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本編

謎の丸薬

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 結果から言うと、私が触れているとランバートさ悪夢を視ない。眠ると魔力は確実に回復する。その二つだけはハッキリした。王様とお義父様に報告した時、私が視た映像の事も伝えある。
 証拠もない状況だけど無闇に調べるよりはマシだろうと、私が視たモノを元に数人に絞った調査が始まった。


 限界がきてたのに無理していたランバートさんは、今はベッドで休んでいる。最初、彼は殿下の鍛練をすると言っていたけど、お義父様の魔法で強制的に眠らされていて、私は目を覚ました時の見張り役。そして、私は回復魔法で丸薬を作ろうとしていた。
 王太子殿下で何度か練習したけど、効果は全体回復だけど、効果は低めでムラがある。怪我や軽い風邪くらいなら治る程度だけど、今のランバートさんには少しでも回復の可能性があるなら試したいと思っている。

 静かな部屋の中で私は、目を閉じて両手を合わせて魔力を集める。どうか彼が回復します様にと強く願いながら、丸薬を出来るだけハッキリと思い浮かべる。スーッと魔力が身体から抜けて手の中に集まり渦を巻くと、小さく小さく縮んで止まる。ゆっくり目を開けて手の中を見ると今までとは違う丸薬が出来ていた。

「……何この色……あれ?失敗したかな……」

 殿下の回復用に作った時は白かった丸薬が、何故か虹色に輝いている。どう見ても、これは……うん、人間が口に入れるモノじゃないわ……やり直そう。
 オーウェンさんが森から戻ってきたら鑑定して貰うと思ってポーチから手のひらに収まる程小さな入れ物を出すと、虹色の丸薬を入れて蓋を閉める。肩を回して気合いを入れると一からやり直す為に、再び目を閉じて手の中に魔力を集め始めた。


 その後、何度か丸薬を作ったけど、何故か全て虹色。どうして虹色になるのか原因は分からないまま、虹色の丸薬が入れ物の中に貯まっていく。これ以上は止めて、魔具の修理しよう。

「……う……ん?イリーナ?」

 掠れた声が聞こえて視線を向けると、ランバートさんが目を覚ましてベッドから身体を起こしていた。強制的とはいえ少し寝たから顔色は、昨日よりは良くなったみたい。

「水、飲みますか?」

 頷いた彼に水の入ったコップを渡すと、一気に飲み干していた。

「……あぁ、師匠に久しぶりにヤられたな」

「久しぶりにって、前にも魔法で眠らされたんですか?」

 ベッドから降りようとする彼を押し留めて、話を聞くと修行中はよく寝かされたらしい。休憩もせずに朝から剣や魔法の稽古をして、声を掛けても止めなかった時に後ろから魔法で眠らされていたとか……ちょっと、若い頃のランバートさんを見たかった。

「その箱は?」

 彼の視線の先にはテーブに置かれた小さな入れ物。あ……失敗作、片付けてなかった。

「これ、回復魔法の練習していたんですが、どうも失敗したみたいで変なモノが出来ちゃいました」

 笑って誤魔化してポーチに入れようとしてけど、見せて欲しいと言われて渋々渡した。入れ物の蓋を開けた彼が、中身を見て固まった。だから、失敗したって言ったでしょ!!その色は可笑しい!
 どう見ても食べて良いモノじゃないのに、彼は無言で一粒摘まむと口の中に放り込んだ。

「えぇぇ!!吐いて!今すぐ吐き出して!!」

 手を伸ばした時にはゴクンと飲み込む音が聞こえた。だから!何で飲んじゃうかなぁ!?やっぱり天然なの?絶対、そうよね!

「……旨い。お腹空いたから全部、食べて良いか?」
 
「そうじゃない!どう見ても可笑しな色でしょ!ダメですよ!!」

「平気、平気」

 笑いながらそう言った彼は、水と一緒に虹色の奇妙な丸薬を全て飲んで満足したのか、もう少し寝ると言ってベッドに潜り込んだ。ウソでしょう……丸薬、十個あったのに……本当に全部、飲んじゃった……

「もう……気分が悪くなったら言って下さいね」

「あぁ、分かった」

「今日は、ずっと傍に居ますから」

 ありがとうって言った彼の手を、私が握り締めると満面の笑みを浮かべた。

「具合が悪い時……誰かに手を握って貰うのは初めてだな……思ってた以上に嬉しいよ」

「……早く寝て下さい」

 真っ直ぐに見詰められて恥ずかしくなった私は、頬を膨らまして顔を背けた。クスクスと小さな笑い声が聞こえた後、お休みと言った彼は直ぐに眠りに落ちていった。





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