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第一世界 2章 魔国編
19,真性チート『魔王』
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「はっはっ、そこまで言うならなら我に本気を出させるほど追い詰めてみろ。そうすれば力の2割程度なら出してやるかもしれないぞ?」
って言われたあと大きい方の訓練場に移動してそのまま模擬戦することになった。さすがに執事服のままはそもそも無理だしもし万が一やったりしたら確実にメリアさんの逆鱗に触れるから却下。
というわけで普段は騎士団の人達が着替えに使ってる部屋のひとつを借りて執事服から着替えて準備完了。
ダンジョンでは80層を超えたあたりから地上にある程度以上流通してる素材じゃ防具にしても役に立たないから服は魔力で編んだ形だけのものを着て基本吸血鬼の再生力に頼ってたから装備なんて無かったんだけど普通に冒険者するならそれじゃダメだって事で自由時間を使って装備を作ってたけどまさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったよ。
ダンジョンに来る前に買ったあのミスリル製ローブも50層を超えたあたりで本格的に性能が足りなくなって来てそれでもあの二人との繋がりの1つだからってことで使い続けようとしたけど修復が間に合わなくなって最終的にはドラゴンブレスを受けて消滅しちゃったし。あの時は短剣2本と一緒にマジックバッグに入れておけばよかったって本気で後悔した。
まぁそんなことがあって使ってなかった装備だけどダンジョンから出てからは冒険者しながら王国に戻るつもりだったから装備なしの冒険者なんて目立つってことで作った装備は奈落基準でまともに使える装備をって作ったから作った後にちょっとだけやらかしたって思った。
僕が息抜きに作成してたはずが自重がなくなって奈落基準でもかなり強力なものになった装備は白のシャツに黒のネクタイ、黒のスラックスを穿き黒轟を改造した地上で活動する上での基本武器である荒覇吐を腰に吊しその上から光を飲み込み欠片も反射しないほどの純黒に染った膝丈ほどのロングコートを身に纏っている。。
シャツは竜骨の骨粉で白く染めコートはエルダーリッチのローブを竜種の鱗を糸状にしたもので修復し形も弄ったもの。荒覇吐は黒轟の時に既にあった変形能力の種類を増やし本体に数多の魔物の爪や牙を合成しているためその切れ味はミスリルやオリハルコンすら切り裂くほど。
そして準備が終わり外に出ると観客席に騎士団や魔道師団、さらには文官や従者に貴族まで所狭しと座って模擬戦の開始を待ち望んでいるようだった。
「準備は終わったか?さぁ始めようか!」
この魔王様ってもしかして戦闘狂?なんか謁見の時とキャラ変わってる気がするんだけど?
そして魔族って言うだけあってそのイメージ通りの形の翼を背中から出して空中に飛びそこでこちらを見下ろしている。
そして、
パチンッ!
空中にいる魔王が指を鳴らすとその周囲に色とりどりの無数の魔法陣が詠唱もなく同時展開された。
そしてそこから様々な属性の魔法が雨のように降り注いだ。
「ふぅー、━━━━━━『風神雷神』『重金剛』『龍王鱗』『身体超強化』『肉体超強化』『天霊化』『万纏』"虹魔鎧"『肉体変化:龍』"部分変化"」
多重強化によって肉体が風雷を纏い、硬化し、体全体に龍の鱗が現れ、その肉体強度と身体能力が跳ね上がり、純白のオーラのようなものを纏い、虹色の魔力が鎧を形作り、腕と脚が龍のものに転じ、龍尾が生え、頭には角が背中からは龍翼が生える。
一定以下の威力の魔法は身に纏う白いオーラと虹色の鎧に阻まれそれらを突破するほどの威力の魔法も突破する時に落ちた威力では龍鱗に阻まれダメージを与えることは出来ない。
そのまま背中の翼で弾幕を突破し空中の魔王に肉薄すると勢いそのままに荒覇吐を振るう。
「ハァ━━━━ッ!!」
しかし飛翔の勢いをつけさらに各種スキルで強化された一閃は魔王、クルーエ陛下がいつの間にか持っていたどこから取り出したかわからない金属製の長杖によって受け止められてしまった。
「ッ!?」
荒覇吐は奈落の下のダンジョンの深層クラスの魔物の素材を使って強化してあるのにそれを金属製の杖で受け止めるとかこの魔王おかしいだろ?!
