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本編

師匠が視たモノ

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 私の涙が止まると、王様が私にも座る様に言った。師匠が寝ているベッドの横に、椅子を二つ並べて座ると王様が師匠の体調に付いて説明してくれた。

「医者の診査結果は、過労と魔眼を抑えていた反動ですよ」

「「過労?」」

 師匠とは無縁の様な言葉に私と師匠が声を揃えて反応すると、王様は仲が良いねと笑いなが話を続けた。

「兄上も歳なんですから、旅の計画はもっと余裕あるものにするべきでしたね」

 旅の疲れと緊張。それに加えて魔眼の反動。その疲れが全て重なった結果、倒れたらしい。

「古代魔具兵器の復活」

 王様が聞きなれない言葉を言った途端、師匠の肩が大きく揺れた。古代魔具兵器って何?兵器って魔石の武器使用は、随分前に世界各国共通で禁止になったはずじゃなかったの?

「条約を無視してマガユダが遺跡から発掘した古代の魔具。復活させるには彼女の力が必要なのですね?」

 そこまで言った王様が、黙って師匠を見詰める。師匠がため息を吐いたと同時に、目を開いて遠くに視線を向けた。

「……ある日、突然、魔眼が反応した。リナと出会った夜と同じだった……」

 魔眼の力で視たのは古代魔具兵器が街を焼き逃げ惑う人々。復活した古代の兵器は、遠くから攻撃出来る為に騎士団も市民の避難誘導ぐらいしか出来ない。そんな惨事の光景と古代の兵器の横で、魔力を注いでいる私。魔眼で見えた私には奴隷の首輪が付けられていたらしい。

「多分……複数ある未来の一つだろう……リナの側に俺は居なかった」

「兄上が急いだ理由は、それだけですか?」

 あぁと小さな一言を言うと、疲れたのか背中をクッションに預けて上を見上げた。

「未来を変える為には、俺の力だけでは無理だ。だから、ランバートを呼んだ」

 ランバートさんを呼んだと聞いて、王様の眉が動く。彼を呼ぶ事に何かあるの?

「その上で私にも連絡をすると言う事は、何か問題でも有りましたか?」

「体調が悪い事に気付いたからな……魔具が無い今、いつ限界が来ても可笑しくないしな」

 師匠の言い方だと、体調が悪くなったのは最近みたい。でも、魔具の修理なら自分でも出来るのに、そう思ったら理由が知りたくなって、素直に師匠に訊ねる事にした。

「何故、自分で修理しなかったのですか?」

「材料に問題があるだろうが。ドラゴンの鱗は簡単には見付からないぞ」

 ランディーを呼び戻さないとなんて言っている師匠の顔の前で、私は大きな音をたてて手を叩いた。その音に驚いた師匠が黙る。

「何時まで後ろ向きでいるつもりですか?鱗ならありますよ!」

「はぁ?同じドラゴンの鱗を二枚も探すなんて……」

 全く信じない師匠に、ランバートさんの剣を触って見えた映像と二人の会話を話した。わー、師匠と王様が同じ顔で驚いてる。並ぶとそっくりだなぁ。

「ランバートさんが剣を作った方に会いに行きました。彼の帰りを待ちましょう」

 私がそう言うと、師匠が渋々、頷いてくれた。

「ほら、師匠は身体を休めて回復を優先して下さい。ランバートさんが帰ってきた時、寝てたら怒られますよ」

「……わかった」

 師匠が眉間にシワを寄せて、凄く嫌そうな表情でベッドに横になる。クッションを自分で動かして高さを調整すると、大きく息を吐いた。

「……リナ」

「はい、師匠」

「黙ってて悪かった……あとは頼んだぞ」

 ニヤリと笑う師匠に、私が大きな声で返事をすると師匠は目を閉じた。無理に起きていたのか、直ぐに師匠から寝息が聞こえてくる。それでも最初よりは顔色が良くなった気がした。

「君も無理はしないことだ。私は仕事に戻るが、夕食には帰ってくるよ」

「はい、ありがとうございます」

 ヒラリと手を振った王様は、静かに部屋を出て行った。私は暫くベッドの横で師匠を見詰めていたけど、自分の魔力の回復を確認して修理に戻った。フレームの歪みを直すだけなら今日中に終わるかな?

さぁ、頑張ろう!

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