人間に恋した人魚

藤宮 和紗

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住む世界

僕の代償

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昔、人魚のお姫様は陸の王子様に恋をした

偉大な魔女から声を代償に足をもらったらしい

お姫様と王子はすれ違いながらも愛を育みハッピーエンドを迎えたという

もしその恋が叶わなかったらお姫様は泡になるところだったらしい


それ程、異種族同士での恋愛は難しいのだ

そのお姫様以来、人魚と人間の恋というものは聞いていない

だっていつでも捨てるのは人魚だ

人間は何もしないで僕たちを待っている


人間は足を捨てることも、陸を捨てることも、生活を捨てることもできない

それだけの恋だとしたら仕方ないのだろう

ただ、人魚は恋のためだったらどんな愚か者にもなれる

そしてそれは僕にも当てはめられる

今日僕は海を捨てる
泳ぐためのヒレも、心地いい家も
何度も危機を乗り越えた仲間でさえも

全て捨てて君の元へ行く

捨てた代わりに
陸を得る
足を、君を

仲間たちは何度も僕を引き止めようとするけど
僕から君を取ったらどっちみち僕は死んでしまうだろうから


泡になってもいい
人魚は人間のようにあの世とか来世とかがあるわけではないけれど泡になって君の記憶に残ることは出来るだろう
むしろ、泡になれない君だからこそ僕を忘れずに…僕のことを悔やみながら生きてくれると思っている

全てを捨てた先にどんな形であれ君がいてくれるなら僕はそれだけで幸せだ










代償が片目なんて安いくらいさ

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