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龍人の村編
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翌日、ソフィア様から許可が出てやっとドラゴンちゃんと契約する事になった。どんな準備があるのかと、期待していたら小さなナイフを渡されただけだった。
「え?ナイフで何をするんですか?」
「指先から少しだけ血を取って自分の魔力で包んで、その血を交換してお互いに飲んだら契約完了だよ」
使い魔契約とは違い相手の意志を縛る様な魔法陣は必要無いと聞いて驚いた。学園内で使い魔を連れている人達は皆、魔法陣に苦労したと言っていたからだ。ソフィア様の話では、魔物でも意志のはっきりしている上位種なら、ドラゴンと同じ血の契約で大丈夫らしい。
「……初めて知りました」
「学園の一部の“魔物に意志はない”と否定的なバカ共が教えていないだけさ」
えー、教えない理由が危険とかじゃ無くて、講師が否定しているからってだけなんて。学園の受講料って結構、高っかはずなのに。
「そんな事より名前は決まったのかい?」
「はい、ミュゲにしようと思ってます」
「おや、花の名前かい」
「可愛いですよね。でも毒もあるから危険が付きまとう彼女には可愛くも強かに生きてほしいから」
ポンと私の肩に手を置いたソフィア様がニヤリと笑って頷いで、後ろに控えているリュカ様も無言で頷いた。大丈夫そうかな?
「ドラゴンちゃん、貴女の名前はミュゲのミューちゃんよ。どう?」
「キュー」
名前を気に入ったのか小さな羽を羽ばたかせ私の回りをクルッと一回り飛んだ後、私の正面に来ると早速、真っ赤な玉を作り出してきた。はやっ!待って、待って!私はまだ何も準備出来てないの!!
慌てて渡されたナイフで指先を軽く切って血を出す。えっと、魔力で包んで……飲みやすい様に丸く丸く。あー!焦ると余計に丸くならないわ。
「慌てなくていい。落ち着きなルナ」
「は、はい……えっと……で、出来ました!」
ソフィア様からの一言で落ち着きを取り戻し、やっと真っ赤な玉を作ると互いに交換して勢いのまま飲み込んだ。口の中でスルリと溶けた玉に驚いていると、私の中から魔力の帯が伸びてミューと繋がり溶け込む感覚が伝わる。その繋がった帯から魔力が流れ彼女に吸い込まれていくけど、魔力が減ったはずなのに何故か私の体は軽くなって驚いた。
「あれ?」
「どうしたんだい?契約は無事に完了したみたいだね」
「はい、でも……魔力が減ったはずなのに体が軽いです」
私の言葉を聞いて一瞬、目を見開いたソフィア様が体調を確める為に手を取った。スーとソフィア様の魔力が全身を包み隅々まで確認すると肩を撫で下ろした。
「大丈夫だよ。体が軽いのは完全に回復した魔力に馴れていないから逆に減った事で丁度良い量になったんだね」
「あー、呪具に取られていたからですか?」
「そうさ。あの呪具は常に魔力を吸収して相手に送っていたんだろう」
“常に”と聞いて思い返すしても、訓練の翌日は朝からダルかったりしたぐらいしか思い当たらない。自覚の無かった私には何度言われても実感が湧かない。首を傾げるだけの私にソフィア様は苦笑いしていた。
「過去を気にしてたって仕方ない。早速、れ……」
ソフィア様の言葉が途切れて視線が私の横にいるミューに固定される。そんな様子を不思議に思って私も視線を動かすと、真っ白い光に包まれているミューがいた。!?何?今度は何なの!!
「リュカ、これは擬態かい?」
「恐らく。ネグルも一年程擬態していた」
二人だけは何となく予測がついているのか、驚いてはいるけど焦る事なく見守っている。説明を求めて二人に視線を向けると、子供のドラゴンに時々見られる自己防衛本能で起きる“擬態”らしい。擬態と言っても何か別の生き物になるとかではなく大きさが小さくなるぐらいらしいけど、目の前のミューは光の中で体の輪郭を崩し、ドラゴンだった事が確認できなくなっている。三人で黙って見ていると、徐々に光が消えコウモリの様な羽の生えた白猫がいた。
「え?ミューよね?」
「うん、そうだよ。この姿ならルナとずっと一緒に居られるでしょう」
「し…喋った⁉」
ソフィア様から深いため息が聞こえたけどミューは御機嫌に鼻唄を歌いながら私の回りを飛んでいる。
「……翁に連絡だな」
リュカ様がゆっくり息を吐き出すと、棚から龍玉を取り出し翁さんと繋いで状況を説明しているけどミューは暢気に私に体を擦り寄せている。
『ほう……珍しいがただの擬態じゃ。気にせんで大丈夫じゃい』
「珍しいってネグルの時は人間の言葉なんて話さなかったぞ」
『珍しいと言ったじゃろう。書物かお嬢ちゃんの記憶を参考にしだけじゃ安心せい』
翁さんの話では契約者や育つ環境で擬態する姿は変わるらしい。因みにネグルは小さくなってリュカ様の肩に乗って一年間くらい過ごしたらしい。
『人間の多い場所で過ごすなら、この姿の方が何かと都合も良かろう』
「まぁ……確かにな」
翁さんの言葉に同意はするけど、この空飛ぶ白猫がドラゴンって……誰も信じない気がするわ。
「え?ナイフで何をするんですか?」
「指先から少しだけ血を取って自分の魔力で包んで、その血を交換してお互いに飲んだら契約完了だよ」
使い魔契約とは違い相手の意志を縛る様な魔法陣は必要無いと聞いて驚いた。学園内で使い魔を連れている人達は皆、魔法陣に苦労したと言っていたからだ。ソフィア様の話では、魔物でも意志のはっきりしている上位種なら、ドラゴンと同じ血の契約で大丈夫らしい。
「……初めて知りました」
「学園の一部の“魔物に意志はない”と否定的なバカ共が教えていないだけさ」
えー、教えない理由が危険とかじゃ無くて、講師が否定しているからってだけなんて。学園の受講料って結構、高っかはずなのに。
「そんな事より名前は決まったのかい?」
「はい、ミュゲにしようと思ってます」
「おや、花の名前かい」
「可愛いですよね。でも毒もあるから危険が付きまとう彼女には可愛くも強かに生きてほしいから」
ポンと私の肩に手を置いたソフィア様がニヤリと笑って頷いで、後ろに控えているリュカ様も無言で頷いた。大丈夫そうかな?
