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上原さん
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「……っ」
店長さんから「彼女か?」と訊かれたので私が慌てて頷くと、りょーくんは何故か頬と耳を真っ赤にしていた。
(りょーくんが恥ずかしがっているという事は、もしかして付き合ってるのを店長さんにバラしちゃまずかったのかな?)
でも、りょーくんとは対称的に店長さんは喜んでいる様子で私をニコニコ顔で見つめてくれていて
「そっかぁ~♪ そうなんだね~~♪ 亮輔もだけど、俺もお世話になっております」
と、これまたニコニコ顔で私に会釈する。
「え? お世話??」
初対面の店長さんから「お世話」だなんて意味の分からない言葉を言われたので、頭にクエスチョンマークがいっぱい浮かばせていると
「ほら、前に言っただろ? 俺らの住んでるアパートは店長が管理してるんだよ」
と、赤い顔のりょーくんからそう教えてもらった。
「あぁ! そうでしたよね!!」
私はそこでハッとし、大きな声をあげる。
今住んでいるアパートを契約してくれたのはお父さんで、管理人さんの顔は私も夕紀さんも見た事がなかった。そもそも家賃は振り込みで大家さんに当たる人と顔を合わさないのは今の時代なら当然かもしれない。
「亮輔っ!彼女さんに対して言葉遣い悪いぞ! もっと優しい言葉遣いを使いなさい!」
店長さんはりょーくんをキッと睨みつけ
「っていうか亮輔の隣にこんな可愛い子が住んでるんだったらいくらでも家賃交渉してあげるのに♪」
直後に私の方へとハンサムスマイルを向けて微笑んだ。
「いえいえそんな……」
アパートを管理されてる方がこんな長身のハンサムさんだなんてりょーくんから事前知識貰わなければ想像もつかないし、今もこんな風に美しい微笑みを私に向けてくるなんて夢なんじゃないかとさえ思うし
(イケメンという言葉よりもハンサムの言葉が似合う店長さんだなぁ)
しかも初対面で家賃交渉とか言われても恐縮して頭が追いつかない。
「こいつの家賃を半額にしてるの俺の権限だなんで。他の物件は母と姉貴がやってるんですが、あのアパートとマンション一軒だけは俺が受け持ってるんですよ」
店長さんはニコニコ顔でりょーくんを指差して私にそう言ってくれたんだけど
「えっと……今は学生で生活はカツカツなんですけど、卒業してからもしばらくあのアパートに住み続けるつもりなんです。ですから社会人になったら余裕出てくるので何とかなるといいますか」
このコンビニ店長さんがりょーくんの従兄さんで、りょーくんは家賃を半額にしてもらっている話は知っている。けれども赤の他人である私までお世話になるわけにいかないので、そこは両手を横に振って家賃値引きの件を断った。
「でも学生だったらお金もっと自由に使いたいんじゃないの?まして長期で住んでもらうこと考えてらっしゃるのなら是非値引きさせて下さい」
店長さんはニコニコ顔をキープしたまま一歩も引かない。
「でも」
「今度お時間が合えばその話を詰めましょう。その際、貴女の契約書を用意しておきますから」
「ええ……」
(そんな事、本当にしてもらってもいいのかな?)
りょーくんに助け舟を出してもらおうと目配せしようとしたんだけど、そのタイミングで別のお客さんが入店してきてしまったからりょーくんはサッとレジについてしまった。
(ああっ……りょーくんとアイコンタクトが取れない……)
「書類の準備が出来次第連絡します。連絡先を教えて下さいますか?」
「えっ?……あぁ、はい」
りょーくんがそばに居ないのなら自分で判断するしかない。
状況的にも店長さんからの強い圧に逃れられず、私はスマホを取り出す。
「じゃあ連絡先交換しましょ♪」
「はいぃ」
(うわぁ……言われるがまま店長さんとスマホで繋がっちゃった。りょーくんに怒られないかなぁ?)
「よし、後は帰って書類の準備か! 忙しくなるなこれは♪」
「忙しくなる」と言っているのに店長さんはウキウキ顔だ。
メッセージアプリの友だち欄を見ると、「上原俊哉」の名前が新しく追加されていた。
「じゃあ代わりにここでいろいろ買い物します! 卵とかお豆腐とか足りないものあるんでっ!」
なんだか恥ずかしくなってきた私は、お店のカゴを取るなり買い物を始めた。
りょーくんは接客を終え今はレジカウンターで補充の作業をしていて、肝心の店長さんはというと私の背後へピッタリとつきながら商品の位置を手直ししている。
「えっと、パンと卵と……あっ、冷凍食品も買わなきゃ!」
コンビニはお菓子くらいしか今まで注目した事なかったんだけど、こうして店内をゆっくりじっくり見回してみると種類豊富なのがよく分かる。
それにここのお店は内装が凝っている。イラストや飾りがとにかく可愛くて素敵だなと感じた。
「店のPOPやは亮輔の手作りなんですよ。天井から吊っている飾りは本部から支給されるものが大半なんですが、一部亮輔も作っていて配置もやらせてるんです」
背後ピッタリにくっつかれると戸惑うけれど、おかげでりょーくんから以前聞かされたPOPへと目を向ける事が出来た。
「うわぁ……可愛い」
温かみがあって万人受けするようなデザインのイラストやペーパークラフトが店内をオシャレに彩っている。
「POPの話は聞いていたんですが、ここまでとは思いませんでした。こんなに可愛いお店でしたらお子様にも喜ばれるんじゃないですか?」
店長さんから「彼女か?」と訊かれたので私が慌てて頷くと、りょーくんは何故か頬と耳を真っ赤にしていた。
(りょーくんが恥ずかしがっているという事は、もしかして付き合ってるのを店長さんにバラしちゃまずかったのかな?)
でも、りょーくんとは対称的に店長さんは喜んでいる様子で私をニコニコ顔で見つめてくれていて
「そっかぁ~♪ そうなんだね~~♪ 亮輔もだけど、俺もお世話になっております」
と、これまたニコニコ顔で私に会釈する。
「え? お世話??」
初対面の店長さんから「お世話」だなんて意味の分からない言葉を言われたので、頭にクエスチョンマークがいっぱい浮かばせていると
「ほら、前に言っただろ? 俺らの住んでるアパートは店長が管理してるんだよ」
と、赤い顔のりょーくんからそう教えてもらった。
「あぁ! そうでしたよね!!」
私はそこでハッとし、大きな声をあげる。
今住んでいるアパートを契約してくれたのはお父さんで、管理人さんの顔は私も夕紀さんも見た事がなかった。そもそも家賃は振り込みで大家さんに当たる人と顔を合わさないのは今の時代なら当然かもしれない。
「亮輔っ!彼女さんに対して言葉遣い悪いぞ! もっと優しい言葉遣いを使いなさい!」
店長さんはりょーくんをキッと睨みつけ
「っていうか亮輔の隣にこんな可愛い子が住んでるんだったらいくらでも家賃交渉してあげるのに♪」
直後に私の方へとハンサムスマイルを向けて微笑んだ。
「いえいえそんな……」
アパートを管理されてる方がこんな長身のハンサムさんだなんてりょーくんから事前知識貰わなければ想像もつかないし、今もこんな風に美しい微笑みを私に向けてくるなんて夢なんじゃないかとさえ思うし
(イケメンという言葉よりもハンサムの言葉が似合う店長さんだなぁ)
しかも初対面で家賃交渉とか言われても恐縮して頭が追いつかない。
「こいつの家賃を半額にしてるの俺の権限だなんで。他の物件は母と姉貴がやってるんですが、あのアパートとマンション一軒だけは俺が受け持ってるんですよ」
店長さんはニコニコ顔でりょーくんを指差して私にそう言ってくれたんだけど
「えっと……今は学生で生活はカツカツなんですけど、卒業してからもしばらくあのアパートに住み続けるつもりなんです。ですから社会人になったら余裕出てくるので何とかなるといいますか」
このコンビニ店長さんがりょーくんの従兄さんで、りょーくんは家賃を半額にしてもらっている話は知っている。けれども赤の他人である私までお世話になるわけにいかないので、そこは両手を横に振って家賃値引きの件を断った。
「でも学生だったらお金もっと自由に使いたいんじゃないの?まして長期で住んでもらうこと考えてらっしゃるのなら是非値引きさせて下さい」
店長さんはニコニコ顔をキープしたまま一歩も引かない。
「でも」
「今度お時間が合えばその話を詰めましょう。その際、貴女の契約書を用意しておきますから」
「ええ……」
(そんな事、本当にしてもらってもいいのかな?)
りょーくんに助け舟を出してもらおうと目配せしようとしたんだけど、そのタイミングで別のお客さんが入店してきてしまったからりょーくんはサッとレジについてしまった。
(ああっ……りょーくんとアイコンタクトが取れない……)
「書類の準備が出来次第連絡します。連絡先を教えて下さいますか?」
「えっ?……あぁ、はい」
りょーくんがそばに居ないのなら自分で判断するしかない。
状況的にも店長さんからの強い圧に逃れられず、私はスマホを取り出す。
「じゃあ連絡先交換しましょ♪」
「はいぃ」
(うわぁ……言われるがまま店長さんとスマホで繋がっちゃった。りょーくんに怒られないかなぁ?)
「よし、後は帰って書類の準備か! 忙しくなるなこれは♪」
「忙しくなる」と言っているのに店長さんはウキウキ顔だ。
メッセージアプリの友だち欄を見ると、「上原俊哉」の名前が新しく追加されていた。
「じゃあ代わりにここでいろいろ買い物します! 卵とかお豆腐とか足りないものあるんでっ!」
なんだか恥ずかしくなってきた私は、お店のカゴを取るなり買い物を始めた。
りょーくんは接客を終え今はレジカウンターで補充の作業をしていて、肝心の店長さんはというと私の背後へピッタリとつきながら商品の位置を手直ししている。
「えっと、パンと卵と……あっ、冷凍食品も買わなきゃ!」
コンビニはお菓子くらいしか今まで注目した事なかったんだけど、こうして店内をゆっくりじっくり見回してみると種類豊富なのがよく分かる。
それにここのお店は内装が凝っている。イラストや飾りがとにかく可愛くて素敵だなと感じた。
「店のPOPやは亮輔の手作りなんですよ。天井から吊っている飾りは本部から支給されるものが大半なんですが、一部亮輔も作っていて配置もやらせてるんです」
背後ピッタリにくっつかれると戸惑うけれど、おかげでりょーくんから以前聞かされたPOPへと目を向ける事が出来た。
「うわぁ……可愛い」
温かみがあって万人受けするようなデザインのイラストやペーパークラフトが店内をオシャレに彩っている。
「POPの話は聞いていたんですが、ここまでとは思いませんでした。こんなに可愛いお店でしたらお子様にも喜ばれるんじゃないですか?」
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