3 / 15
2
しおりを挟む
自宅に帰ると出迎えてくれた侍女に両親の所在を確認すると、幸い帰宅してサロンでお茶をしていると教えてくれた。せっかくゆっくりしている所に申し訳ないけど、両親が揃っているならチャンスよね。
「両親に話があるから着替えるまでサロンで待っていて欲しいと伝えて頂戴」
「畏まりました」
侍女の横に控えていた執事が返事をすると、サロンへ向かって歩き出した。その背中を見送ってから、自室に戻ると直ぐにドレスを着替えて両親の元へ向かう。両親と話したら煩わしい全てが終わると思うと、足取りは軽かった。
「お父様、お母様、ハリエット参りました」
ノックと共に声を掛けると中から直ぐに返事が聞こえた。中に入れば早い帰宅にお父様の眉間には深いシワが刻まれていた。
「お帰りなさいハリエット」
お父様の不機嫌な態度を気にすることなく、お母様が私に笑顔で声を掛けた。帰りの挨拶をしながら両親の向かいの席に座ると、今日の出来事を一通り話した。
「従者に嘘までつかせて逃げたか」
「はい、続行は不可能だと思います」
「あちらのご両親からも次男へ変更手続きの伺いが届いた所よ」
お母様の言葉に引っ掛かりを覚える。再教育をすると言った本人達が見放す様な人間を、私に押し付けようとしていたの?
「次男が婚約に乗り気らしくて、あちらのご両親もそれならと手紙を寄越した」
お母様の言葉を補足するようにお父様が言葉を続ける。その言葉も私には信じられないものだった。
「次男のヴォルフ様が乗り気ですか?今日、お会いしましたが終始無言でしたよ」
「え?そうなの。手紙には昔から貴女に気がある様な事が書いてあったわよ」
お母様の言葉に思わず首を傾げて考える。昔から?初めて会ったのはクロード様との顔合わせの時よね。……その頃からずっとあの方は無言でしたわね。そう言えば。
「初めて顔合わせした時から寡黙な方でしたが、それ以前に何処かでお会いしていましたか?」
両親の表情が一瞬、強張ったが直ぐに普段通りの表情に戻ると首を横に振って否定した。今の変化は気になるけど、触れて欲しくなさそうね。……私、何か忘れているのかしら?
「そうですか。交代でも構いませんが、ヴォルフ様は何も仰らないので、御本人に意思を確認してからが宜しいかと思いますわ」
「そうだな。交代して結局、次も駄目でしたではハリエットが苦労するだけだしな」
「そうですわね。それに次男は騎士団に所属されていましたわ。婿になるならそちらとの兼ね合いもありますわ」
両親の話を聞けば聞くほど面倒な事になりそうで、私は早く白紙にしたかったけど相手の事もあるから後日、当事者を交えて話し合いをする事に決まった。
「あちらと日程を調整して連絡するから、クロード君との交流はしなくて良い」
お父様の最後の言葉にやっと肩の荷が降りた気がした。毎回、彼がやらかす度に慌てる周りをフォローする事も、変わりに謝る必要もないのだから。
「両親に話があるから着替えるまでサロンで待っていて欲しいと伝えて頂戴」
「畏まりました」
侍女の横に控えていた執事が返事をすると、サロンへ向かって歩き出した。その背中を見送ってから、自室に戻ると直ぐにドレスを着替えて両親の元へ向かう。両親と話したら煩わしい全てが終わると思うと、足取りは軽かった。
「お父様、お母様、ハリエット参りました」
ノックと共に声を掛けると中から直ぐに返事が聞こえた。中に入れば早い帰宅にお父様の眉間には深いシワが刻まれていた。
「お帰りなさいハリエット」
お父様の不機嫌な態度を気にすることなく、お母様が私に笑顔で声を掛けた。帰りの挨拶をしながら両親の向かいの席に座ると、今日の出来事を一通り話した。
「従者に嘘までつかせて逃げたか」
「はい、続行は不可能だと思います」
「あちらのご両親からも次男へ変更手続きの伺いが届いた所よ」
お母様の言葉に引っ掛かりを覚える。再教育をすると言った本人達が見放す様な人間を、私に押し付けようとしていたの?
「次男が婚約に乗り気らしくて、あちらのご両親もそれならと手紙を寄越した」
お母様の言葉を補足するようにお父様が言葉を続ける。その言葉も私には信じられないものだった。
「次男のヴォルフ様が乗り気ですか?今日、お会いしましたが終始無言でしたよ」
「え?そうなの。手紙には昔から貴女に気がある様な事が書いてあったわよ」
お母様の言葉に思わず首を傾げて考える。昔から?初めて会ったのはクロード様との顔合わせの時よね。……その頃からずっとあの方は無言でしたわね。そう言えば。
「初めて顔合わせした時から寡黙な方でしたが、それ以前に何処かでお会いしていましたか?」
両親の表情が一瞬、強張ったが直ぐに普段通りの表情に戻ると首を横に振って否定した。今の変化は気になるけど、触れて欲しくなさそうね。……私、何か忘れているのかしら?
「そうですか。交代でも構いませんが、ヴォルフ様は何も仰らないので、御本人に意思を確認してからが宜しいかと思いますわ」
「そうだな。交代して結局、次も駄目でしたではハリエットが苦労するだけだしな」
「そうですわね。それに次男は騎士団に所属されていましたわ。婿になるならそちらとの兼ね合いもありますわ」
両親の話を聞けば聞くほど面倒な事になりそうで、私は早く白紙にしたかったけど相手の事もあるから後日、当事者を交えて話し合いをする事に決まった。
「あちらと日程を調整して連絡するから、クロード君との交流はしなくて良い」
お父様の最後の言葉にやっと肩の荷が降りた気がした。毎回、彼がやらかす度に慌てる周りをフォローする事も、変わりに謝る必要もないのだから。
574
お気に入りに追加
593
あなたにおすすめの小説

旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

愛していたのは昨日まで
豆狸
恋愛
婚約破棄された侯爵令嬢は聖術師に頼んで魅了の可能性を確認したのだが──
「彼らは魅了されていませんでした」
「嘘でしょう?」
「本当です。魅了されていたのは……」
「嘘でしょう?」
なろう様でも公開中です。

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける
基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。
「王太子殿下。お初にお目にかかります」
聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。
「魅了だって?王族が…?ありえないよ」
男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。
聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。
王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。
その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。
いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。
「あの女…っ王族に魅了魔法を!」
「魅了は解けましたか?」
「ああ。感謝する」
王太子はすぐに行動にうつした。

あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

彼女は彼の運命の人
豆狸
恋愛
「デホタに謝ってくれ、エマ」
「なにをでしょう?」
「この数ヶ月、デホタに嫌がらせをしていたことだ」
「謝ってくだされば、アタシは恨んだりしません」
「デホタは優しいな」
「私がデホタ様に嫌がらせをしてたんですって。あなた、知っていた?」
「存じませんでしたが、それは不可能でしょう」

あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる