39 / 39
第一世界 3章 学園編
39,クラス会とあれこれ
しおりを挟む
今日は秋に言われたクラス会の当日。悠灯は同化状態で、ネロはそのまま着いてくるらしい。克墨と剋久夜は悠灯と同じで同化状態だけど寝てる。ルキウスと晴空さんは朝からそれぞれの愛剣内に入ったままだから今もそっちで話をしたりしてるんじゃないかな。
街にいる人からチラチラ視線を向けられながら歩いてクラス会の会場に着いた。ネロ曰く地球で言う大使館みたいなものらしい。
当然のように門番さんらしき人がいたけどそれは秋達の名前を出したら本人に確認しに行ってくれたおかげですぐに通ることが出来た。重要そうな施設の門番なだけあって総合的に能力が高いんだろうな。
中に入ったら2人居た受付の人のうち1人が案内役として受付から出てきた。ネロに対して1歩引いた雰囲気を感じるけど大使館の元の国から見て他国の王族だからね是非もなし。
「こちらで本日の会議が行われます。私が先に入り一言お伝えしますのでその後私が部屋から出てから入ってください」
ふむ、つまり承諾取ってから入れよ?勝手に入るなよ?って認識でオーケーそうか。そう言った受付さんは小さく扉を開けて中に入っていった。
緊張してるようでネロがさっきまで普通に立ってたのに今は手をにぎにぎして来てる。
にぎにぎ、にぎにぎ・・・・・・
ハッ!危ない危ない。意識がどこかに消えてた。普段と比べて少し熱い肌と一般女子がどんなスキンケアしてるのか問いつめるレベルのもちすべ肌でそういう事されると心臓に悪い。
まぁ悠灯曰く僕は心臓潰されても死なないらしいから問題無いけど。
(帰ってきたら私もやるからね)
・・・・・・ ふぅ、これはクラス会の後にまた意識が消えることがほぼほぼ確定した。
そうして待ってたら扉が開いて受付さんがでてきた。まぁ待ってたらって言ってもネロの方を見た感じ実際はそこまで時間経ってないっぽいけど。
もう入っていいみたいだから早速入ろう。順番は立場的にも能力的にもいざと言う時に盾役になれる僕からの方がいい。
スーッと音を立てるどころか開ける時の抵抗すら無く開いた扉をくぐって部屋の中に入った。
その瞬間、部屋中のほぼ全ての視線が僕達の方に向けられた。普通の人ならこういう時は挙動不審になったりするんだろうけどあいにく視線を向けられるのは正直魔国にいる間に慣れた。
なんて言ったってあっちでは1クラスの人数程度じゃ効かない量の視線が色んなところから向いてたからね。
それに視線の中には時々王都なのに白昼堂々ネロを標的に人攫いを狙うような視線もあったから少なくとも視線に含まれる感情に悪いものが含まれてるかどうか程度は判断できるようになった。
ちなみに人攫いは捕まえたあと外傷が残らない程度にお話して憲兵さんに引き渡したあと近衛兵って言うエリートの人達にも伝えてからはどうなったか知らない。
それのおかげで今向けられてる視線に含まれる感情の中には悪いものは無いって言うのがわかる。その上ネロ自身も立場上人から見られることには慣れてるから挙動不審になることなんてないしね。
僕達が入ってきてからの部屋は未だにザワついてる。これじゃ話が出来ないな。いっその事一時的に全員の口から出る声を遮断して無音空間でも作る?
そんなことを考えていると神城が手を手を叩いてつい今まで騒いでいた全員の注目を集めて黙らせた。やっぱり地球にいた頃からクラスの中心にいただけの事はある。ほんとカリスマ持ちは自覚のあるなしに関わらずこういう時に役立つから重宝する。
その上これまでの経験的に大なり小なりカリスマがある奴は大抵の場合その性質が善悪どっちかにわかりやすいくらい振られてることが多い。
だから相手の性質に合わせた対応をすれば直接頼まなくてもこっちが求める動きかそれに近いことをしてくれる。
そう思ってたら神城が今度はこっちに歩いてきて軽く微笑みを浮かべて手を出してきた。
「正直藤堂たちから聞いた時は半信半疑だったけど無事で何よりだよ」
秋たちって事は森宮さんもか。
「あー、ダンジョンから出た後は色々とあったけど、まぁ無事だよ」
そう言って出された手を握って軽く握手をして互いにどちらかともなく手を離した。
「あと横にいるのは誰かな?一応クラス会だから関係者以外の参加は遠慮して欲しいんだけど」
「僕が途中離脱してから今まで何してたかってことについて1番の関係者だよ。先に身分だけ言うと魔国の第3王女殿下」
ブハッ!?!
僕がネロのことを第3王女って言った瞬間、クラスメイトの1部から吹き出す音が聞こえた。端的に言って汚い。
吹き出したやつが遠いから良かったけど近かったら飛沫対策に無言で空間断層バリアとか貼ってたぞ……
ていうかここまで特に話も無いから僕たち来なくて良かったんじゃないかなって思えてくる。
それにせっかく神城が黙らせた奴らもさっき吹き出したやつの後からまたザワザワしだしたし……うちのクラス堪え性無さすぎか?
あれから2、3分程度して騒がしさは収まった。今はネロが女子から質問責めにあってる。まぁそれはネロが着いてくる理由を聞いた時に地球にいた頃のクラスメイトともある程度仲良くしておきたいって言ってたから問題ないね。
ちなみに僕はネロが質問責めにあってるのを見ながら壁にもたれかかってセルフサービスと言わんばかりに置いてあった飲み物を飲んでる。いくつかあった中から適当に選んだけど好きな果物トップのマンゴーに似た味のジュースで満足。うん、これはいいものだ。
後で秋たちにこの飲み物の名前を知らないか聞かないと。そして知ってたらこの街に売ってないか探してもし売ってたら定期的に購入することも考えるくらいには気に入った。
それにしても、今のところは女子だけとはいえ仲良く話してて安心した。このまま行けば男子も学園系の創作物にそこそこ出てくる度を超えた変態相手でも無ければ普通に仲良く出来そう。
変態はまぁ、手を出した瞬間に相応の報復が必要になるけど少なくともうちのクラスにはいないからそれは安心できる。
ネロが解放されるまで適当に飲み物飲みつつお菓子でも食べて暇を潰すか。
クラスメイトと話そうと思っても男子組は秋を中心に過半数が固まっててそれ以外は各々グループが出来てるし女子はほぼ全員ネロの質問責めに参加してるからね。そもそも今話す相手がいない。
「マーくんおいっす~」
話し相手がいないって思ってたらネロが向いてる方から名前を呼ばれてそっちを向いたらネロ包囲網から少し離れたところで手を振ってるのが見えた。
呼び名から何となく察してたけどやっぱり宙か。
「あー、おいっす~。他の女子みたいにアレに参加しないでいいのか?」
「ん~、軽い質問の答えは聞けたから別にいいかな~。私は別に根掘り葉掘り聞く気なんて無いしね~」
「なるほど。それと名前呼んだけど何か用?」
「ふふふ、今から見せたいものがあるからだよ~。それじゃマーくん、マーくんがいない間に私が何してたのか見て驚き羨むがいいっ!」
見て驚き羨むがいい?正直何がしたいのかよく分からないけどとりあえず用が済むまで待っとこう。
「『Λάμπει κόκκινη φλόγα《朱緋の煌焔》
Κυανό νερό φλέβα《紺碧の水脈》
Τζέιντ άνεμος《翡翠の疾風》
Αυτό που έχει αλλάξει είναι καθαρό λευκό《混じりて変わるは穢れなき純白》』」
・・・・・・ちょっと待って欲しい。用が済むまで待つとは言ったけど詠唱で溢れる魔力がやばい。これ、宙と同格以下の人は魔力量が大きすぎて1周回って知覚できないレベルだぞ。
とりあえず僕たちの周りと上だけじゃなくて床の保護のために下も塞ぐように結界を貼ってこれ以上周りにこの魔力が溢れないようにしておこう。あぁ、あとついでに防音仕様にしとこうか。
「『Έλα《来ませい》』
そして結界を貼り終えて防音効果まで付けたところで結界の内外に溢れていた魔力が急速に宙の足元に集まると、集まった魔力の塊を中心にして複雑な模様をした球状の魔法陣とそれを囲むように、陣の中心同士を結ぶと6角形になる配置で平面魔法陣が現れた。
現れた魔法陣は球状魔法陣が白、平面魔法陣が赤青緑が2つずつ。そして6つの平面魔法陣は出現した直後の回転し始めると中心にある魔力に向けてそれぞれの魔法陣と同じ色をした粒子が放出された。
そして粒子が魔力に混ざり始めると回転していた魔法陣が徐々にその形を崩し粒子の後を追うように魔力に呑まれ始めた。
『είναι όμορφο Βάλτο χωρίς βάθος Μεγάλο λευκό άγγελος《無穢無底大白聖》』」
放出されていた粒子に加えてその後に呑まれ始めた魔法陣の全てが魔力の中に消えて残るは白の球状魔法陣と呑み込んだ魔法陣と同じ色をした小さな光の粒を持つ魔力だけになったところで最後の詠唱に呼応するように魔力が内側から膨張し始め、球状魔法陣に触れるとそのまま魔法陣諸共破裂した。
そしてその後には染み1つない、純白の滑らかな見た目をしたスライムがいた。まぁ見た目は普通のスライムとはいえあれだけの詠唱をして召喚したスライムがそこら辺のスライムと同格なわけはないだろうけど。
「・・・・・・スライム?」
「うん、私のペット」
ペット、ペットかぁ。
「それで?見せたいものってそのスライム?」
「うん、でもただのスライムじゃあないんだよ。」
何となくドやっとしてる感じがする。普通のスライムじゃないのは何となくわかるけど一体何が違うんだろう。
「この子はしらたま、私のペットでありベッドでもあるんだよ。しかも私が寝てる時の姿勢とか頭の向きに合わせて体の形が変わるから絶対安眠できるし朝起きるのがつらい時はこの子自体に動いてもらえば寝たまま移動できるんだ」
なるほど、全自動ベッドか。確かにそれは便利そうだし人によっては羨むのもわかる。
けど僕の場合は楽するために作ったオリジナル魔術で似たようなことできるからそこまで羨ましいとは思わないな。まぁ魔術が無ければ羨んでたと思うけどね。あと名前が詠唱に対してだいぶ緩い。いや、だってさぁ。しらたまって……
「ふーん、便利そうだね。ベッドにするためにペットにしたの?」
「んー、もう1匹のと一緒にペットにしたからね~。ベッドにしてるのは試してみたら思いのほか安眠できたからだよ~」
ペットは他にもう1体いるのか……そして一緒にってことはそのもう1体も多分このスライムと同格以上だろうしペットも戦力に含む場合もしかしたら神城より強いんじゃなかろうか。
「そのもう1体は召喚しないの?」
「あんこは基本ご飯の時以外出たがらないからね~移動とベッドはしらたまに頼んでるの」
そういうことなら仕方ないか。何気にもう1体の名前はあんこなのね。混ぜたらお汁粉になりそう。
あ、そうだ。質問責めの暇つぶしも兼ねて宙と軽く雑談してたけどネロはそろそろ解放されたかな?一応クラスメイトのうち元から会話があった相手とは話せたから帰ってもいいかなと思うんだけど。
さてと、ネロはどうかなっと・・・・・・見た感じは質問責めって言うより軽く話してるだけっぽいな。声かけてみて大丈夫そうなら帰ろう。もちろんネロがまだ話したいって言うなら残るけど。
「ネロ、最初の質問責めは終わったみたいだけどどうする?会話を続けるなら残ってもいいし疲れたなら帰ろうと思うけど」
いきなり話しかけて驚かせないようにある程度ゆっくり歩いてネロがこっちに気づいたあたりで耳元近くに行って小声で話しかけた。
ネロに話しかけたら女子の一部が謎に生暖かい視線を向けてるのが気になるけど今は放置でいいや。
「えっ、私は・・・・・・もう少しマオさんのクラスメイトだった方たちと話したいです」
「わかった。じゃあ僕は待ってるから少しと言わず気が済むまで話したらいいよ」
そう言ってまたクラスメイトの方に送り出した。やっぱり同年代の対等な話し相手って皆必要なんだろうな。ネロが王女って知っても女子は普通に敬語抜きで話しててネロもそれを気にすることなく時々笑顔になったりしながら話してる。
あぁ、僕の恋人が可愛い。この後ネロが話終わるまで眺めてても飽きなさそう。
・・・・・・そんなふうに完全に気を抜いてたから廊下側の壁際にいたのに廊下を走る音に全く気づかなかった。
バンッ!!
