12 / 15
その後の彼ら① side シューザ
しおりを挟む
自分が両親から引き継ぎなしに丸投げされた仕事に悪戦苦闘する中、クロードを甘やかす二人の姿に苛立ちと共に弟が哀れだった。ろくに教育もされず婿養子の意味すら理解せず遊び歩き、相手の家で苦労する事は目に見えていた。
学校を卒業後、クロードに家の仕事を手伝わせると何も出来ず、学校の成績と評価と全く一致しない。不信に思い調査をすれば賄賂で成績を保ち仕事すら教えていなかった事実を知った時、私の中にあった感情は"無"だった。家族としての愛情も怒りも何も浮かばない自分に驚くと同時に、この五年の間に私の家族はリリアンとヴォルフだけになっていたのだ。
「何時までこんな所に閉じ込める気か!」
父が煩くて困ると言う使用人の訴えを聞いて館に顔を出せば、開口一番に言った言葉がコレとは本当にこれが一度は当主を勤めた男か?
いまだに自分の愚かさを自覚しない父を聞こえる様にため息を吐くと、後ろに控えていた使用人に合図をして猿轡をはめて黙らせた。それでも体を捻り呻く父を無視して私は言葉を続けた。
「まだ分かっていない様なので説明します。貴方はこれから逮捕されます。息子の成績を金で買っていたのですから当然ですよね?」
私が賄賂の件を口に出せば、目を見開き動きを止める。やっと自分の状況を理解したのか目に涙を溜めて顔を横に振った。
「貴方が否定しようが拒否しようが逮捕は免れません。当主の仕事を息子である私に丸投げしていた事も報告済みです」
私がそこまで説明したと同時に館の呼び鈴がなった。窓の外に視線を向けると、騎士団が護送様の馬車まで準備して迎えに来た様だ。
「貴方がクロードの教育を放棄したツケです。罰を受けて頂きますよ」
「うぅぅ!うー!」
猿轡のお陰で騒がしくされずに済んでいると、ドアのノックと共に騎士が部屋に入って来る。猿轡に驚きながらも、私に頭を下げた騎士はヴォルフの元同僚だった。
「罪状は贈収賄と公文書偽造と育児放棄の3つで間違い無いでしょうか?」
「はい。具体的には、学園教師の買収と息子に作成させた書類を自分の名前に書き換えた公文書偽造。そして、三男に対する教育の義務を怠った育児放棄です」
騎士の罪状の頷くと彼が敬礼をした後、後ろについて来ていた若い騎士と共に父を拘束した。暴れながら私に何か言う父が鬱陶しくて視線を向けると、期待の籠る眼差しを向けられた。
「気持ち悪い顔をしないで頂きたい。貴族特例の減刑は貴方には適用されません。この五年ほど仕事をしていたのは私なのですから」
「うぅぅ!」
私の言葉を聞いて更に大きな唸り声を上げた父に、騎士の拘束が強くなった。痛いのか大人しくなった父に、一つ伝え忘れていた事を思い出す。
「あぁ、そうでした。母も一緒に逮捕されますから安心して下さい。お二人仲良く労役について罪を償い二度と顔を見せないで下さい」
そう言ったと同時に項垂れ抵抗を止め力が抜けた父を、騎士が引きずる様に護送馬車に乗せてドアを閉めた。もう一度、私に頭を下げた騎士はゆっくりと馬車を走らせ徐々に視界から消えていった。我が家のお荷物が片付いた事に安堵の息を吐き出すと、建物の影からリリアンが出てきて私を抱き締めた。
「お疲れ様」
その一言が虚しさで重い心を軽くする。布越しに伝わる彼女の体温に、強張っていた肩の力が抜けた。
「ありがとう」
学校を卒業後、クロードに家の仕事を手伝わせると何も出来ず、学校の成績と評価と全く一致しない。不信に思い調査をすれば賄賂で成績を保ち仕事すら教えていなかった事実を知った時、私の中にあった感情は"無"だった。家族としての愛情も怒りも何も浮かばない自分に驚くと同時に、この五年の間に私の家族はリリアンとヴォルフだけになっていたのだ。
「何時までこんな所に閉じ込める気か!」
父が煩くて困ると言う使用人の訴えを聞いて館に顔を出せば、開口一番に言った言葉がコレとは本当にこれが一度は当主を勤めた男か?
いまだに自分の愚かさを自覚しない父を聞こえる様にため息を吐くと、後ろに控えていた使用人に合図をして猿轡をはめて黙らせた。それでも体を捻り呻く父を無視して私は言葉を続けた。
「まだ分かっていない様なので説明します。貴方はこれから逮捕されます。息子の成績を金で買っていたのですから当然ですよね?」
私が賄賂の件を口に出せば、目を見開き動きを止める。やっと自分の状況を理解したのか目に涙を溜めて顔を横に振った。
「貴方が否定しようが拒否しようが逮捕は免れません。当主の仕事を息子である私に丸投げしていた事も報告済みです」
私がそこまで説明したと同時に館の呼び鈴がなった。窓の外に視線を向けると、騎士団が護送様の馬車まで準備して迎えに来た様だ。
「貴方がクロードの教育を放棄したツケです。罰を受けて頂きますよ」
「うぅぅ!うー!」
猿轡のお陰で騒がしくされずに済んでいると、ドアのノックと共に騎士が部屋に入って来る。猿轡に驚きながらも、私に頭を下げた騎士はヴォルフの元同僚だった。
「罪状は贈収賄と公文書偽造と育児放棄の3つで間違い無いでしょうか?」
「はい。具体的には、学園教師の買収と息子に作成させた書類を自分の名前に書き換えた公文書偽造。そして、三男に対する教育の義務を怠った育児放棄です」
騎士の罪状の頷くと彼が敬礼をした後、後ろについて来ていた若い騎士と共に父を拘束した。暴れながら私に何か言う父が鬱陶しくて視線を向けると、期待の籠る眼差しを向けられた。
「気持ち悪い顔をしないで頂きたい。貴族特例の減刑は貴方には適用されません。この五年ほど仕事をしていたのは私なのですから」
「うぅぅ!」
私の言葉を聞いて更に大きな唸り声を上げた父に、騎士の拘束が強くなった。痛いのか大人しくなった父に、一つ伝え忘れていた事を思い出す。
「あぁ、そうでした。母も一緒に逮捕されますから安心して下さい。お二人仲良く労役について罪を償い二度と顔を見せないで下さい」
そう言ったと同時に項垂れ抵抗を止め力が抜けた父を、騎士が引きずる様に護送馬車に乗せてドアを閉めた。もう一度、私に頭を下げた騎士はゆっくりと馬車を走らせ徐々に視界から消えていった。我が家のお荷物が片付いた事に安堵の息を吐き出すと、建物の影からリリアンが出てきて私を抱き締めた。
「お疲れ様」
その一言が虚しさで重い心を軽くする。布越しに伝わる彼女の体温に、強張っていた肩の力が抜けた。
「ありがとう」
163
お気に入りに追加
415
あなたにおすすめの小説
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける
基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。
「王太子殿下。お初にお目にかかります」
聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。
「魅了だって?王族が…?ありえないよ」
男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。
聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。
王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。
その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。
いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。
「あの女…っ王族に魅了魔法を!」
「魅了は解けましたか?」
「ああ。感謝する」
王太子はすぐに行動にうつした。
王女殿下を優先する婚約者に愛想が尽きました もう貴方に未練はありません!
灰銀猫
恋愛
6歳で幼馴染の侯爵家の次男と婚約したヴィオラ。
互いにいい関係を築いていると思っていたが、1年前に婚約者が王女の護衛に抜擢されてから雲行きが怪しくなった。儚げで可憐な王女殿下と、穏やかで見目麗しい近衛騎士が恋仲で、婚約者のヴィオラは二人の仲を邪魔するとの噂が流れていたのだ。
その噂を肯定するように、この一年、婚約者からの手紙は途絶え、この半年ほどは完全に絶縁状態だった。
それでも婚約者の両親とその兄はヴィオラの味方をしてくれ、いい関係を続けていた。
しかし17歳の誕生パーティーの日、婚約者は必ず出席するようにと言われていたパーティーを欠席し、王女の隣国訪問に護衛としてついて行ってしまった。
さすがに両親も婚約者の両親も激怒し、ヴィオラももう無理だと婚約解消を望み、程なくして婚約者有責での破棄となった。
そんな彼女に親友が、紹介したい男性がいると持ち掛けてきて…
3/23 HOTランキング女性向けで1位になれました。皆様のお陰です。ありがとうございます。
24.3.28 書籍化に伴い番外編をアップしました。
愛していたのは昨日まで
豆狸
恋愛
婚約破棄された侯爵令嬢は聖術師に頼んで魅了の可能性を確認したのだが──
「彼らは魅了されていませんでした」
「嘘でしょう?」
「本当です。魅了されていたのは……」
「嘘でしょう?」
なろう様でも公開中です。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!
豆狸
恋愛
「ガルシア侯爵令嬢サンドラ! 私、王太子フラカソは君との婚約を破棄する! たとえ王太子妃になったとしても君のような傲慢令嬢にはなにも出来ないだろうからなっ!」
私は殿下にお辞儀をして、卒業パーティの会場から立ち去りました。
人生に一度の機会なのにもったいない?
いえいえ。実は私、三度目の人生なんですの。死ぬたびに時間を撒き戻しているのですわ。
【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?
水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。
正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。
その1ヶ月後。
ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。
ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
*HOTランキング10位(2021.5.29)
読んで下さった読者の皆様に感謝*.*
HOTランキング1位(2021.5.31)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる