66 / 140
上原さん
2
しおりを挟む午前中の間に、りょーくんも私も紙袋が両手いっぱいになってしまった。
「買ってもらい過ぎちゃったかなぁ?」
ファストファッションブランドで購入したとはいえ、りょーくんにビックリする程のお金を使わせてしまっている。
「もっと買っちゃってもいいくらいだよ。初めて来たけどアウトレットっていいねあーちゃん♪」
「私もまだ何回かしか経験無いし、凄く新鮮♪」
「そっかー女の子だから流石にアウトレット初体験って事は無いか」
「うん……と言っても一緒に行く相手は両親とだからね! 彼氏とは初めてだから♡」
「ふふっ……うん♡」
「だから初体験っていっても良いのかも、なんてね♡」
今日が梅雨の中休みで良かった。
暑いけど、爽やかイケメンのりょーくんと微笑み合うのが凄く楽しいし癒される。
昨日のお勉強や手煎り焙煎も楽しかったし良かったけど、外デートで爽やかでほんわかとした時間を過ごすのも楽しいなって思った。
「昼メシの前に紙袋を車の中に積んでいい?結構歩く羽目になるからコインロッカー使う手もあるんだけど、今日は日曜日だから既に埋まってる可能性が」
「歩くの全然平気だよっ!! 早く両手を軽くしちゃおう!!」
「あーちゃんがいっぱい歩いてくれる子で良かった♪ 凄く助かる♪」
そして……あまり気にしちゃいけないんだろうけど……
(ところどころ「誰か」と比較されているのを感じるのは気のせいかなぁ?)
「あーちゃん何食べたい?」
一旦駐車場に戻って大量の紙袋を積み終えた私達は、ランチを何にするかを話し合いながらまた一緒に歩き始めた。
「そうだなぁ~昨日の夕食も外食したし、今日のランチは普段食べないようなものがいいかも。りょーくんは何か希望ある?」
に希望って言われても難しいなぁ。所詮は空腹を満たす為だけのものだし、外食って」
「えっ?」
「食に拘りないんだよ。メシは所詮メシだし」
「メシ……」
そしてもう一点、りょーくんの今の「メシ」も気になってしまった。
(多分、今までもりょーくんは「メシ」って言ってたような気もするんだけど、今日は特に投げやりなイメージがする……)
「あっ……いやっ!! 普段のあーちゃんの夕食が『空腹を満たす為だけ』と思ってるわけじゃないんだ。そもそも付き合ってる彼女の手料理食べれるとか、俺初めてだし、めちゃくちゃ嬉しいし毎日感謝してるしっ!」
そして急にりょーくんが慌ててフォローしたのも気になる。
「……」
「コンビニ弁当とか外食とかが、そう思っちゃうだけだから」
「……」
(あー、あんまり気にしないであーちゃん……あっ! あの店入ってみようか!! ハワイアン料理かな? なんかちょっと変わった感じの店だよ」
「そうだね、確かに気になるかも」
投げやりな「メシ」の違和感を拭えないままではあるんだけど、りょーくんのチョイスしたお店に私も同調し一緒に手を繋いで入店する。
(従兄さんも謎めいているけど、やっぱりりょーくんも謎めいているなぁ……)
ハワイアンテイストあふれるお店でランチを食べた後も、お店を色々回っては私の靴を買ったり欲しいキッチン用品を買ってくれたり……あとはりょーくんの服を幾つか物色したり。
「いっぱい買った~♪ あーちゃんみたいな可愛い彼女の為にお金使うの気持ち良い~!!」
帰りの車の中でりょーくんはそんな事を私に言っていた。
「お金いっぱい使わせてごめんねりょーくん」
「恐縮しなくていいんだよあーちゃん! 俺、こういう事するの初めてだし、あーちゃんにしてあげたいって思ってた事だから」
「……ほんと?」
「そうだよ! 実は水族館デートするのも俺初めてだったし、ガッツリ買い物デートするのも初めて。あーちゃんとお付き合い始めてからずっと充実してるんだよ。俺」
「ソフレのお相手とそういう事が出来ないのはイメージ出来るんだけど、元カノの絵梨さんともしてなかったのかぁ……こういうデート)
りょーくんから以前聞かさた元カノ絵梨さんの話は主に「お酒とタバコの力を借りて体の関係を持った」という内容で、今日のデートみたいな爽やかな話ではなかった。
私が爽やかなデートが初っていうのはいいとしても、こんなに素敵でイケメンなりょーくんまでもが初っていうのは違和感ありまくりだ。
「そっかぁ~私も初めてだから、初めて同士だったんだね」
「うん、夏休みに入ったら平日はガッツリバイト入れちゃうけど土日はこうしてデートしようねあーちゃん」
「うん! 私もバイトしっかり頑張りたい! それで休みの日はりょーくんといっぱいデートしたい!!」
「嬉しい♡」
「私も♡」
夕陽が差し込む車内の中、オレンジ色に染まるりょーくんが明るく素敵に微笑んでいて、私も微笑み返す。
「映画観るのも良いよね。映画デートもした事ないから、あーちゃんとのんびり映画観たい」
「……そうだね」
微笑み返すんだけど、その度にクエスチョンマークが脳内に一つずつ増えていった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
副社長と出張旅行~好きな人にマーキングされた日~【R18】
日下奈緒
恋愛
福住里佳子は、大手企業の副社長の秘書をしている。
いつも紳士の副社長・新田疾風(ハヤテ)の元、好きな気持ちを育てる里佳子だが。
ある日、出張旅行の同行を求められ、ドキドキ。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
子どもを授かったので、幼馴染から逃げ出すことにしました
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※ムーンライト様にて、日間総合1位、週間総合1位、月間総合2位をいただいた完結作品になります。
※現在、ムーンライト様では後日談先行投稿、アルファポリス様では各章終了後のsideウィリアム★を先行投稿。
※最終第37話は、ムーンライト版の最終話とウィリアムとイザベラの選んだ将来が異なります。
伯爵家の嫡男ウィリアムに拾われ、屋敷で使用人として働くイザベラ。互いに惹かれ合う二人だが、ウィリアムに侯爵令嬢アイリーンとの縁談話が上がる。
すれ違ったウィリアムとイザベラ。彼は彼女を無理に手籠めにしてしまう。たった一夜の過ちだったが、ウィリアムの子を妊娠してしまったイザベラ。ちょうどその頃、ウィリアムとアイリーン嬢の婚約が成立してしまう。
我が子を産み育てる決意を固めたイザベラは、ウィリアムには妊娠したことを告げずに伯爵家を出ることにして――。
※R18に※
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
イケメン幼馴染に処女喪失お願いしたら実は私にベタ惚れでした
sae
恋愛
彼氏もいたことがない奥手で自信のない未だ処女の環奈(かんな)と、隣に住むヤリチンモテ男子の南朋(なお)の大学生幼馴染が長い間すれ違ってようやくイチャイチャ仲良しこよしになれた話。
※会話文、脳内会話多め
※R-18描写、直接的表現有りなので苦手な方はスルーしてください
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる