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 ギルドの依頼も一人でできることが多く、声が出なくてもどうにかなっていた。

 はじめは戸惑うこともあったが、何とか依頼をこなしていた。

 家出してから早や一か月が過ぎようとしていたが、ここまで探しに来る気配はない。

 「頑張ってるか?」

 ギルドマスターに声を掛けられ俺は頷いた。

 始めのうちに声が出ないことは伝えてあるので返事をしなくても大丈夫だ。

 ただ初めて会う人は受付嬢の仲介は毎回なのはこれも名物と化していた。

 ようやくEランクからDランクになったのでそれなりに依頼内容もランクアップしている。

 その分報酬もいいのだが、ただ魔物も強くなっているので要注意だ。

 「すまんが上まで来てくれないか?」

 「……」

 頷きギルドマスターの後に続いた。

 ギルドの中には俺が貴族の出と言うのは数人知っているが、ギルドマスターには正直に話しているので、もしかしたらギルドに俺を探すような依頼が来たのかもしれない。

   覚悟を決めてギルドマスターの部屋に入ると、そこにはまさかの姉さまと兄さまがいた。

 「やはり……」

 「お人が悪いですよ」

 「……名前まで変えてギルドにきて登録した。
 俺にとって彼も家族の一員だ」

 「……」

 「まさか家出するとは思わなかったわ」

 「そんなに王子たちとの合同結婚が嫌だったんだね」

 俺は合同結婚に首を傾げた。

 合同結婚に俺は関係ないと思うのだが、なぜ俺の方を見るのかわからない。

 「……もしかしてわかっていなかったのか」

 「ローズ落ち着いて聞いてね。
 王子たちが開発している魔道具が完成したの、ちゃんと検証実験もやったわ」

 「この国は同性同士で結婚したがる者が多いので実験に協力してくれる人には困らなかったんだが、見事成功して子供も生まれた」

 「……」

 「あなたが寝ているときに魔道具を装着したらしいのだけど、そろそろ体と馴染むころだろうと言っていた」

 「そのために結婚式を速めていたんだが、まさかその間に逃げられているとは思わなかった」

 いつの間にそんなものを人に埋め込んだんだ!

 知らない間に着実に逃げ道を塞がれているのは気のせいなんかじゃないと思う。

 それに逃げたのはそれだけじゃない。

 「待ってくれ、彼が逃げたのは実家のメイドが飯を持ってこなくなったのも原因だ」

 「なんですって!」

 「それは本当かい?」

 俺が頷くと、二人はその場を立ちまた来ると言って帰っていった。

 本当に嵐のような人たちだと思うよ。

 その日からちょくちょくと誰かしら来るようになり、一緒に依頼をこなしたりまったりしたりして過ごしているのだけど王子たちがこんなところ来ても大丈夫なのか?

 
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