僕が背もたれ替わりにしてた壁から少し離れたところにある扉が音を立てて勢いよく開くとそこからアイリス姫が頭だけ出して部屋の中を見渡していた。
そして僕がそれに気づいて見ていたらバッチリ目が合ってそのまま、
「クジョウ様ッ!!」
走りながら名前を呼んで勢いそのままに突っ込んで来た。とりあえず重力魔法で相手の重力を軽減して自分の体を適当に強化したら近所の教会とそこに併設されてる孤児院のボランティアで鍛えた衝撃受け流し技術を使ってお互いにダメージなく受け止めた。
そして受け止めたアイリス姫がそのまま僕の背中に手を回して抱きつくと胸元に顔を埋めて泣き始めた。
「ちょっ!?姫様!?」
「うぅ・・・・・・クジョウ様が無事でよかったです。あと姫様ではなくアイリスと呼んでください」
「・・・・・・マオさん」
やばいやばいやばい。何がやばいってさっきまでクラスメイトと楽しそうに会話してたのにハイライトが消えた目でゆっくりこっちに歩いてくるネロがやばい。あと姫様はどさくさに紛れて名前呼びを要求して来た。
「ちょっ、姫様ほんと一旦離れて」
今の状況でこの体勢を継続するのは本当にやばいから離れてもらわないと最悪傷害案件も有り得る。身分自体も同格だから余計にタチが悪い。
「アイリスと━━━「アイリス一旦離れて!」むぅ、わかりましたよ」
「マオさん、その方はどなたですか?説明を要求します」
あっ、ふ~ん。もうこれダメみたいですね。マジで秋のこと笑えなくなりそうだ。
街にいる人からチラチラ視線を向けられながら歩いてクラス会の会場に着いた。ネロ曰く地球で言う大使館みたいなものらしい。
当然のように門番さんらしき人がいたけどそれは秋達の名前を出したら本人に確認しに行ってくれたおかげですぐに通ることが出来た。重要そうな施設の門番なだけあって総合的に能力が高いんだろうな。
中に入ったら2人居た受付の人のうち1人が案内役として受付から出てきた。ネロに対して1歩引いた雰囲気を感じるけど大使館の元の国から見て他国の王族だからね是非もなし。
「こちらで本日の会議が行われます。私が先に入り一言お伝えしますのでその後私が部屋から出てから入ってください」
ふむ、つまり承諾取ってから入れよ?勝手に入るなよ?って認識でオーケーそうか。そう言った受付さんは小さく扉を開けて中に入っていった。
緊張してるようでネロがさっきまで普通に立ってたのに今は手をにぎにぎして来てる。
にぎにぎ、にぎにぎ・・・・・・
ハッ!危ない危ない。意識がどこかに消えてた。普段と比べて少し熱い肌と一般女子がどんなスキンケアしてるのか問いつめるレベルのもちすべ肌でそういう事されると心臓に悪い。
まぁ悠灯曰く僕は心臓潰されても死なないらしいから問題無いけど。
(帰ってきたら私もやるからね)
・・・・・・ ふぅ、これはクラス会の後にまた意識が消えることがほぼほぼ確定した。
そうして待ってたら扉が開いて受付さんがでてきた。まぁ待ってたらって言ってもネロの方を見た感じ実際はそこまで時間経ってないっぽいけど。
もう入っていいみたいだから早速入ろう。順番は立場的にも能力的にもいざと言う時に盾役になれる僕からの方がいい。
スーッと音を立てるどころか開ける時の抵抗すら無く開いた扉をくぐって部屋の中に入った。
その瞬間、部屋中のほぼ全ての視線が僕達の方に向けられた。普通の人ならこういう時は挙動不審になったりするんだろうけどあいにく視線を向けられるのは正直魔国にいる間に慣れた。
なんて言ったってあっちでは1クラスの人数程度じゃ効かない量の視線が色んなところから向いてたからね。
それに視線の中には時々王都なのに白昼堂々ネロを標的に人攫いを狙うような視線もあったから少なくとも視線に含まれる感情に悪いものが含まれてるかどうか程度は判断できるようになった。
ちなみに人攫いは捕まえたあと外傷が残らない程度にお話して憲兵さんに引き渡したあと近衛兵って言うエリートの人達にも伝えてからはどうなったか知らない。
それのおかげで今向けられてる視線に含まれる感情の中には悪いものは無いって言うのがわかる。その上ネロ自身も立場上人から見られることには慣れてるから挙動不審になることなんてないしね。
僕達が入ってきてからの部屋は未だにザワついてる。これじゃ話が出来ないな。いっその事一時的に全員の口から出る声を遮断して無音空間でも作る?
