3 / 5
3、エノキの語る801穴
しおりを挟む前回のあらすじ
ガッチムーチカントリーの住民は全員ガチムチでうほっ。としてました。
☆☆☆☆☆
ムチオさんに連れられ、村長の家までやってきた。
どうやらこの村では俺のようなモヤシは珍しいようで(住民全員ガチムチだもんな……)、ここに来るまでも情熱的な熱視線を何度も感じたのだった。
一旦はムチオさんから逃げようと思った俺だけど、この村でひとりになるのは非常にデンジャーだと思い知らされた。
幸いムチオさんは力ずくで俺をうほっ。とするつもりはないみたいだし、どんな危険が潜んでいるか分からない以上、ムチオさんと一緒にいるのが一番安全なはずだ。
「しっかし……大きい家ですね」
「村長は村で随一のガチムチだからね。家も大きくなるのだよ」
いやいや、
身体の大きさ=家の大きさ
ってどんな理屈だよ。
「ここにいても仕方がない。行こうかモヤシくん」
ムチオさんがスタスタ歩いていく。村長宅の家のドアは開いていた。
というか、この村はどの家もドアが少なからず開いていた。ムチオさんに理由を聞いたら……「いつでもパートナーが入ってきてハッテンできるようにさ」と、頭が痛くなるような答えが返ってきたのだ。
この村長の家も、パートナーウェルカムってことだよなあ……。俺は無事に帰れるんだろうか……。
「なにしてるんだい?」
「あ、すみません。今行きま……って、なにやってるんですかアンタ!?」
いつの間に脱いだのか。
ムチオさんがすっぽんぽんになっていたのだ。
紳士の嗜み(らしい)靴下までも脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿で仁王立ちしている。
先程までブーメランで隠されていた場所には立派なゾウさん……いや、マンモスが威風堂々パオーンしている。
マンモスの鼻が下を向いていたのは救いだ。もし鼻を振り上げていたら、脇目も振らずに一心不乱に駆け出していた自信がある。
「家の中では全裸が正装だと教えたじゃないか。さあ、モヤシくんも脱ぎたまえ」
ああ……そうだった。確かにそんなこと言ってた……。忘れてた……というか、忘れたかった記憶を掘り起こされた。
「どうしても嫌なら、私が手取り足取り優しく脱がしてあげようか……?」
「大丈夫です!」
少しムチオさんから距離を取り、背を向けトランクスを下げた。
ムチオさんに任せたらドサクサまぎれにうほっ。とされる危険がある。自分でやったほうがまだマシだ。
大事な部分を手で隠してムチオさんに向き直ると、彼は少し残念そうな顔でこちらを見ていた。
「ふう……。モヤシくんはシャイボーイなんだね。でも……それはそれでまた……うほっ」
「さあ行きましょう! 今すぐ行きましょう!」
ムチオさんの声を聞こえなかったことにして、俺たちは村長の家に入っていったのであった。
…………
……
家の人(使用人らしい)に案内され、大きな部屋で正座をしながら村長を待つことになった。
驚いたことに、この部屋は畳の部屋だった。村の様子から西洋風な文化だと思っていただけに、この畳は本当に意外だった。畳の上には座布団まで用意され、そこに正座をして待っている。
あぐらで座ったほうが楽なんだけど、隣のムチオさんも正座だし、なにより、あぐらだと局部へのガードが薄い気がして、正座を選択したのだ。
そこで待つこと数分。不意に引き戸が開き、全裸の巨漢が姿を現した。
束ねた長い髪に、口元を覆う立派なヒゲ。
その容貌は、まるで戦国武将かって思うほどに、威厳に満ち溢れているようだった。
ただ一点。
本当に一点だけ。
身体の中心部に生えているキノコだけは、マツタケでもエリンギでもなく、エノキだった。そこだけは威厳も何も無い。
しかし、屈強な肉体とのアンバランスが可愛らしいというか、なんとなく親しみが持てるというか……いや、ごめん。前言撤回。この毛むくじゃらのダイナマイトワガママボディで、可愛らしさもクソもない。
「お初にお目にかかる。私はガチ・ムチノリ、この村の村長だ。キミが異世界転生してきたという人間か?」
「はい。細井燃矢史です。 あなたが元の世界に帰る方法を知っていると聞いてきたんですが……」
ムチノリさんは、ムチオさんをチラリと見て、俺に視線を戻す。
「……知っているには知っているが……とても険しい道のりだ」
「どんなに険しくても構いません。どうか教えてください!」
このままこの世界にいたら、俺の菊門の防壁が突破されるのは時間の問題だろう。門が破られ凶棒の侵入を許す前に、なんとしてでも帰らなければならない。
「分かった。……キミは、801穴というものを知っているか?」
「やお……? すみません。聞き覚えがないです」
「……すでに若者への伝承は途絶えてしまっていたか……。801穴とは、キミのいた世界では、男の珍宝と菊の門との中間にあるとされる、伝説の洞穴として伝えられていたものだ」
「……はあ」
「しかし、その実態は、ガッチムーチカントリーと異世界とを繋ぐ時空の穴なのだよ」
「!? つまり、その801穴を使えば俺は帰れるんですね!? その穴はどこにあるんですか!?」
「慌てるな。話には順序がある。801穴を語るには、まずはこの世界の成り立ちについて知ってもらう必要があるのだ」
続く
1
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ
鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。
「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」
ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。
「では、私がいただいても?」
僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!
役立たずの僕がとても可愛がられています!
BLですが、R指定がありません!
色々緩いです。
1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。
本編は完結済みです。
小話も完結致しました。
土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)
小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました!
アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。
お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
【完結】攻略は余所でやってくれ!
オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*)
遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪
俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。
あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会?
え?これでやっと転生できるって?
どういうこと?
死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか?
え?まさかのものぐさ?
まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね?
でも10年だよ?サボりすぎじゃね?
父さんの親友は享年25才。
15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした!
小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。
お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ!
転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会!
やった~!今度も好みドンピシャ!
え?俺が悪役令息?
妹と一緒に悪役として仕事しろ?
そんなの知らねーよ!
俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ!
ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ!
これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる