幸せが終わるとき。（完結）

WEBサイト版別バージョン編

狡い考え。

目の前に居る女を見ながら、自らを沈めて喘ぐ声を聴きながら、気持ちいいと感じてがむしゃらに腰を振る。気づかいだとか遠慮とか全く気にならず、ただ自分が気持ち良ければいいやと投げやりのような気持ちで覆われる。

きっと、俺はどこか欠陥品。
誰も分かってなどくれない、もう分かる努力も疲れてしまった。
女なんかみんな一緒。見た目さえ良ければ、誰だって落ちる。
甘い言葉を囁けば、大抵の女はやらせてくれた。

「はぁっ…ぅうんっ…あぁんっ…」

ＳＥＸだけが自分の存在を認めてくれる気がして、身体中に刻み込むような跡も、自分の腕に付いた女の爪の痕も、それすらも気持ちいいと感じる俺はどこかＭなのかもしれない。

「気持ちい…？？」
「うん、ティエ、上手いよね…今までの彼氏よりも上手よ」

目の前に居るソバージュの髪の年上の女性は、ティアナとのデートの後にナンパしてきた女で、旦那さんと上手く行ってない相談を受けたので、さり気なくホテルに誘導しただけでこれだ。寂しいだけでナンパして家庭崩壊。あほらしと思いながら、避妊しないで済むのが楽だと思った。

思い切り中に出してやれば、セックスレスの旦那さんを重ねて抱かれるんだろうか？

「くだらね…」

ティアナも同じ。きっと誰かを重ねてる。レアとか言う男だっけ。
あの時部屋から出てきた男だよな。俺が先に彼女の処女《はじめてのあいて》になってやろうと思ってたのに。俺の僅かな友人、メシアを毒牙に掛けた女なんて俺が仕返ししてやるよ。

「気持ち良かった～。
あの女、そこそこ上手かったけど、候補にするほどじゃないなぁ」

俺の携帯には、山のようなアドレスの女の名前が入ってる。
上手い女だけじゃなく下手な女も、色んなプレイをしたいから、こんな一回だけの女もしょっちゅうだった。

それと同時に、気持ち良さと共に訪れるのは。

俺の事を誰も「本当には」好きになって貰えない事。
俺は誰も「本当には」女を好きになったことがない事。

それに対して、何とも思わない事。
別に不幸でもない。整った顔に生んでくれた母親と父親には感謝してる。
それと同時に、一生『人並みの幸せ』なんかに縁ねーんだろうなと軽く考えて、

あのお堅いティアナという料理しがいのある女《しょくざい》に俺を教え込んで、避妊しないで飽きるまでやれればそれは気持ちいいんだろうなと楽しみになってくる。

「今から楽しみだな～♪」

何で、こんなにムキになって拒まれてもやりたいと思ったことないはずなのに、
気が付いたら、彼女を今からどうしようか、ワクワクしていて、

早く会いたいと願うのだった。