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13年目の「好き」
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しおりを挟む目覚め前の夢はいつもと少し違っていた。
何故か、あの会社の事務員の出立ちになっている地味な私が……黄緑色の雨空の中に立っていて
青磁色の父のコーヒーカップとソーサーを手にしていた。
雨なのに、私は濡れておらず寒がってもいなかった。
なんだろう……どことなく、幸せであたたかそうなのだ。
なんでだろう?と不思議に感じ、青磁色のコーヒーカップをよく観察し凝視してみるとそこには温かなコーヒーが注がれていて
地味な私は口角をピクリとも動かしていないのに……どことなく、嬉しそうでいた。
「何?…………今の」
いつもと様子が違いすぎていて、私はガバッと飛び起きる。
「夢? よね?」
カーテンがかかった窓に視線を向けたけど、まだ夜も明けていないような雰囲気を匂わせていた。
「っ……」
胸の鼓動はドクドクと速まり、ザワザワと居心地が良くない。
「あぁ……今日は23日……だからか」
この胸のザワつきはきっと皐月の月命日前だからだと、無理矢理呑み込む。
「あっ、グアテマラアンティグア……明日の分を焙煎してない」
私はハッとして、いつもよりもかなり早い時間にベッドから降り急いで出勤する支度を始めたのだった。
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