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★異世界からの来訪者★
ネージュの過去⑩
しおりを挟むーそして次の日からアマリリスが屋敷にいる日々が続いたー
しかし、アマリリスは初対面の際にネージュに見下した笑みを浮かべた通り、常にネージュを下の立場として接した。
ネージュが使用人に顧みられることのないことをいいことに、ネージュに暴言を吐いたり、存在を無視したり、時にはお仕置きと称して食事を抜くこともあった。
リリスはその度にイモーテルやジュールにアマリリスのネージュに対する態度を訴えていたが、アマリリスに注意をするだけで状況の改善はなされなかった。
そして、アマリリスが来て1年ほど経った時、ついに事件が起きた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある日の午後、
アマリリスが突然、ネージュの部屋を訪れた。
「ネージュ様。これから一緒にお散歩に参りませんこと??
今でしたら庭に綺麗な薔薇が咲いておりますわ。」
珍しく微笑みながら散歩の提案をしてきたアマリリスに対しネージュは不審に思ったが、どうしたらよいか分からずに黙り込んでしまった。
いつもならば、リリスが対応をしてくれるが、この日はリュミエールの様子を見に行くためにお休みをとっていた。
リリスはこのような状況下でネージュを1人にすることを拒んでいたが、ネージュもリュミエールの様子を気にかけていたため、お休みをとる運びとなっていた。
そのため、アマリリスの対応をしてくれる者が不在となってしまった。
黙り込んだネージュに対し、アマリリスは半ば強引に連れ出すことにした。
散歩をしていると綺麗な大輪の薔薇が咲き誇っており、ネージュは夢中になってしまった。
ー周囲の状況も目に入らないほどにー
ネージュが池のほとりに咲いている薔薇をしゃがんで眺めているとき、急に背後に影が差した。
ネージュが振り返ろうとしたときにはもう遅かった。
ドンっ
背中を強く押される感触がした。
バシャンッ
その押された勢いのまま、ネージュは池へと落ちてしまった。
庭にある池のため、さほど深くはないはずだが、まだ4歳にも満たないため、池の底に足がつかなかった。
また、お風呂以外では水に浸かったことのないネージュはパニックに陥り、そのまま水面でもがいていた。
アマリリスはそれを見て不敵な笑みを浮かべるばかりでネージュを助けることはなかった。
次第にネージュの体力が尽き、ネージュはもがくのをやめた。
身体が池に沈む中、ネージュは思った。
「もう、くるしいのもさみしいのもいやだ…。…おかーたまにあいたいな。おかーたまならネージュのことあいちてくれるのかな…。」
そのままネージュの意識はなくなった。
意識がなくなる前に屋敷の窓から人影が見えた気がした。
そして、誰とも分からない声が聞こえた気がした。
「ああ、愛を望んだ哀れな人の子よ。
お前はまだここで朽ち果てるには早い。
あの子と共に幸せを掴みとりなさい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長くなりましたが、これにてネージュ編は終わりになります。
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