『天燃ゆ。地燃ゆ。命燃ゆ。』中篇小説

第二十五話

　第二章　本能寺の変Version2.0

『『第四の神器』を掌握して天下統一してやろうぞ』
　と織田三郎信長はおもった。
　天文一五年｛一五四六年｝。元服をむかえて吉法師より改名した信長は尾張古渡城の中庭にて尾張の守護代である父君織田信秀の『実演』を目撃していた。傲岸不遜なる信長はおもう。南蛮渡来とはおもしろい。といえども新兵器などともうして如い何か程ほどのものかと。鬱うつ蒼そうたる樹木の攢さん叢そうする中庭にて冷徹なる織田信秀は麾き下かの武士に『魂たま結むすび』を強制し白銀の毛並みに九つの尻尾をもたれる巨大なるキュウビのキツネを操縦させていた。「おびえずともよし。さて。こちらへかかってまいれ」と織田信秀がいうとキュウビのキツネはまず跼きよく天てん蹐せき地ちとして次第に疾風迅雷で織田信秀に喰くらいかからんとしてきた。白銀のキュウビのキツネは赫かく奕やくたる残像をえがきながら信秀の界かい隈わいを飛ひ翔しようしまわる。信秀にも『すき』がない。しばらくキュウビのキツネがとびまわると信秀は「よし」といい『実演』をはじめた。日本式火縄銃いわゆる種子島である。信秀は敏びん捷しようにキュウビのキツネのうごきをとらえながら火縄に着火する。銃口へ胴薬と弾丸を装塡する。火皿に口薬をいれ火蓋をとじ火縄を火鋏ばさみにはさむ。目標は無論キュウビのキツネである。信秀の四方八方を浮ふ游ゆうしながら信秀に噛かみつかんとしていたキュウビのキツネはついに正念場だとかんがえたらしく真正面から信秀に猛襲してきた。信秀は種子島をかまえる。火蓋をきる。ひきがねをひく。まさに超人技である。轟ごう然ぜんたる爆発音とともに種子島から弾丸が発射されキュウビのキツネの右肩を破裂させる。