「ふむ、第3階梯までを適当にばらまいても当たったところでダメージには期待できないか。それなら少しばかりギアを上げるとしよう」
「『第1制限解除』」
そして一閃を弾いた魔王はそう呟くと背中から新たに2枚の翼を生やし杖を前に向けその杖の先端を中心に魔法陣を展開していく。そして展開した十二枚の魔方陣を杖の先端に全て集め重ね合わせる。
そして━━━━━━━━━
「古の災厄よ、遍く大地に惨禍を齎せしものよ、今ここに再び太古の災いを齎せ。世を形づくる12の力よ、その力を持って禍厄を調伏し我が力と変えよ━━━━━━『災厄の雨』」
十二枚の魔法陣が重なったそこから虹色の無数の魔弾が放たれる。それを"森羅万象"と"神眼"を使って見ると魔弾の一つ一つに莫大な魔力が込められていることが分かる。
ッ!?
これはさすがにさっきみたいに無理やり突破したりはできなさそうだな……
「『瘴気生成』『呪術:呪力変換』」
あのアジダハーカ(あとから聞いた話ではレプリカ)が放っていた瘴気と"呪術"で魔力を呪力に変換し四肢に纏う。
呪力という本来は生物に有害なものをなんの訓練も無しに使用しているため体が蝕まれるが吸血鬼になった原因であるエリクサー・ブラッド飲んだことで獲得し今は統合され"森羅万象"へと変化した"完全耐性"の効果でそれも中和、解呪される。
そして━━━━━━━━━━━
そちらが太古の災厄ならこちらは神すらも侵し呑む呪毒を開けよう。
「潜み蝕む呪いの毒刃。汝世を侵し呑む毒の呪い、その具現なり。
其はあらゆるものを喰らい蝕む毒の王
八百万の妖魔を呪いしその毒は神すら殺す
さぁ、今ここに、その呪いを解き放てっ!『神変鬼毒』」
詠唱が始まると地面からドロりとした赤黒い液体が滲みだしてきた。
荒覇吐を呪力で覆いその液体に浸すと刀身が液体で染まっていく。
「ハアァーッ!!」
そして毒によって染まった剣を今度は魔弾を限界まで引き付けてから体を捻って十字に振るう。
そして十字形の斬撃に触れた魔弾は全て溶けるように消える。
やっぱり制限されてるステータスでこれ使うと残りの魔力がほとんど無くなるな。次で決める。これを防がれたら僕の負けだ。
「次の攻撃が今の僕が出せる全力です━━━━『炎天下』『紫灰の焔』『魔力武器化』」
荒覇吐の毒は消え代わりに金と銀の焔と紫と灰色の焔が荒覇吐と同じ形を形取りそれらが重なる。そして4色の焔を纏った1振りの剣になったらそれはその状態でさらにそれぞれの焔が互いに混じり合い一つになる。
「焦がし、溶かし、焼き尽くせ。其は遍く全てをその火をもって灰燼と帰す灼熱。その熱、その光は大地を広く覆い尽くす━━━━━━『灼界・赫焉』」
重なり合い同化した4つの焔が純粋な破壊のエネルギーの奔流となり魔王の向けて放たれる。
「クフフ、確かにその魔法に込められた魔力は本来であれば圧倒的と言えるだろう、だがっ!
魔法陣の展開速度、正確性、我から見た魔法の威力、そして何より━━━━━━ッ!技術が足りない!戦闘技術も魔法技術もその見に宿す力を比べて圧倒的に足りぬわ!」
「我は魔王、魔法の王を名乗る者。我が全力のその一片を感じさせてくれる!『第2制限、第3制限共に解除』」
唐突にテンションの上がった陛下が高笑いしながら地球にいた頃見たネタに似たセリフを口走った直後背中の翼がさらに2対4翼増加し計4対8翼となった。
「我が力を知るがいい!『万象毀つ神討の鎖狼』『天焦がす却滅の赫火』」
そして陛下の詠唱によって顕現したのは地球のファンタジー創作によく出てくるフェンリルと言われてイメージするような巨狼と太陽が落ちてきたのかと見紛う程の大きさと莫大な熱量を誇るフェンリルを超える大きさの焔。
この規模の魔法を詠唱無しで発動するとかもう勇者とかこの世界に必要ないんじゃないかなぁ??
そして僕の放った赫焉と陛下の生み出した巨狼と巨焔の2つがぶつかる。赫焉はあの太陽のような焔に当たった瞬間に一瞬も拮抗することなく飲み込まれその次の瞬間には巨狼が既に目前まで迫っておりその前脚を振り上げた。
そして見えたのはそれまでで巨狼が脚を振り下ろそうとしたように見えた次の瞬間僕の視界は黒く染った。
ん、うーん……ここは?ベッドの上?確か僕はあの狼に叩かれて……
あー、何となく察した。これ気絶して治療院的なところか僕の部屋に運ばれたわ。でも模擬戦の時点で試験まであと6日弱しか無かったけど気絶して何日経ったのかな?場合によっては今すぐスキルまで使って魔国王都の試験会場まで行かないといけなくなるけど大丈夫?
「あっ、マオさん!はぁ……よかった……。身体に違和感等ありませんか?アマテラス様たちを呼んできますから動かず待っててくださいね!」
・・・・・・主人に世話される従者ってどうなの?
それにしてもさっきちらっと見えたネロ様の目元真っ赤になってたな……
そんなことを考えているとアマテラスに晴空とルキウスがこちらに来ているのが"森羅万象"の感知で分かった。
「あぁ、アマテラス、心配かけてごめ「マオくんっ!!」ちょっ?!もがっ!?」
そしてベッドの上で上半身を起こそうとすると突然アマテラスに思い切り抱きしめられた。
そしてその状態のまま頭を胸元に押し付けられて震えている。
あー……これは仕方ないかなー?さすがにアマテラスが神様とは言っても小さい頃から見てた相手が唐突に倒れたら心配してくれるか。
震えたままのアマテラスの桜色の髪を"万物創造"で櫛を作り出して梳くと徐々に震えは収まり頭を胸元から離し姿勢を反転させてもたれ掛かるように真緒のすぐ近くに座っている。
「~~~~~♪♪」
さっきまで震えていたのが嘘のように上機嫌で髪を梳かれるのもされるがままになっている。
「……私たちはお邪魔だった……かな?」
「ふむ、目が覚めると同時にこんな所にいて困惑してるかと思ったが……その様子だとこの場所についての説明は要らなそうだな?」
…………ハハハ、すぐわかるくらい近くに2人はいないと思ってアマテラスを宥めてたらたらガッツリ見られてらぁ。
そしてルキウス、この場所についての説明?ってことはここは城の一室とかじゃない?確かによく周りに目を凝らしてみたら窓も無いし壁みたいなのも見えない。視界が暗転して次に目を開けたら知らない場所だったって召喚された時と神界に召喚された時以来だな。
でもネロ様がいたってことは少なくとも魔国内だろうし……知ってるっぽいルキウスに聞くか。
あれからルキウスに聞いた話によるとここは完全に地球で世界規模で人気な某漫画に出てくるあの部屋だわ。ここは外の10倍の速度で時間が流れていてそれでいながら肉体、精神ともに老化は無いって。
しかもルキウスが生前修練用に作った魔道具でこれは遺産って言うんだから驚いた。
僕の視界が暗転したあとは大急ぎでここに連れてこられたらしい。なんでか聞いたらなんでもあの狼の放った最後の攻撃によって僕の左半身が文字通り消し飛んだらしくて騒然となったところで僕の切断面から再生してるのに気づいてここに運ばれたらしい。
一応僕自身に常時防御系の魔法はかけてるんだけど無意味だったか。それに半身が吹き飛んだなら吸血鬼の特性で再生力がずば抜けていると言ってもあんな風になるよね。僕もアマテラスと立場が逆でこんなことになったら同じことすると思うし。
そして見たところ完治してるっぽいんだけど何日間寝てたのかな?