そんなことを考えていると神城が手を手を叩いてつい今まで騒いでいた全員の注目を集めて黙らせた。やっぱり地球にいた頃からクラスの中心にいただけの事はある。ほんとカリスマ持ちは自覚のあるなしに関わらずこういう時に役立つから重宝する。
その上これまでの経験的に大なり小なりカリスマがある奴は大抵の場合その性質が善悪どっちかにわかりやすいくらい振られてることが多い。
だから相手の性質に合わせた対応をすれば直接頼まなくてもこっちが求める動きかそれに近いことをしてくれる。
そう思ってたら神城が今度はこっちに歩いてきて軽く微笑みを浮かべて手を出してきた。
「正直藤堂たちから聞いた時は半信半疑だったけど無事で何よりだよ」
秋たちって事は森宮さんもか。
「あー、ダンジョンから出た後は色々とあったけど、まぁ無事だよ」
そう言って出された手を握って軽く握手をして互いにどちらかともなく手を離した。
「あと横にいるのは誰かな?一応クラス会だから関係者以外の参加は遠慮して欲しいんだけど」
「僕が途中離脱してから今まで何してたかってことについて1番の関係者だよ。先に身分だけ言うと魔国の第3王女殿下」
ブハッ!?!
僕がネロのことを第3王女って言った瞬間、クラスメイトの1部から吹き出す音が聞こえた。端的に言って汚い。
吹き出したやつが遠いから良かったけど近かったら飛沫対策に無言で空間断層バリアとか貼ってたぞ……
ていうかここまで特に話も無いから僕たち来なくて良かったんじゃないかなって思えてくる。
それにせっかく神城が黙らせた奴らもさっき吹き出したやつの後からまたザワザワしだしたし……うちのクラス堪え性無さすぎか?
あれから2、3分程度して騒がしさは収まった。今はネロが女子から質問責めにあってる。まぁそれはネロが着いてくる理由を聞いた時に地球にいた頃のクラスメイトともある程度仲良くしておきたいって言ってたから問題ないね。
ちなみに僕はネロが質問責めにあってるのを見ながら壁にもたれかかってセルフサービスと言わんばかりに置いてあった飲み物を飲んでる。いくつかあった中から適当に選んだけど好きな果物トップのマンゴーに似た味のジュースで満足。うん、これはいいものだ。
後で秋たちにこの飲み物の名前を知らないか聞かないと。そして知ってたらこの街に売ってないか探してもし売ってたら定期的に購入することも考えるくらいには気に入った。
それにしても、今のところは女子だけとはいえ仲良く話してて安心した。このまま行けば男子も学園系の創作物にそこそこ出てくる度を超えた変態相手でも無ければ普通に仲良く出来そう。
変態はまぁ、手を出した瞬間に相応の報復が必要になるけど少なくともうちのクラスにはいないからそれは安心できる。
ネロが解放されるまで適当に飲み物飲みつつお菓子でも食べて暇を潰すか。
クラスメイトと話そうと思っても男子組は秋を中心に過半数が固まっててそれ以外は各々グループが出来てるし女子はほぼ全員ネロの質問責めに参加してるからね。そもそも今話す相手がいない。
「マーくんおいっす~」
話し相手がいないって思ってたらネロが向いてる方から名前を呼ばれてそっちを向いたらネロ包囲網から少し離れたところで手を振ってるのが見えた。
呼び名から何となく察してたけどやっぱり宙か。
「あー、おいっす~。他の女子みたいにアレに参加しないでいいのか?」
「ん~、軽い質問の答えは聞けたから別にいいかな~。私は別に根掘り葉掘り聞く気なんて無いしね~」
「なるほど。それと名前呼んだけど何か用?」
「ふふふ、今から見せたいものがあるからだよ~。それじゃマーくん、マーくんがいない間に私が何してたのか見て驚き羨むがいいっ!」
