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