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Chapter:6初体験

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 あっという間に夕方。

「楽しかったね」
「うん、楽しかった」
「もう、ヒリヒリしない?」
「うん、私の為にお昼寝時間作ってくれてありがとう」
「どういたしまして♪」

 結局私達は17時までホテルのお部屋の中でのんびりしてしまった。

「えっと……本当にホテルの料金、あのくらいで良かったの?」

 とってもオシャレな内装だったからさぞお高いんじゃないかと心配していたんだけど

「うん、あのカフェでもらった3割引きクーポンは夕方までのフリータイムで使える限定クーポンだったんだ。だからあのくらいで済んだんだよ」

 と、駅に向かいながらあおくんが教えてくれた。

「っていうか、俺が全部払うつもりだったんだけどね」

 あおくんはそう言って眉を下げたんだけど

「そんなわけにいかないよう! 私もあおくんも一人暮らしの学生さんだし、私だってバイトでお金稼いでいるんだもんっ! 割り勘にしないと気が済まないのっ!」
 
 私はギュッとあおくんの腕に抱きつきながら強く言い返す。
 男性だから多く払うとか奢るとか、そういうお付き合いはしたくないなって思ったんだ。

「あっ、はな……声が大きい!」

 あおくんは周りの建物を見回しながらシーって人差し指を口の前に持ってきて制止する。

「あっ……そうだったぁ」

 お昼寝の後で身支度している最中にあおくんから聞いた事を思い出して、私は慌ててもう片方の手で唇を覆い隠した。

(この路地の建物全部がラブホなんだったよね……)

 駅を出てからカフェに向かうまでの行き途中、あおくんはこの路地がラブホ街だという事に気付いて焦っていたらしい

(あの時あおくんが立ち止まったりスマホを取り出そうとしたりしたのは、迷子になって地図を確認しようとした……って事だったんだよね。だけどすぐ、お友達のまさやんさんから教わった道そのものがこのラブホ街だったんだよね)

 海の家でバイトした時の店長竜司りゅうじさんも弟のまさやんさんの事について「バカじゃないんだが阪井くんや長岡さんを見習ってほしいもんだ」とボヤいていた。
 あおくんもフォローしていたけど、まさやんさんは友達を思い遣るあまりに突拍子もない発想に出てしまう事があるらしく、今回のデートプランも未経験の私達に良かれと思って……な考えがあったらしい。

(うーん……確かにビックリなデートプランだったなぁ)

 竜司さんがボヤいてしまったり、あおくんがフォローしなきゃいけなかったりな、まさやんさんのデートプラン。

(でも……)

 結果的にそのビックリデートプランがあったからこそ、あおくんとの仲が深まったと思えたし

「ねーねー、あおくん」
「なぁに? はな」
「会計の時にもらったパンフレット、私にも見せて♪」
「えっ?! はな、アレを見るの? ここで?」
「うん、あのホテル本館のお部屋がどんなのか気になったんだもん」
「そっかぁ……はな、気になったんだ」
「うん♪ 別館もすっごく良いお部屋だったから♪」

 ラブホそのものの印象がググっと上がった。

「はい、パンフレット」
「ありがとう♪ うわぁ~本館はリゾートイメージのお部屋もあるんだねぇ」

 あおくんから手渡されたパンフレットを開いたら、そこにはきらびやかなお部屋の画像がズラリと並んでいて、開放的なスイートルームとやらに注目してしまった。

「スイートルームは人気だろうね」
「だよねぇ~ いつか使えるといいなぁ」

 スイートルームはお高そうだし、なかなか手が出ないかもしれないけど、他のお部屋もカラーがそれぞれ決まっていて入ってみたくなってしまう。

「そうだねーさっきの部屋もすごく良かったし、他の部屋も気になっているのは確かかなぁ」

 あおくんは照れ笑いしながらも嬉しそうだ。

「私と考え一緒だ♡」
「そうだね♡ えへへ♡」
「えへへ~♡」

 外は段々と暗くなってきている。今から電車に乗ったらちょうど良い帰り時間になりそうだ。

「またデートしようね、あおくん♡」
「うん、今度は朝からお出かけして……それからホテルかな」
「やぁん♡ そこも考え一緒だぁ♡」

 暗くなってデートが終わってしまうのは寂しいけど、次のお出かけをあおくんと一緒に考えられるのは楽しいし幸せだ。

「えへへ」
「えへへ」

 私達の初体験は幸せいっぱいで素敵な経験になれたし……今日のラブホは、私達にとってお気に入りのホテルになっちゃいそうな予感がしていた。




 
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