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第二十二話
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全国民は『玉音放送』に傾聴した。
全国民の胸臆は渾沌としていた。
『天罰』による鬼哭啾啾たる爆心地の界隈を囲繞する満目蕭条たる新潟市の僻陬にて婆娑羅狼藉の兵燹によって棲家を褫奪された無辜の黎民たちが臨時に設置された襤褸襤褸の仮設市役所の茶褐色に変色した拡声器からのラジオ放送を静聴していた。神聖冒瀆すべからざる玉音放送が終焉をむかえると直立不動で彳亍していた青年や右手を顳顬にあてて敬礼していた傷痍軍人あるいは堅韌に正座して頭顱を撓垂れていた老人たちから最初は孑孑としてやがて氤氳として『こえ』があがっていった。いわく「なんだったがあやいまのは」「陛下はなんとおっしゃっていらっしゃったのだ」「雑音ばっかでわからんねっか」「静まれ愚民ども。陛下の胸臆を察せよ」「じゃあいまのはどういう意味だったのさ」など――――。そこで前述の熾天使ミカエルたちによる『天罰』を生存して疎開のために義母や家具類を運搬せんと荷車をひいていた金城しのぶつまり金城浩樹の母親がこたえた。「おそらく陛下は『国民総特攻』を命じられたのではないでしょうか」と。汚穢塗れの国民服をまとった壮年がきいた。「なんらよそりゃあ。『国民全員で亜米利加に特攻』でもしようってがあか」と。金城しのぶは忐忑しながらこたえる。「そうです。わたくしの息子が神軍の軍人なので仄聞はしておりました」と。壮年は喫驚する。「なんらって」と。金城しのぶは頭顱を撓垂れてこたえる。「日本国民全員が魂魄接続をして『日本列島そのもの』を神様として粒子化し亜米利加教国と『最終戦争』をする計画があると――」と。壮年は国民服をめくりあげて腹部をあらわにする。壮年の腹部には端末接続用の機関がくみこまれていた。
全国民の胸臆は渾沌としていた。
『天罰』による鬼哭啾啾たる爆心地の界隈を囲繞する満目蕭条たる新潟市の僻陬にて婆娑羅狼藉の兵燹によって棲家を褫奪された無辜の黎民たちが臨時に設置された襤褸襤褸の仮設市役所の茶褐色に変色した拡声器からのラジオ放送を静聴していた。神聖冒瀆すべからざる玉音放送が終焉をむかえると直立不動で彳亍していた青年や右手を顳顬にあてて敬礼していた傷痍軍人あるいは堅韌に正座して頭顱を撓垂れていた老人たちから最初は孑孑としてやがて氤氳として『こえ』があがっていった。いわく「なんだったがあやいまのは」「陛下はなんとおっしゃっていらっしゃったのだ」「雑音ばっかでわからんねっか」「静まれ愚民ども。陛下の胸臆を察せよ」「じゃあいまのはどういう意味だったのさ」など――――。そこで前述の熾天使ミカエルたちによる『天罰』を生存して疎開のために義母や家具類を運搬せんと荷車をひいていた金城しのぶつまり金城浩樹の母親がこたえた。「おそらく陛下は『国民総特攻』を命じられたのではないでしょうか」と。汚穢塗れの国民服をまとった壮年がきいた。「なんらよそりゃあ。『国民全員で亜米利加に特攻』でもしようってがあか」と。金城しのぶは忐忑しながらこたえる。「そうです。わたくしの息子が神軍の軍人なので仄聞はしておりました」と。壮年は喫驚する。「なんらって」と。金城しのぶは頭顱を撓垂れてこたえる。「日本国民全員が魂魄接続をして『日本列島そのもの』を神様として粒子化し亜米利加教国と『最終戦争』をする計画があると――」と。壮年は国民服をめくりあげて腹部をあらわにする。壮年の腹部には端末接続用の機関がくみこまれていた。
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