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本編
寂しい夜
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師匠が寝た後、私は魔具の修理を続けた。フレームが折れない様に、魔力を流しながら少しずつ歪みを直す。神経を使う作業を続けて数時間。気が付くと、窓の外は暗くなり始めていた。その間も師匠は、眠り続けていて、室内はとても静かだった。
フレームのネジを全て新しい物に交換して修理は完了。あとは、ランバートさんが帰ってくるのを待つだけ。窓の外は強い風が吹いていて、木々が時々、大きく揺れる。部屋のドアをノックする音が響いて、返事をすると侍女の服を着た女性が入ってきた。
「国王殿下から、夕食には間に合わないとのご連絡がございました。お食事は、如何されますか?」
王様が来ないなら、この部屋で食べたいと言ってみると了承された。直ぐに持ってくると言って侍女さんが出ていく。師匠声を掛けて起こすと、ボーとしていたが昼間よりは身体が軽いと言っていた。
「そうか、ナダルは忙しいのか」
王様が夕食に来ない事を伝えている間に、ベッドの横で食べれる様にテーブルをつけて食事が並べられる。パンにサラダ、スープにメインは魚の蒸し焼き。体調の悪い師匠用にはリゾットとフルーツが並べられる。思ったより庶民的なご飯に驚いた。
「ご飯が普通だ」
「お前、どんな料理を想像してたんだ?」
「え~と……もっと派手で豪華?」
師匠にアホかと言われた。パーティーでも無い限り、豪華な料理は出ないらしい。毎日、そんなの食べてたら病気になると言われて納得する。久しぶりに師匠と二人で、他愛ない会話をしながら食事をしているとランバートさんが気になった。彼は一人でちゃんとご飯を食べているのかな?
「疲れたか?手が止まってるぞ」
師匠に言われてハッとする。慌てて首を横に振ると、再び食べ始める。食事が終わると侍女さんが、食器を片付けてお茶をいれてくれた。優しい香りのハーブティーを飲みながら、無意識に視線が窓の外に向かう。
「修理で疲れただろう。それ飲んだら、風呂入って寝ろ」
「……そうですね……お風呂って、何処にありますか?」
師匠の言葉に無意識に答える。侍女さんが案内してくれるから、ついて行くだけで良いと言われた。お茶が飲み終わるタイミングで、また侍女さんがノックして部屋に入ってくる。貴族の生活って、こんななの?何でもしてくれるけど、監視されてるみたいで居心地が悪い。
さっさとお風呂に入って寝る事にした私が、お風呂上がりに案内された部屋は客間らしい。落ち着きある内装の部屋で、一人ベッドに腰掛けるとドッと疲れが押し寄せる。ボーと室内を見ていると、外で動物が鳴いた。
「……ランバートさん……何処にいるのかな?」
口から零れた言葉に自分が驚く。両親が亡くなってから今まで、師匠と二人だったし一人で留守番なんて何度もあった。だけど彼がいないだけで寂しいと感じた。
寂しいなぁ……静か過ぎて違和感しかないよ。
頭に浮かぶのは、賑やかな食事の時間や直ぐに人の髪を触って遊ぶ姿。たった数日間、一緒に居ただけなのに、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
でも、何も出来ない私は、ただ無事に帰ってくる事を祈るしか出来ない。
フレームのネジを全て新しい物に交換して修理は完了。あとは、ランバートさんが帰ってくるのを待つだけ。窓の外は強い風が吹いていて、木々が時々、大きく揺れる。部屋のドアをノックする音が響いて、返事をすると侍女の服を着た女性が入ってきた。
「国王殿下から、夕食には間に合わないとのご連絡がございました。お食事は、如何されますか?」
王様が来ないなら、この部屋で食べたいと言ってみると了承された。直ぐに持ってくると言って侍女さんが出ていく。師匠声を掛けて起こすと、ボーとしていたが昼間よりは身体が軽いと言っていた。
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王様が夕食に来ない事を伝えている間に、ベッドの横で食べれる様にテーブルをつけて食事が並べられる。パンにサラダ、スープにメインは魚の蒸し焼き。体調の悪い師匠用にはリゾットとフルーツが並べられる。思ったより庶民的なご飯に驚いた。
「ご飯が普通だ」
「お前、どんな料理を想像してたんだ?」
「え~と……もっと派手で豪華?」
師匠にアホかと言われた。パーティーでも無い限り、豪華な料理は出ないらしい。毎日、そんなの食べてたら病気になると言われて納得する。久しぶりに師匠と二人で、他愛ない会話をしながら食事をしているとランバートさんが気になった。彼は一人でちゃんとご飯を食べているのかな?
「疲れたか?手が止まってるぞ」
師匠に言われてハッとする。慌てて首を横に振ると、再び食べ始める。食事が終わると侍女さんが、食器を片付けてお茶をいれてくれた。優しい香りのハーブティーを飲みながら、無意識に視線が窓の外に向かう。
「修理で疲れただろう。それ飲んだら、風呂入って寝ろ」
「……そうですね……お風呂って、何処にありますか?」
師匠の言葉に無意識に答える。侍女さんが案内してくれるから、ついて行くだけで良いと言われた。お茶が飲み終わるタイミングで、また侍女さんがノックして部屋に入ってくる。貴族の生活って、こんななの?何でもしてくれるけど、監視されてるみたいで居心地が悪い。
さっさとお風呂に入って寝る事にした私が、お風呂上がりに案内された部屋は客間らしい。落ち着きある内装の部屋で、一人ベッドに腰掛けるとドッと疲れが押し寄せる。ボーと室内を見ていると、外で動物が鳴いた。
「……ランバートさん……何処にいるのかな?」
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寂しいなぁ……静か過ぎて違和感しかないよ。
頭に浮かぶのは、賑やかな食事の時間や直ぐに人の髪を触って遊ぶ姿。たった数日間、一緒に居ただけなのに、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
でも、何も出来ない私は、ただ無事に帰ってくる事を祈るしか出来ない。
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