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上原さん

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 店内のイラストも飾りもりょーくんが1人で手掛けているというのにもビックリする。
 可愛いもの盛り沢山なのにやり過ぎていなくて、バランスがちょうどいいのもりょーくんのセンスの良さを感じた。

「そうなんですよ♪平日の日中は親子連れのお客様が良く来店されます。散歩がてらに寄りやすいんでしょうね」
「凄く分かります! 彼って凄いんですね!」
「昔から絵を描くのが得意ですからね、亮輔は」

 そしてりょーくんを私が褒めると、店長さんは目を細めて喜んでくれ、彼の自慢ポイントもちょこっと入れる。

(授業ノートをあんなに綺麗にまとめているからそれなりにPOP作りも上手なんだろうとは予想してたんだけど想像以上だぁ。りょーくんの意外な特技を知れて嬉しいな♪)

 私の頬も緩んでニコニコ顔になると、店長は微笑み顔をキープしたまま私の耳へとスッと寄せていって

「亮輔のことで知りたいことがあったらいつでもメッセージ入れてくれるかい?」

 と、囁いた。

「え……?」

 直後、驚く私の手から買い物カゴを奪ってりょーくんが作業しているレジカウンターの方へ持っていく。

「ほい、仕事だよ亮輔」
「ああ……金は俺が払います」
「当たり前だよっ! 買ったものの半分以上は亮輔の胃の中に入るんだから」
「ん」

 そして私を残して2人で勝手に会計を済ませて袋詰めまでしてくれた。

「かっ……笠原くんはあと1時間くらい仕事だよねっ?」

 私は慌ててレジカウンターまで駆け寄り、りょーくんに話しかける。

「そうだな。この後また大雨になるらしいから、村川さんは早く帰った方が良い……」
「わっ!!」

 すると隣にいた店長さんが、りょーくんの声に被せるような大きめの声を出してきた。

「店長いきなり大声……」
「ほらほら外を見てご覧よ! ヤバイくらい降ってるじゃないか!!
 君、真夜中でしかも大雨だというのにあのアパートまで歩いて帰るのかい?! 亮輔もよくあの雨の中帰らそうとするね!! 鬼畜の所業だよ!」

 大声にビックリしたりょーくんをよそに店長はオーバーな身振り手振りをしながらりょーくんをビシッと叱る。
 
「き、鬼畜の所業って……」

 しかも叱り方が独特で私もビックリだ。

 ビックリはしたんだけど、改めて外を確認してみたら夕方の時と同じくらいの土砂降り。
 確かにこれで2~30分歩くのはしんどいだろうし、せっかくりょーくんに買ってもらった夏服が雨でびしょ濡れになってしまうと私も心配する。

「どうします? 亮輔が終わる時間までバックヤードで休むとかオススメですけど♪」
「「え!!!?」」

 店長さんの提案に、りょーくんと私同時に声が出てしまった。

「あははっ! ユニゾンした♪ 2人共仲良いんだねぇ♪」
「笑ってる場合じゃねーよ!! 彼女は完全な部外者なのにそんなことしていいわけねーだろ!」

 明るく笑う店長さんに対してりょーくんは少し乱暴な口調で言い返していた。

(乱暴な口調もそうだけど、歳上男性にタメ口するなんて……まぁ、従兄弟いとこ同士からそれが普通なのかな?)

 いつもは私に優しめの言葉遣いだから、「ねーよ!!」とか聞くとちょっとビビる。

「だって可哀想じゃないか。深夜1時過ぎ、しかも土砂降りで30分近く歩かせるなんて。それとも俺がこの子を車に乗せて送ってあげてもいいんだけど?」

 店長さんが余裕の返しをするとりょーくんは焦った様子で

「それだけは嫌だ!!」
「なんで? 俺の車だよ、あれは」
「そうだけど! でもなんか嫌なんだよ! 俺以外の男の運転で助手席に彼女が座るとか!」
「じゃあ後部座席ならいい?」
「それも嫌だし!! 拒否!! 無理!!」

 と車で店長さんが私を送る提案をりょーくんは全力で拒否していた。

「それじゃあ亮輔が終わるまで待ってもらうしかないよね♪」

 りょーくんが全力拒否という失礼な返事をしているのに、店長さんはニヤリと不敵な笑みを浮かべている。

「うっ……」
「そもそも店の責任者は俺だよ。俺が許可すればバックヤードで休ませて良いと思わないかい?」
「それは……そうだけど」

 私を置いてきぼりにした状態で2人だけで話が進んでいってる。
 とはいえバックヤードで休ませてくれるのは確かに有り難いし、こんな天気で帰るなら私もりょーくんと一緒がいい。

「じゃ、そゆことでこの袋はバックヤードへ持って行くよ~」

 店長さんは大きな袋をヒョイと担いで私に手招きをした。

「えっ」
「いいからいいから、こちらへどうぞ♪」
「はい……」
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