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 ローズは一月目を覚まさなかった。

 体の傷は癒えたが精神的にボロボロになっており、まだ癒えていないのだ。

 「まだ目をさまさないのね」

 「無理もない、ゆっくりと休ませてやろう」

 「小さいころからこの子だけなぜこんな目に合うのかしら」

 「わからない、でもそれでも守ってあげなきゃ」

 毎日毎日誰か来ては寝ているローズに話しかけていた。

 それから更に一月が過ぎようとした時ローズは目を覚ました。

 「……」

 ガッシャン

 ローズは割れた音の方をむくとメイドが持っていた盆を落としたようだ。

 「ローズ様が目を覚まされました」

 落とした盆には目もくれず、廊下に出ると大きな声で叫んだ。

 ドタバタと駆け出す音がしたかと思うと、部屋の中に駆け込んできた。

 「ローズ……よかった」

 「目を覚まさないからびっくりしたよ」

 「……」

 ローズに抱き着きオイオイ泣いているロディは何度も何度も泣きながら謝っていた。

 「……」

 その側でリディはロディの背中を撫でていた。

 ようやくひとしきり泣き、落ち着いたのかローズの異変に気付いた。

 「さっきから声出してないけど……」

 「声でないのか?」

 ローズは頷き、悲しそうに俯いてしまった。

 「誰か医師を読んでくれ」

 「もうきてますよ。
 どれようやく目を覚ますことができましたかな?」

 医師は魔法でローズの体を調べ異常がないことを確認する。

 「やはり、精神的に辛かったのでしょう。
 今まで優しかった侍女や兵士に暴力を振るわれるんですからね。
 このまま、心穏やかに過ごせばもしかしたら声がでるかもしれませんね」

 「そんな~ ローズのかわいい声が聴けないなんてショックすぎる」

 「かわいい声でおねだりさせたかったのに」

 「あなた方は、いったい何をさせようとしているんですか!
 ましてやなんですか、ローズ様は男の子なのになぜ体内に子宮があるんです」

 「本当ですか!」

 「びっくりですよ。
 小さい頃はありませんでしたから、最近ですね」

 「王子たちの願望が実現したみたいだな」

 「まさか男でも子を授かるための魔道具ですか?」

 「アーリー王子とルカ王子はローズのことが好きすぎて自ら魔道具の政策を買って出たんだ」

 「成功したのですわね」

 「同性愛者にとって画期的な魔道具だ」

 まさかローズの体に施していたとは驚きだ。

 「魔道具が体に馴染むのもあり体の休息が必要だったのですね」

 名実ともにローズは子を宿すことができるようになった。
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