見て驚き羨むがいい?正直何がしたいのかよく分からないけどとりあえず用が済むまで待っとこう。
「『Λάμπει κόκκινη φλόγα《朱緋の煌焔》
Κυανό νερό φλέβα《紺碧の水脈》
Τζέιντ άνεμος《翡翠の疾風》
Αυτό που έχει αλλάξει είναι καθαρό λευκό《混じりて変わるは穢れなき純白》』」
・・・・・・ちょっと待って欲しい。用が済むまで待つとは言ったけど詠唱で溢れる魔力がやばい。これ、宙と同格以下の人は魔力量が大きすぎて1周回って知覚できないレベルだぞ。
とりあえず僕たちの周りと上だけじゃなくて床の保護のために下も塞ぐように結界を貼ってこれ以上周りにこの魔力が溢れないようにしておこう。あぁ、あとついでに防音仕様にしとこうか。
「『Έλα《来ませい》』
そして結界を貼り終えて防音効果まで付けたところで結界の内外に溢れていた魔力が急速に宙の足元に集まると、集まった魔力の塊を中心にして複雑な模様をした球状の魔法陣とそれを囲むように、陣の中心同士を結ぶと6角形になる配置で平面魔法陣が現れた。
現れた魔法陣は球状魔法陣が白、平面魔法陣が赤青緑が2つずつ。そして6つの平面魔法陣は出現した直後の回転し始めると中心にある魔力に向けてそれぞれの魔法陣と同じ色をした粒子が放出された。
そして粒子が魔力に混ざり始めると回転していた魔法陣が徐々にその形を崩し粒子の後を追うように魔力に呑まれ始めた。
『είναι όμορφο Βάλτο χωρίς βάθος Μεγάλο λευκό άγγελος《無穢無底大白聖》』」
放出されていた粒子に加えてその後に呑まれ始めた魔法陣の全てが魔力の中に消えて残るは白の球状魔法陣と呑み込んだ魔法陣と同じ色をした小さな光の粒を持つ魔力だけになったところで最後の詠唱に呼応するように魔力が内側から膨張し始め、球状魔法陣に触れるとそのまま魔法陣諸共破裂した。
そしてその後には染み1つない、純白の滑らかな見た目をしたスライムがいた。まぁ見た目は普通のスライムとはいえあれだけの詠唱をして召喚したスライムがそこら辺のスライムと同格なわけはないだろうけど。
「・・・・・・スライム?」
「うん、私のペット」
ペット、ペットかぁ。
「それで?見せたいものってそのスライム?」
「うん、でもただのスライムじゃあないんだよ。」
何となくドやっとしてる感じがする。普通のスライムじゃないのは何となくわかるけど一体何が違うんだろう。
「この子はしらたま、私のペットでありベッドでもあるんだよ。しかも私が寝てる時の姿勢とか頭の向きに合わせて体の形が変わるから絶対安眠できるし朝起きるのがつらい時はこの子自体に動いてもらえば寝たまま移動できるんだ」
なるほど、全自動ベッドか。確かにそれは便利そうだし人によっては羨むのもわかる。
けど僕の場合は楽するために作ったオリジナル魔術で似たようなことできるからそこまで羨ましいとは思わないな。まぁ魔術が無ければ羨んでたと思うけどね。あと名前が詠唱に対してだいぶ緩い。いや、だってさぁ。しらたまって……
「ふーん、便利そうだね。ベッドにするためにペットにしたの?」
「んー、もう1匹のと一緒にペットにしたからね~。ベッドにしてるのは試してみたら思いのほか安眠できたからだよ~」
ペットは他にもう1体いるのか……そして一緒にってことはそのもう1体も多分このスライムと同格以上だろうしペットも戦力に含む場合もしかしたら神城より強いんじゃなかろうか。
「そのもう1体は召喚しないの?」
「あんこは基本ご飯の時以外出たがらないからね~移動とベッドはしらたまに頼んでるの」