「僕が模擬戦の後目が覚めるまでどれくらいの時間がかかった?」
「外で6時間くらい、今ここは外と比べて時間の流れが10倍速になってるから実質3日経ってないくらい」
3日ないくらいか、結構寝てたんだな……
「それとネロちゃんはここで3日間ずっと真緒の傍についてて心配してたよ。もちろんアマテラスもね。さっき真緒起きた時はちょうど外との定時連絡の時間だったから外に出てたけど」
そうなのか……後でネロ様にもちゃんと謝罪と感謝を伝えておかないとな。
そして外で6時間なら試験日まであと6日まるごと残ってる。今日は一応休んで明日から仕上げに取り掛かるとしよう。
って言われたあと大きい方の訓練場に移動してそのまま模擬戦することになった。さすがに執事服のままはそもそも無理だしもし万が一やったりしたら確実にメリアさんの逆鱗に触れるから却下。
というわけで普段は騎士団の人達が着替えに使ってる部屋のひとつを借りて執事服から着替えて準備完了。
ダンジョンでは80層を超えたあたりから地上にある程度以上流通してる素材じゃ防具にしても役に立たないから服は魔力で編んだ形だけのものを着て基本吸血鬼の再生力に頼ってたから装備なんて無かったんだけど普通に冒険者するならそれじゃダメだって事で自由時間を使って装備を作ってたけどまさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったよ。
ダンジョンに来る前に買ったあのミスリル製ローブも50層を超えたあたりで本格的に性能が足りなくなって来てそれでもあの二人との繋がりの1つだからってことで使い続けようとしたけど修復が間に合わなくなって最終的にはドラゴンブレスを受けて消滅しちゃったし。あの時は短剣2本と一緒にマジックバッグに入れておけばよかったって本気で後悔した。
まぁそんなことがあって使ってなかった装備だけどダンジョンから出てからは冒険者しながら王国に戻るつもりだったから装備なしの冒険者なんて目立つってことで作った装備は奈落基準でまともに使える装備をって作ったから作った後にちょっとだけやらかしたって思った。
僕が息抜きに作成してたはずが自重がなくなって奈落基準でもかなり強力なものになった装備は白のシャツに黒のネクタイ、黒のスラックスを穿き黒轟を改造した地上で活動する上での基本武器である荒覇吐を腰に吊しその上から光を飲み込み欠片も反射しないほどの純黒に染った膝丈ほどのロングコートを身に纏っている。。
シャツは竜骨の骨粉で白く染めコートはエルダーリッチのローブを竜種の鱗を糸状にしたもので修復し形も弄ったもの。荒覇吐は黒轟の時に既にあった変形能力の種類を増やし本体に数多の魔物の爪や牙を合成しているためその切れ味はミスリルやオリハルコンすら切り裂くほど。
そして準備が終わり外に出ると観客席に騎士団や魔道師団、さらには文官や従者に貴族まで所狭しと座って模擬戦の開始を待ち望んでいるようだった。
「準備は終わったか?さぁ始めようか!」
この魔王様ってもしかして戦闘狂?なんか謁見の時とキャラ変わってる気がするんだけど?
そして魔族って言うだけあってそのイメージ通りの形の翼を背中から出して空中に飛びそこでこちらを見下ろしている。
そして、
パチンッ!
空中にいる魔王が指を鳴らすとその周囲に色とりどりの無数の魔法陣が詠唱もなく同時展開された。
そしてそこから様々な属性の魔法が雨のように降り注いだ。
「ふぅー、━━━━━━『風神雷神』『重金剛』『龍王鱗』『身体超強化』『肉体超強化』『天霊化』『万纏』"虹魔鎧"『肉体変化:龍』"部分変化"」
多重強化によって肉体が風雷を纏い、硬化し、体全体に龍の鱗が現れ、その肉体強度と身体能力が跳ね上がり、純白のオーラのようなものを纏い、虹色の魔力が鎧を形作り、腕と脚が龍のものに転じ、龍尾が生え、頭には角が背中からは龍翼が生える。
一定以下の威力の魔法は身に纏う白いオーラと虹色の鎧に阻まれそれらを突破するほどの威力の魔法も突破する時に落ちた威力では龍鱗に阻まれダメージを与えることは出来ない。
そのまま背中の翼で弾幕を突破し空中の魔王に肉薄すると勢いそのままに荒覇吐を振るう。
「ハァ━━━━ッ!!」
しかし飛翔の勢いをつけさらに各種スキルで強化された一閃は魔王、クルーエ陛下がいつの間にか持っていたどこから取り出したかわからない金属製の長杖によって受け止められてしまった。
「ッ!?」
荒覇吐は奈落の下のダンジョンの深層クラスの魔物の素材を使って強化してあるのにそれを金属製の杖で受け止めるとかこの魔王おかしいだろ?!
