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時をとめる7秒
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しおりを挟む「……」
ジュンは話を続ける。
「何とかして所長に遠野さんを引き留めてもらった。
第一の他のメンバーで飲みに誘っただろ?それで……その飲みが終わった頃にようやく俺が合流出来て、それで2人でバーに行った。
今までずっと断ってた遠野さんが『飲み直そう』って言った俺の顔を見つめながら『うん』って頷いて……それを目の当たりにしたらさぁ『ああこれで遠野さんとの関係は終わりになるんだ』って悟ったんだ。
初めて俺の誘いを受け入れてくれたのに、すっごくすっごく悲しかった」
「後悔をめちゃくちゃした……あのキスも、申し訳ないって思った。
ユウちゃんと再会して、会社の辞め方とかを知れて本当に良かったよ。悪い事をした自覚はあるんだけどマジであのキスの所為で遠野夕紀さんが辞めたんだとばかり思っていたから」
「あの時の遠野さんを、もっと思い遣るべきだった。
キスをしなかったら……『仲良くなれてる』なんてガキみたいな妄想してなかったら、もっと違った形で遠野さんの門出を祝えたはずなのに」
「……」
「あの時は本当にごめん。これを謝りたくて今まで食事に誘って……その意味で今この夜景をユウちゃんに見せてるつもりじゃないんだけど、あの時のガキみたいな俺を謝らせて」
「……」
「ごめんなさい」
また7秒ほど、世界が止まった気がした。
いや……止まったのは、自分の心臓かもしれなかった。
(また、謝られちゃった……)
再び動き出した鼓動が10日前の記憶を呼び戻して、テレビドラマの第2話のエンディングテロップが脳内再生される。
そのエンディングテロップは、最近最もガッカリした瞬間で
そのドラマの視聴を諦めたきっかけでもあった。
(でも……)
私は息を吸い込んで
「謝らないで。嫌じゃ、なかったから」
と、相槌ばかり打っていたズルい自分を手放す。
「えっ?」
秋の夜風で潤いを奪われた薔薇色の唇を、しっかりと視界に入れて……しっかりと自分の視力で、焦点で定めて
彼の熱い手を掴んで、止めていた心臓の7秒分を彼の口内に押し込める。
「私も本当は、大好きだったのあなたの事」
「 」
「大好き」だと、押し込め続けた自らの想いを口にした直後
「ジュン?」
今度は彼の心臓が止まってしまったかのような印象を受けた。
「なんで……」
呼吸を再び始めても、ジュンは私が何を言ったのか理解していない様子で
「ジュンはずっとずーっと前から私に『大好き』って気持ちを伝えてくれていたのに、私は素直になれなかった。
会社に居た頃は妹が居たし、珈琲店を開く夢もあって恋愛なんて邪魔だと思ってたから。
……でも、そんなの言い訳にしかなってなくて。本当はずっとずーっと前からジュンに惹かれていたのに『自分は悪魔の子なんだから』って……『恋をしたら家族みんなに迷惑がかかるから』って」
「……」
「それすらも言い訳なんだけど、怖かったの。
私は父という、身近に『被害者』が居た。父はそれでも私を愛してくれていたけど私は父と血が繋がっていないから。
育ての親からどんなに深い愛情を受けていても、生みの親が悪魔みたいな最低人間だからもしこのままジュンの優しい手を取って甘えてしまったら今度はジュンが被害者になってしまうって思ったの」
誰にも打ち明けていない私の「気持ち」をジュンにさらけ出し、説明をした。
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