そういうことなら仕方ないか。何気にもう1体の名前はあんこなのね。混ぜたらお汁粉になりそう。
あ、そうだ。質問責めの暇つぶしも兼ねて宙と軽く雑談してたけどネロはそろそろ解放されたかな?一応クラスメイトのうち元から会話があった相手とは話せたから帰ってもいいかなと思うんだけど。
さてと、ネロはどうかなっと・・・・・・見た感じは質問責めって言うより軽く話してるだけっぽいな。声かけてみて大丈夫そうなら帰ろう。もちろんネロがまだ話したいって言うなら残るけど。
「ネロ、最初の質問責めは終わったみたいだけどどうする?会話を続けるなら残ってもいいし疲れたなら帰ろうと思うけど」
いきなり話しかけて驚かせないようにある程度ゆっくり歩いてネロがこっちに気づいたあたりで耳元近くに行って小声で話しかけた。
ネロに話しかけたら女子の一部が謎に生暖かい視線を向けてるのが気になるけど今は放置でいいや。
「えっ、私は・・・・・・もう少しマオさんのクラスメイトだった方たちと話したいです」
「わかった。じゃあ僕は待ってるから少しと言わず気が済むまで話したらいいよ」
そう言ってまたクラスメイトの方に送り出した。やっぱり同年代の対等な話し相手って皆必要なんだろうな。ネロが王女って知っても女子は普通に敬語抜きで話しててネロもそれを気にすることなく時々笑顔になったりしながら話してる。
あぁ、僕の恋人が可愛い。この後ネロが話終わるまで眺めてても飽きなさそう。
・・・・・・そんなふうに完全に気を抜いてたから廊下側の壁際にいたのに廊下を走る音に全く気づかなかった。
バンッ!!
僕が背もたれ替わりにしてた壁から少し離れたところにある扉が音を立てて勢いよく開くとそこからアイリス姫が頭だけ出して部屋の中を見渡していた。
そして僕がそれに気づいて見ていたらバッチリ目が合ってそのまま、
「クジョウ様ッ!!」
走りながら名前を呼んで勢いそのままに突っ込んで来た。とりあえず重力魔法で相手の重力を軽減して自分の体を適当に強化したら近所の教会とそこに併設されてる孤児院のボランティアで鍛えた衝撃受け流し技術を使ってお互いにダメージなく受け止めた。
そして受け止めたアイリス姫がそのまま僕の背中に手を回して抱きつくと胸元に顔を埋めて泣き始めた。
「ちょっ!?姫様!?」
「うぅ・・・・・・クジョウ様が無事でよかったです。あと姫様ではなくアイリスと呼んでください」
「・・・・・・マオさん」
やばいやばいやばい。何がやばいってさっきまでクラスメイトと楽しそうに会話してたのにハイライトが消えた目でゆっくりこっちに歩いてくるネロがやばい。あと姫様はどさくさに紛れて名前呼びを要求して来た。
「ちょっ、姫様ほんと一旦離れて」
今の状況でこの体勢を継続するのは本当にやばいから離れてもらわないと最悪傷害案件も有り得る。身分自体も同格だから余計にタチが悪い。
「アイリスと━━━「アイリス一旦離れて!」むぅ、わかりましたよ」
「マオさん、その方はどなたですか?説明を要求します」
あっ、ふ~ん。もうこれダメみたいですね。マジで秋のこと笑えなくなりそうだ。
0
お気に入りに追加
172
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
お~❗
やっと幼馴染と再会できた~❗
再会と共に私も戻ってきました❗
そして、修羅場って秋の方だったか⁉
次はクラス全員と再会ですかね?
実は召喚されてから奈落に落ちるまでに生えた√分岐するフラグを放置したままな真緒くん((ボソッ…
すごくドキドキしました。これから先とても楽しみです。
おもしろかったです
更新楽しみに待ってます