「ふむ、第3階梯までを適当にばらまいても当たったところでダメージには期待できないか。それなら少しばかりギアを上げるとしよう」
「『第1制限解除』」
そして一閃を弾いた魔王はそう呟くと背中から新たに2枚の翼を生やし杖を前に向けその杖の先端を中心に魔法陣を展開していく。そして展開した十二枚の魔方陣を杖の先端に全て集め重ね合わせる。
そして━━━━━━━━━
「古の災厄よ、遍く大地に惨禍を齎せしものよ、今ここに再び太古の災いを齎せ。世を形づくる12の力よ、その力を持って禍厄を調伏し我が力と変えよ━━━━━━『災厄の雨』」
十二枚の魔法陣が重なったそこから虹色の無数の魔弾が放たれる。それを"森羅万象"と"神眼"を使って見ると魔弾の一つ一つに莫大な魔力が込められていることが分かる。
ッ!?
これはさすがにさっきみたいに無理やり突破したりはできなさそうだな……
「『瘴気生成』『呪術:呪力変換』」
あのアジダハーカ(あとから聞いた話ではレプリカ)が放っていた瘴気と"呪術"で魔力を呪力に変換し四肢に纏う。
呪力という本来は生物に有害なものをなんの訓練も無しに使用しているため体が蝕まれるが吸血鬼になった原因であるエリクサー・ブラッド飲んだことで獲得し今は統合され"森羅万象"へと変化した"完全耐性"の効果でそれも中和、解呪される。
そして━━━━━━━━━━━
そちらが太古の災厄ならこちらは神すらも侵し呑む呪毒を開けよう。
「潜み蝕む呪いの毒刃。汝世を侵し呑む毒の呪い、その具現なり。
其はあらゆるものを喰らい蝕む毒の王
八百万の妖魔を呪いしその毒は神すら殺す
さぁ、今ここに、その呪いを解き放てっ!『神変鬼毒』」
詠唱が始まると地面からドロりとした赤黒い液体が滲みだしてきた。
荒覇吐を呪力で覆いその液体に浸すと刀身が液体で染まっていく。
「ハアァーッ!!」
そして毒によって染まった剣を今度は魔弾を限界まで引き付けてから体を捻って十字に振るう。
そして十字形の斬撃に触れた魔弾は全て溶けるように消える。
やっぱり制限されてるステータスでこれ使うと残りの魔力がほとんど無くなるな。次で決める。これを防がれたら僕の負けだ。
「次の攻撃が今の僕が出せる全力です━━━━『炎天下』『紫灰の焔』『魔力武器化』」
荒覇吐の毒は消え代わりに金と銀の焔と紫と灰色の焔が荒覇吐と同じ形を形取りそれらが重なる。そして4色の焔を纏った1振りの剣になったらそれはその状態でさらにそれぞれの焔が互いに混じり合い一つになる。
「焦がし、溶かし、焼き尽くせ。其は遍く全てをその火をもって灰燼と帰す灼熱。その熱、その光は大地を広く覆い尽くす━━━━━━『灼界・赫焉』」
重なり合い同化した4つの焔が純粋な破壊のエネルギーの奔流となり魔王の向けて放たれる。
「クフフ、確かにその魔法に込められた魔力は本来であれば圧倒的と言えるだろう、だがっ!
魔法陣の展開速度、正確性、我から見た魔法の威力、そして何より━━━━━━ッ!技術が足りない!戦闘技術も魔法技術もその見に宿す力を比べて圧倒的に足りぬわ!」
「我は魔王、魔法の王を名乗る者。我が全力のその一片を感じさせてくれる!『第2制限、第3制限共に解除』」
唐突にテンションの上がった陛下が高笑いしながら地球にいた頃見たネタに似たセリフを口走った直後背中の翼がさらに2対4翼増加し計4対8翼となった。
「我が力を知るがいい!『万象毀つ神討の鎖狼』『天焦がす却滅の赫火』」
そして陛下の詠唱によって顕現したのは地球のファンタジー創作によく出てくるフェンリルと言われてイメージするような巨狼と太陽が落ちてきたのかと見紛う程の大きさと莫大な熱量を誇るフェンリルを超える大きさの焔。
この規模の魔法を詠唱無しで発動するとかもう勇者とかこの世界に必要ないんじゃないかなぁ??