「ドラゴンちゃん、貴女の名前はミュゲのミューちゃんよ。どう?」
「キュー」
名前を気に入ったのか小さな羽を羽ばたかせ私の回りをクルッと一回り飛んだ後、私の正面に来ると早速、真っ赤な玉を作り出してきた。はやっ!待って、待って!私はまだ何も準備出来てないの!!
慌てて渡されたナイフで指先を軽く切って血を出す。えっと、魔力で包んで……飲みやすい様に丸く丸く。あー!焦ると余計に丸くならないわ。
「慌てなくていい。落ち着きなルナ」
「は、はい……えっと……で、出来ました!」
ソフィア様からの一言で落ち着きを取り戻し、やっと真っ赤な玉を作ると互いに交換して勢いのまま飲み込んだ。口の中でスルリと溶けた玉に驚いていると、私の中から魔力の帯が伸びてミューと繋がり溶け込む感覚が伝わる。その繋がった帯から魔力が流れ彼女に吸い込まれていくけど、魔力が減ったはずなのに何故か私の体は軽くなって驚いた。
「あれ?」
「どうしたんだい?契約は無事に完了したみたいだね」
「はい、でも……魔力が減ったはずなのに体が軽いです」
私の言葉を聞いて一瞬、目を見開いたソフィア様が体調を確める為に手を取った。スーとソフィア様の魔力が全身を包み隅々まで確認すると肩を撫で下ろした。
「大丈夫だよ。体が軽いのは完全に回復した魔力に馴れていないから逆に減った事で丁度良い量になったんだね」
「あー、呪具に取られていたからですか?」
「そうさ。あの呪具は常に魔力を吸収して相手に送っていたんだろう」
“常に”と聞いて思い返すしても、訓練の翌日は朝からダルかったりしたぐらいしか思い当たらない。自覚の無かった私には何度言われても実感が湧かない。首を傾げるだけの私にソフィア様は苦笑いしていた。
「過去を気にしてたって仕方ない。早速、れ……」
ソフィア様の言葉が途切れて視線が私の横にいるミューに固定される。そんな様子を不思議に思って私も視線を動かすと、真っ白い光に包まれているミューがいた。!?何?今度は何なの!!
「リュカ、これは擬態かい?」
「恐らく。ネグルも一年程擬態していた」
二人だけは何となく予測がついているのか、驚いてはいるけど焦る事なく見守っている。説明を求めて二人に視線を向けると、子供のドラゴンに時々見られる自己防衛本能で起きる“擬態”らしい。擬態と言っても何か別の生き物になるとかではなく大きさが小さくなるぐらいらしいけど、目の前のミューは光の中で体の輪郭を崩し、ドラゴンだった事が確認できなくなっている。三人で黙って見ていると、徐々に光が消えコウモリの様な羽の生えた白猫がいた。
「え?ミューよね?」
「うん、そうだよ。この姿ならルナとずっと一緒に居られるでしょう」
「し…喋った⁉」
ソフィア様から深いため息が聞こえたけどミューは御機嫌に鼻唄を歌いながら私の回りを飛んでいる。
「……翁に連絡だな」
リュカ様がゆっくり息を吐き出すと、棚から龍玉を取り出し翁さんと繋いで状況を説明しているけどミューは暢気に私に体を擦り寄せている。
『ほう……珍しいがただの擬態じゃ。気にせんで大丈夫じゃい』
「珍しいってネグルの時は人間の言葉なんて話さなかったぞ」
『珍しいと言ったじゃろう。書物かお嬢ちゃんの記憶を参考にしだけじゃ安心せい』
翁さんの話では契約者や育つ環境で擬態する姿は変わるらしい。因みにネグルは小さくなってリュカ様の肩に乗って一年間くらい過ごしたらしい。
『人間の多い場所で過ごすなら、この姿の方が何かと都合も良かろう』
「まぁ……確かにな」
翁さんの言葉に同意はするけど、この空飛ぶ白猫がドラゴンって……誰も信じない気がするわ。
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