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Chapter3:ビデオ通話

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「そういえば、あおくんの趣味ってなぁに?」
『えっ?』
「私達、日常的なやりとりしかしていなくてお互いの好きなものを伝え合ってないんじゃないかなって思って」
『ああそっかぁ……俺はね、山に登ったりするよ。1人で』
「そうなんだ! 海より山派?」
『どっちも好きなんだけど、山の方が多いかも。黙々と1人で登るとさ、無心になれるから』
「そうなんだぁ~本格的でかっこいいなぁ」
『はなちゃんは? どんな趣味を持ってるの?』
「常日頃楽しんでる趣味はないかも……」
『そっかぁ』
「あ、でもね! 私も実家に居た頃は海よりも山に行く事が多かったよ! 家族でキャンプをよくやっていたから」
『キャンプかぁ~はなちゃんも本格的だね』
「私は親についていくだけだもん、料理くらいしか手伝わないんだよ。あとはタマオと遊んだり」
『たまお?』
「実家で飼っているワンコの名前だよ! 柴犬のオスで、4歳かな」
『楽しそうなご実家だね』
「うんっ♪ タマオはやんちゃで元気があってね、いい子なの」

 その後も楽しく会話していると

『ふふっ♪』

 あおくんが楽しそうな笑い声をあげた。

「どうしたの?」

 私がすがさず訊くと

『だって……幸せだから』

 あおくんはとびきりの笑顔を向けて返事をしてくれて

「うん……私も今、幸せ♡」

 胸に秘めていた気持ちを少しだけあおくんに披露した。

『本当に? はなちゃん、今幸せ?』
「うん♪ あおくんとお話すると楽しいし……スマホ越しっていうのに忘れちゃうくらい、今あおくんと近くに居る気がするから」

 私の言葉にあおくんは目を丸くする。

 そして……

『そうだね、はなちゃんの言う通りだ』

 あおくんはまた笑って嬉しそうにそう言い

『ビデオ通話出来て本当に良かった……はなちゃん、誘ってくれてありがとう』

 感謝されてしまって、めちゃくちゃ照れた。

「やぁん」
『ほっぺ赤くなったね』
「うん……恥ずかしい」
『可愛いと思うよ、嬉しい』
「えっ?」

 照れ臭くなり俯いたので思わず聞き逃してしまうかと思ったけど、確かに私の耳にはあおくんからの「可愛いと思うよ」が届いたのでパッと顔をあげる。

「今、あおくん……私の事可愛いって言った?」
『えっ?! あ、そ……それは…………』

 確認のつもりだったんだけど、語気を強めたせいで今度はあおくんの頬が赤くなりしなしなと首を下げていく。

「…………」

(指摘されたって思われたかな? 指摘のつもりじゃなくて、もう一回聞きたかっただけなんだけど)

「…………」
『…………』

 さっきまで楽しくて良い雰囲気だったのに、私の所為で空気が悪くなってしまった。

「あ……ごめ、あおく」

 お互いに沈黙して変な空気が流れたので、おずおずと指摘疑惑を謝ろうとしたら

『俺とはなちゃんは仲良しさんなんだから……やっぱり、正直に言うよ』

 あおくんはこちらを見つめ、私の「ごめん」に被せるように話し始めたんだ。

「えっ?」
『俺ね、はなちゃんのこと……可愛いって思ってるよ』
「!」

 さっき聞き逃しそうになっていた、あおくんから私への「可愛い」。
 それが今回は真っ直ぐに私の心に届き、嬉しいとビックリが入り混じる。

『最初に出会った時は三つ編みで、ランチした時はオシャレな巻き髪にしていて……それで、今はナチュラルに髪を下ろしてるでしょ?』
「え……あ、うん」

 確かにこの3回、あおくんにはそれぞれ違ったヘアスタイルを見せていた。

 酔っ払い2人から助けてくれた時は、普段からしている引っ詰め三つ編み。
 ランチを奢った時はデートを意識した巻き髪。
 そして今は、お風呂上がりという事もあってセットも何もしていない無造作ロング。

(ビデオ通話だからって、服装はパジャマを避けて私服にしたけど髪までは気を遣わなかったんだよね……失敗したかなぁ)

 ふわふわと広がった自分の髪を指で摘み、ちょっとだけ後悔する。

(ちゃんと巻いておくべきだったかなぁ)

『あ! あのね、指摘してるわけじゃないんだ。単純に褒めたかったんだよ』

 シュンとしていたら、あおくんは私の様子に慌てていて

「へ?」

 またあおくんの方を向き直ると、彼は耳まで赤くしていた。

『どれもね、可愛いって思ってるよ。はなちゃんは意識して3パターンのヘアスタイルを俺に見せたってわけじゃないのかもしれないけど、俺的には3パターンも見せてくれたのは嬉しいし、どれが一番とかそういう比較無しで可愛いって思った』
「…………」
『俺ね、癖っ毛なんだ。天然パーマっていうのかなぁ……ちょとだけ髪がうねるの』
「えっ? あおくんって、パーマかけてたわけじゃなかったの?」

 確かにあおくんの髪はオシャレパーマを軽く当てたかのようにウェーブがかっていて、それがまたあおくんに似合っていて素敵だと思っていた。

 それなのに…………

『違うよ、生まれつきね。こうなんだ』

 照れ臭そうに手で自分の髪をワシャッと掴みながらあおくんは説明する。

「じゃあ、私と………………だね」

 私も天然パーマだから生まれつき髪がうねっていて広がりやすい。

『ごめんねこんな言い方して。最初にはなちゃん見た時に……もしかしてそうかなって思って』

 だから私は幼い頃からロングヘアをキープして髪をギュギュッと三つ編みに結っていたんだ。

「気付いていたんだね、あおくん」
『はなちゃんを責める意味は全くないよ。妹がね、はなちゃんと似た髪質だから気付きやすかったのかもしれない』
「…………そっかぁ」

(あおくんの妹さんも天然パーマなのかぁ)

『妹はもう少し癖が強めでさ、髪型にいつも苦労してたんだよ。だからはなちゃんの髪型に妹の経験を重ねちゃった……』
「そっかぁ」
『だから、はなちゃんが髪質で苦労してるのはなんとなくだけど分かるよ。でも、それでも俺と会う為にアイロンで巻いて努力してくれたのは可愛いって思うし、今も可愛いって思う。
 っていうか、はなちゃんは全部可愛いから……だから…………』

 あおくんの顔も耳も、首までもが赤くなっていくのが分かる。

「…………」

 いつのまにか私も頬が熱くなっていた。

『全部見せてくれてありがとうって思うし、全部同じくらい可愛いって思うし……また、ビデオ通話でもなんでもいいから、こうやってはなちゃんとお話するチャンスがあったら良いなって、俺は思っているよ』



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