そして僕の放った赫焉と陛下の生み出した巨狼と巨焔の2つがぶつかる。赫焉はあの太陽のような焔に当たった瞬間に一瞬も拮抗することなく飲み込まれその次の瞬間には巨狼が既に目前まで迫っておりその前脚を振り上げた。
そして見えたのはそれまでで巨狼が脚を振り下ろそうとしたように見えた次の瞬間僕の視界は黒く染った。
ん、うーん……ここは?ベッドの上?確か僕はあの狼に叩かれて……
あー、何となく察した。これ気絶して治療院的なところか僕の部屋に運ばれたわ。でも模擬戦の時点で試験まであと6日弱しか無かったけど気絶して何日経ったのかな?場合によっては今すぐスキルまで使って魔国王都の試験会場まで行かないといけなくなるけど大丈夫?
「あっ、マオさん!はぁ……よかった……。身体に違和感等ありませんか?アマテラス様たちを呼んできますから動かず待っててくださいね!」
・・・・・・主人に世話される従者ってどうなの?
それにしてもさっきちらっと見えたネロ様の目元真っ赤になってたな……
そんなことを考えているとアマテラスに晴空とルキウスがこちらに来ているのが"森羅万象"の感知で分かった。
「あぁ、アマテラス、心配かけてごめ「マオくんっ!!」ちょっ?!もがっ!?」
そしてベッドの上で上半身を起こそうとすると突然アマテラスに思い切り抱きしめられた。
そしてその状態のまま頭を胸元に押し付けられて震えている。
あー……これは仕方ないかなー?さすがにアマテラスが神様とは言っても小さい頃から見てた相手が唐突に倒れたら心配してくれるか。
震えたままのアマテラスの桜色の髪を"万物創造"で櫛を作り出して梳くと徐々に震えは収まり頭を胸元から離し姿勢を反転させてもたれ掛かるように真緒のすぐ近くに座っている。
「~~~~~♪♪」
さっきまで震えていたのが嘘のように上機嫌で髪を梳かれるのもされるがままになっている。
「……私たちはお邪魔だった……かな?」
「ふむ、目が覚めると同時にこんな所にいて困惑してるかと思ったが……その様子だとこの場所についての説明は要らなそうだな?」
…………ハハハ、すぐわかるくらい近くに2人はいないと思ってアマテラスを宥めてたらたらガッツリ見られてらぁ。
そしてルキウス、この場所についての説明?ってことはここは城の一室とかじゃない?確かによく周りに目を凝らしてみたら窓も無いし壁みたいなのも見えない。視界が暗転して次に目を開けたら知らない場所だったって召喚された時と神界に召喚された時以来だな。
でもネロ様がいたってことは少なくとも魔国内だろうし……知ってるっぽいルキウスに聞くか。
あれからルキウスに聞いた話によるとここは完全に地球で世界規模で人気な某漫画に出てくるあの部屋だわ。ここは外の10倍の速度で時間が流れていてそれでいながら肉体、精神ともに老化は無いって。
しかもルキウスが生前修練用に作った魔道具でこれは遺産って言うんだから驚いた。
僕の視界が暗転したあとは大急ぎでここに連れてこられたらしい。なんでか聞いたらなんでもあの狼の放った最後の攻撃によって僕の左半身が文字通り消し飛んだらしくて騒然となったところで僕の切断面から再生してるのに気づいてここに運ばれたらしい。
一応僕自身に常時防御系の魔法はかけてるんだけど無意味だったか。それに半身が吹き飛んだなら吸血鬼の特性で再生力がずば抜けていると言ってもあんな風になるよね。僕もアマテラスと立場が逆でこんなことになったら同じことすると思うし。
そして見たところ完治してるっぽいんだけど何日間寝てたのかな?
「僕が模擬戦の後目が覚めるまでどれくらいの時間がかかった?」
「外で6時間くらい、今ここは外と比べて時間の流れが10倍速になってるから実質3日経ってないくらい」
3日ないくらいか、結構寝てたんだな……
「それとネロちゃんはここで3日間ずっと真緒の傍についてて心配してたよ。もちろんアマテラスもね。さっき真緒起きた時はちょうど外との定時連絡の時間だったから外に出てたけど」
そうなのか……後でネロ様にもちゃんと謝罪と感謝を伝えておかないとな。
そして外で6時間なら試験日まであと6日まるごと残ってる。今日は一応休んで明日から仕上げに取り掛かるとしよう。
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アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
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