[完結]アタンなんなのって私は私ですが？

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　呆然とされるハンソン令息の前でしたが、事実ははっきりさせた方が良いと考え全てを話しました。当家に送られてきた手紙の内容や我が家の婿養子になる為の打診だった事。そして、次期当主の私より成績が悪い事も。私の話が終わるとハンソン令息は顔を真っ白にして震えております。

「長男で一人息子の私が婿養子だと……」

「ご存じなかったのですか？打診の時に届いた手紙には、ご本人も納得されていると記載されておりましたが」

「し……知らない。私が婿養子なら我が家は誰が……」

　私の話を聞いても信じられないのか、首を横に振って震えるハンソン子息に殿下は呆れた感情を隠す事なくハンソン家の後継ぎの名前を仰いました。

「マデラーだ。遠縁の家から天才と呼ばれる子供を養子に迎えただろう」

「あ、アイツは！ただの田舎者だ!!そんな！そんな事が!!」

「黙れ。彼の努力を嘲笑い勉強しない貴様に文句を言う資格はない」

「グッ……クソ！」

　殿下の言葉を聞いてこれ以上、何を言っても無駄だと悟ったのかやっとハンソン子息は何も言わなくなりましたわ。でも、その横で凄い顔で私を睨んでる人が居ますけどね。ウォーレ令嬢の表情を見て私は確信しました。彼女はハンソン子息が後取りと勘違いして誘惑したのでしょう。でも思惑が外れて怒りを私に向けているのかもしれませんね。
　私はただ、何も言わずにウォーレ令嬢を見詰め返し笑いかけました。きっと彼女はこれで怒るはずです。

「何なのよアンタ！同じ男爵の癖に王子の横に座って、しかも、格上からの話を断ったなんて、そんな事ある訳ないじゃない!!」

　ウォーレ令嬢の叫びはきっと部屋の外まで聞こえたでしょう。それほど大きな声でした。これが肩で息をする彼女の本心なのでしょう。

「嘘をついて人を陥れるなら自分に返ってくると考えませんでしたか？」

「は？何よ、今更お説教でも始めるの？」

「人を呪えば穴二つ。聞いた事御座いませんか？まさに今の貴女ですよ」

　私の言葉を聞いてカッとなった彼女はソファーから立ち上がりましたが、殿下と学園長の護衛の方々に肩を捕まれ動けなくなりました。

「何よ！離して！この女一発殴らなきゃ気がすまないわ！」

「彼女への暴行未遂と不敬罪だ。確保」

　殿下の静かな声は部屋の中にしっかり届きました。暴れる事を止めて驚きの表情で殿下を見るウォーレ令嬢と、口元を抑え冷や汗を流しながら震えるハンソン子息。

「先日、アーデン令嬢は私の婚約者に決定した」

　ハウル殿下の静かな声が大きく響きましたが、口を開けて固まる二人に淡々と事実だけを述べています。これは大分お怒りのようですね。

「そして、既に議会で承認が降りている事だが、一年後にアーデン家は陞爵し伯爵となる」

「二階級……馬鹿な」

　余り例の見ない二階級の陞爵に、ハンソン子息が小さな声で否定しましたが殿下はそのまま話を続けています。

　アーデン家は国の食糧難に対して作物の品種改良を数世代に渡り行った結果、国全体を潤す農作物の生産と出荷を成し遂げ、農作物の新たな長期保存方法を確立させた功績で陞爵が決定したのです。

「以上がアーデン家の功績だ。そして、ルルーシュ・アーデン令嬢個人として別の功績が認められ、私からの希望もあり今回の婚約と相成った」

「は？殿下が希望した？」

　ウォーレ令嬢の呟きに殿下は腕を組み不機嫌も露に大きく頷いていますわ。でも、ウォーレ令嬢は首を横に振って認めようとしませんわ。

「そうだ。貴様の様な嘘つき女狐に何の感情もない。ありもしない虐め等、彼女への名誉毀損も追加だ」

「邪魔ばかりしてアンタ何なのよ！」

　ウォーレ令嬢が私に向かって唾を飛ばしながら叫びます。まぁ、わざと煽った私が言うのも何ですか煩いです。

「何なのと言われましても、私は私。ただのルルーシュ・アーデンですわ」

　呻き声を出しただけで次の言葉が出ないウォーレ令嬢を殿下は護衛騎士へ城内の牢屋に入れる様に伝えました。ハンソン子息も引き摺られながら連れ出される彼女をだだ見詰め状況が理解出来ているのか不明ですわ。

「貴様も無関係ではない。彼女には婚約者と内定した瞬間から王家の影が護衛兼監視として付けられている。虐め等すれば王族不適行動として報告がされているはすだが」

　殿下がハンソン子息へ向けた言葉を切ると天井から黒装束の性別不明の人が降りて来て、殿下に書類を渡すとあたまを下げ直ぐに消えてしまいました。静かに書類を読む殿下が紙を捲る音と別にカタカタと小さな音が部屋に響いています。ハンソン子息はやっと自分がやった事の重大さに気づいたようですがもう遅いですわ。文官を纏め上げる殿下は敵と見倣した相手に容赦は致しませんもの。

「貴様は随分と人を馬鹿にしてきたのだな。市民からの苦情の多さ。父親からは次に問題を起こせば辺境の地にて隠居が確定すると」

「申し訳け御座いませんでした！」



　ハンソン子息が大きな声で謝罪をし頭を深々と下げた相手はハウル殿下でした。