幸せが終わるとき。(完結)

紫苑

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荒れる心。

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ああ、俺、寂しいんだ。

ティアナと離れたことこんなにも苦しくて、狂おしいほど夢中になってたのは俺で-…ティアナは最初から「俺」を見ていた。

誰よりも一人の「男」として必要としていた彼女。彼女は自分が女だときちんと分かって、抱いてほしい、愛してほしい、好きって言ってほしいと訴えていたのに。

馬鹿だ。俺、本当馬鹿だ。

彼女は結局、クレハの事を知り、離れて行った。

いや、本当は、優柔不断うじうじしてる俺に愛想をつかして逃げたという方が正しい。女々しくて悲しみで胸が痛い。


あの、幼い時の入学したてのティアナは、すっかり綺麗な1人の「女性」となって、俺の前に現れたんだから。

「からかってない。でも…全てを話せない。」
「それで、待ってたら振り向いてくれるの!?」
「ティア…」

差し出した手をぱんっと叩かれた。
「クレハさんは貴方が殺してもう居ない!!」

ずきんと心が引き裂かれた。痛い。叫びは止まらない。

「そんなのに勝てる訳ないよ…私、レアの事それでも好きだった。好きだった…けど、受け入れられないよ…私をいつまでも女扱いしてくれないのに、都合のいい時だけ呼ぶ貴方が信じられない。さよなら、もう家に来ないで」

苦痛に顔を歪めて思い出しては苦笑した。
泣き顔が見られなくて本当に良かったと心の奥の中がパリンと割れてしまう。

クレハ、何で死んだんだ?
クレハ、慰めてくれよ。
可哀想な、同情としてでも、ティアナを傍に置いておきたくて自滅した。

溢れる涙と叫び声を止めることは出来なくて、

俺はまた独りになった。

孤独は嫌いじゃない、
寂しくなんてない、
自虐的なんかならない。

なのに、

抱きしめたい。愛したい。クレハじゃなく、

迷わず、傍に置きたいのは、ティアナだったことに、

「気が付くのが遅いよなぁ」

泣かせてしまった。

都合よく、弱くなるとクレハの名前を呼ぶ俺はどれだけ矮小なのだろう。

クレハの事なんて今はもう全く思ってすらいないのにね。

彼女クレハが、今はもう過去の彼女元カノとして認識してることも気付くのが遅すぎた。

間違えてクレハの名前を読んでしまって、
色々とばれてしまい、転んだ彼女ティアナ
を手を出して、支えたのは他の男メシアだと言う。後から知ったことだけれども、それが情けなくて、本人に確かめたわけでもなく、彼女ティアナはあれから俺とは会ってくれなくなった。

辞めたはずの煙草の本数が増え、マルボロを吸いながら、ビールを片手に時間を持て余した。

自分がダメだと言うことに気が付いて、

「俺、拗ねてんのか」

と初めて馬鹿みたいな自問をした。

メシアは、顔もよく、優しく、勉強もできて、女にも…-。

「あほらし。
比べてもしょうがないのにな。」

俺は俺だから、いい加減求人も探さなくてはならない。
帰らない女を待つのはもうやめよう。そう思って、求人を見るものの、俺にまた教師なんか出来るのだろうか?

以前からあった友人の誘い。

ティアナが去ってから数年が経ち、彼女はきっともう大学進学だ。

待てども待てども、彼女の母親でさえ連絡をよこさない。

風の噂で、看護学校のある大学に受かったと聞いた。

「きっと、メシア君は医大だから-お似合いのカップルになるんじゃない?」

そんな聞きたくもない噂話は尾ひれをついて出回ってる。

ティアナの家庭教師を辞めてから、
何度か塾の講師になって、女も出来て、操を立ててたのに女を抱いて、
つまらない、愛せない、ティアナじゃない。

それでも、一人で生きていけないのが俺の弱さだった。

一時期だけ満たされる性欲。
彼女と重ねて、身代わりにしては捨てて。
職場を転々と変えて、

「最低だよな」

口元を歪めては、悲しくなって、

「あれ」

雨が降る。

今は家の中のはずだ。

でもおかしいんだ。

確かに降っていて、俺の洋服を濡らしていくのだから、おかしいよな。

「ああ…」

俺の頬を伝うのは、

「俺、泣いてんのか」

悲しい。

どうしたらいいのか分からず、友人の紹介してくれた学校の講師の先に気づいたら電話していた。

事がたんたんと進み、

心の中で久しぶりに、ティアナを思い出しながら受けた面接は、あっさり通って、俺はこの春学校の教師になる。

あの日あった事は忘れるんだ。
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