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━━第十一章━━

━━ 五節 ━━

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「これで、終いだァッ!!」 

墜落した飛行艇から 、一斉に出てきた魔導兵たちを、ジャック・オ・ランタンの熱線で薙ぎ払う。 

シャンディは、 ジャック・オ・ランタンを肩に置いて呼吸を乱し、汗を流していた。

体力の消耗が激しい。

さっき、あいつに魔力を一気に吹き飛ばされたからか。

クソッ! 

体の不調に苛立つシャンディだった。 

ハガとキサラギも、残った兵を一掃し、疲労が溜まっていた。 

「頭が痛ェ。
睡眠不足だ」

キサラギは、槍で体を支えながら下を向いている。

ハガも深く息を整え、空を仰いでいると、上から何かが落下し、大地をえぐっていった。 

「ハァッ、ハァッ…」 

土煙から姿を現したのは、 三賢者エレノア 。

身なりはボロボロとなり、息を切らしているが、後から降りてきたタオに睨みつける。 

「アンタ、なかなかやるわね…」

「もうやめよう。
君の実力はよくわかった」 

「はァッ!?」 

なだめたつもりが、気を悪くさせてしまい、エレノアが加速して突進してきた。

「調子こいてんじゃないわよッ!!」

魔力を右手に集中させ、竜巻を纏ったことによって、地面が削られていく。

「ッ!! その魔術・・・・は━━!!」

ハガが思わず声を上げてしまったが、タオは、それをいとも容易く片手で軽く受け止めてみせる。 

衝突時に、ガントレットが砕散され、竜巻も消し飛んでしまった。 

「くッ…」 

「君の魔術は、私に通用しない。
わかってほしい」 

不発で終わったエレノアを、ハガが心底驚いていた。

間違いない…、あの子のやろうとした魔術は…。

眉間にしわを寄せ、悔しさが滲み出ているエレノア。

すると、森林から地響きと共に木が倒れる音が聞こえてきた。 

森の奥から現れたのは、3mを超える鎧の巨人。

上体は細身でありながら、四肢は太く力強さを醸し出している。

頭部は、一つ目のレンズとその脇に小型のライトが備わっており、辺りを見回しては、前方にいるタオ達を補足する。

「何だ…、アレは!?」

 タオが唖然としているうちに、後から続々と気をかき分けて、森から何体も出てきた。

「━━魔導巨兵ゴーレム部隊、ってことは…」

嫌な予感を胸に、ハガが苦笑していると、聞き覚えのある声を耳にする。

「エレノア~、あんた何苦戦してんのよゥッ!」 

ゴーレムが道を開け、後方から肩に人を乗せたゴーレムが前に出てきた。

「こっちはもう片付いたってのに、さっきまでシャンディを討つってイキってたばかりじゃない」

三賢者ロベルタは、ゴーレムから降りて、呆れ気味でため息をつくと、エレノアが舌打ちをしては、タオから離れた。

「うっさいわねッ、今、良いところだったのよッ!」

ロベルタの発言に気に食わなかったため、説得力のない言い訳をしてみる。

「また強がっちゃって━━って、あら!?」 

ふと、何やらタオの後方に気になる存在がいた。

「アンタッ!」

「げッ…」

ロベルタは、ハガの姿に目を見開いてみせる。

「どうして、ここにいんのよッ!?」

質問に対し、すぐさま目線をそらすハガだった。

「何? ロベルタの元彼?」 

「違うわよッ!! アイツはねェ━━ッ!」

その時、二人の耳に無線連絡が入った。

耳をすませ、内容を聞き終えたのか、エレノアはニヤッと笑みを浮かべる。

「たった今、リサー王の死が確認された」 

「ッ!? リサー王が…、亡くなられた…!?」

彼女の言葉に周りは驚愕し、動揺し始めた。

「他にも、大将の死も確認されたわ」

「あいつが…、やられただとッ!?」 

さすがのシャンディも想定外だったため、目を見開く。

「残った飛空挺は、直ちにアミュレットの元へ急げ!
こっちは、こっちで片を付けるッ!!」

無線で指示を出し、余裕の表情でこう告げる。

「これが、どういう意味か分かるわよね。
アンタ達の負けよ」



━━ 一方、陥落した城で睨み会う2人の少女。

ヒヨリが槍を引き、アミュレットとの距離をとる。

「…全て、アンタが仕組んだの?」

「私は、教皇様の計画をスムーズに進めるために動いただけです」

倒れているアレーニと、地下へと通じる階段を横目で見ては、槍を構えなおす。

「しかし、読みが甘かったですね。
上手く貴女方を国の外まで誘導させたつもりだったのですが…」

連戦続きでボロボロだったコートが、ほぼ元の状態まで再生したため、軽く埃を叩き落とす。

「…エイミー・・・・、アンタの事情は知ってる。
だからこそ、この戦いは無駄だと思うんだ」

「おかしいですね、その呼び名は親しい者にしか呼ばれたこと無いのですが…」

情報が流出していた!?

いや、精神感応テレパシーが扱えるのでしょうか。

だとしたら、少々厄介ですね。

「これから仲良くなっていくんだから、知っておいて損はないと思うんだよね。
でも、ハルちゃんに手を出そうっていうんなら容赦しないよ」

穏やかに話しているが、目は笑っておらず、更に殺気立っている。

“ハル”…、ミスター・ファントムのことでしょうか。

「生憎、そうもいきません。
少しでも教皇様の脅威となる存在は、消しておく必要があります。
そして、貴女も…。
なので、今後、貴女方とわかり合うことは無いでしょう」

空気がピリついている中、彼女の身体から、一切魔力を放出していないことに気付く。

感情に流されず、魔力を漏らしていないところを見ると、随分魔力制御に長けているようですね。

さすが花押の魔女に認められた一人、ということでしょうか。

「でも、そのままだとエイミーは、エイミーじゃ・・・・・・なくなっちゃうよ・・・・・・・・?」

「━━待ってくださいッ! それは━━ッ!?」

意味深発言を耳にし、問い質そうとした途端、ヒヨリが開けた風穴からぞろぞろと魔導兵士達が現れた。

「アミュレット様ッ!!
加勢に参りました!!」

「…、貴殿方では太刀打ち出来る相手ではありません。
地下に逃げ込んだ残党を捕縛してください」

「はッ!」

それを耳にしたヒヨリは、瞬時に地下への入り口に向かうが、アミュレットが即反応し、彼女の前に立ち塞がる。

「貴女の相手は、私ですよ」

「退いてッ!! ハルちゃんに指一本触れるなッ!!」



━━「うッ、うう…」

目を開けると、クレフの背中が見えた。

エンジンが唸り、よしッ、と気の抜けた声を漏らす。

「ここは…」

周囲をよく見ると、白いモーターボートの座席に腰掛けており、奥には水面に陽の光が反射していた。

「ハルカッ! 目を覚ましたんだね!」

クレフは、ステアリングの前で、意識を取り戻したハルカに安堵し、状況を説明する。

「脱出用の船の上だよ。
早くここから離れないと━━ッ!」

そのとき、非常用階段から鎧を身に付けた魔導兵士が続々と姿を現した。

「いたぞッ! 逃がすなッ!!」

魔導兵士達が機銃を構え始めたため、すぐさまクレフも船を出し、沖を目指す。

「━━ハルカ、ここは任せて」

後方から魔力弾を集中放火され、ハルカが身を低くしていると、クレフは、ボソッと呟いた。

「クッ、クレフ!?」

自身に身体強化魔法を施し、高く跳び跳ねては、ボートから離れてしまった。

そして、天井のはみ出た岩を拳で砕いたことによって、落石が降り注ぎ、魔導兵士達が慌てて後退していく。

「そんなッ!? クレフッ!!」

天井が崩れ落ちる中、岸に着地したクレフに呼び掛ける。

「…別れの言葉は言わないよ」

チラッとハルカに目をやっては、微笑んで軽く手を振った。

「また会おうね━━」

そう言い残し、落石が積み重なって、姿が見えなくなった。

クレフの名を何度も叫ぶが、崩落とエンジン音でかき消されてしまう。

荒れ狂う水面をボートは止まらず、明るい陽の下へと向かう。

やがて、眩い光に照らされ、目がくらんでは、前が見えなくなった。




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