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婚約破棄編
12 side リュカ
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「この話を聞いても侯爵は、まだ呪具と知らずに購入し二人に渡したと申すか?」
質問に答えない侯爵夫婦の態度に、陛下の機嫌は更に悪くなる。コツコツと指で机を鳴らし返答を待つが、彼らは何も答えなかった。
「はぁ……リュカに聞きたい。子息の魔法が使えたのは呪具の影響か?」
無言を貫く侯爵夫婦に視線を向けたままの陛下が、魔法と呪具の関係を確認してくる。無言を貫けば誤魔化せると考えている様子の侯爵は、俺を憎らしげに睨んできた。
くだらない。この程度で脅しに等なるものか。
「はい、呪具により魔力を奪っていたが為です。現在は呪具の繋がりを強制的に断ちましたので、魔法は使えなくなっております」
「バカな!今、初級は使えると講師が申したではないか!」
椅子から立ち上がった侯爵は呪具の影響を否定する事はなく、使えないと言った事へ抗議してくる。自分が息子に渡した呪具について詳しく理解していない様に見える態度に、疑問が浮かんだが無視して話を続けた。
「私の解析では呪具は神経を侵食しており、魔力の少ない子息の身体は耐えきれず魔力は消失。呪具は指に食い込み外せなくなっております」
「そうか。では子息は二度と魔法が使えないで間違いないのだな」
「はい、二度と使えません」
俺と陛下の会話を聞いて侯爵夫人は泣き出したが、陛下は冷めた視線を向けただけで侯爵の前に婚約破棄の書類を差し出した。
「これ程の事態だ。よもや撤回は出来ぬぞ侯爵。他人の魔力を奪い続けた罪は重い」
ドサッと椅子に崩れる様に座り口を動かすだけの侯爵に、陛下の側近が無理やりペンを持たせた。離れた壁際から見ても震える手を何度も止めながら侯爵は書類にサインをすると、真横に立っていた側近が直ぐに書類を回収して陛下に渡した。
「これにてニールセン子爵家とフォーラス侯爵家の婚約は破棄された。うぬ等の沙汰は後日申し渡す故に自宅にて謹慎せよ」
陛下の宣言に対して、侯爵夫婦以外の部屋にいた人間は了承の意味を込めて頭を下げる。ただ、黙って首を横に振る侯爵と泣き続ける夫人を、兵士が両脇から支え部屋から連れ出した。彼らは侯爵夫婦を自宅に送り届けた後、そのまま逃走防止の警備の任に就く。やっと静かになった室内で陛下はゆっくり息を吐き出した。
「リュカよ。呪具の被害者の令嬢はどんな様子だ?」
「彼女は一時、制御不能となりましたが、ケビン団長が魔力封じを施し城内の結界が張ってある客室にて休んでおります」
「そうか……体調に問題は無さそうか?」
「はい、今のところ異常は見られませんが、早急に長老の元で制御を学ぶべきと考えます」
「それ程の魔力か……モノになると良いな。お前は暫く令嬢について定期的に報告せよ」
「は!承知致しました」
俺の返事を聞いた後、陛下は大きく頷き側近と共に部屋を後にした。さて村に行くなら副隊長に仕事の引き継ぎと……
「リュカ……」
この後に必要な引き継ぎや申請書類を考えていると、後ろからアランの情けない声が聞こえて振り返る。視線の先には床の上に座り込む友人がいた。
「お前は、何やってんだ?」
「……緊張しすぎて腰抜けた」
「……情けない」
立てなくなった友人を近くの椅子に座らせると、ルナ嬢の休学手続きを彼に頼む。友人が歩ける様になってから別れると、先ずは長老に連絡する為に執務室へと向かった。
さて、今日は徹夜かな。
質問に答えない侯爵夫婦の態度に、陛下の機嫌は更に悪くなる。コツコツと指で机を鳴らし返答を待つが、彼らは何も答えなかった。
「はぁ……リュカに聞きたい。子息の魔法が使えたのは呪具の影響か?」
無言を貫く侯爵夫婦に視線を向けたままの陛下が、魔法と呪具の関係を確認してくる。無言を貫けば誤魔化せると考えている様子の侯爵は、俺を憎らしげに睨んできた。
くだらない。この程度で脅しに等なるものか。
「はい、呪具により魔力を奪っていたが為です。現在は呪具の繋がりを強制的に断ちましたので、魔法は使えなくなっております」
「バカな!今、初級は使えると講師が申したではないか!」
椅子から立ち上がった侯爵は呪具の影響を否定する事はなく、使えないと言った事へ抗議してくる。自分が息子に渡した呪具について詳しく理解していない様に見える態度に、疑問が浮かんだが無視して話を続けた。
「私の解析では呪具は神経を侵食しており、魔力の少ない子息の身体は耐えきれず魔力は消失。呪具は指に食い込み外せなくなっております」
「そうか。では子息は二度と魔法が使えないで間違いないのだな」
「はい、二度と使えません」
俺と陛下の会話を聞いて侯爵夫人は泣き出したが、陛下は冷めた視線を向けただけで侯爵の前に婚約破棄の書類を差し出した。
「これ程の事態だ。よもや撤回は出来ぬぞ侯爵。他人の魔力を奪い続けた罪は重い」
ドサッと椅子に崩れる様に座り口を動かすだけの侯爵に、陛下の側近が無理やりペンを持たせた。離れた壁際から見ても震える手を何度も止めながら侯爵は書類にサインをすると、真横に立っていた側近が直ぐに書類を回収して陛下に渡した。
「これにてニールセン子爵家とフォーラス侯爵家の婚約は破棄された。うぬ等の沙汰は後日申し渡す故に自宅にて謹慎せよ」
陛下の宣言に対して、侯爵夫婦以外の部屋にいた人間は了承の意味を込めて頭を下げる。ただ、黙って首を横に振る侯爵と泣き続ける夫人を、兵士が両脇から支え部屋から連れ出した。彼らは侯爵夫婦を自宅に送り届けた後、そのまま逃走防止の警備の任に就く。やっと静かになった室内で陛下はゆっくり息を吐き出した。
「リュカよ。呪具の被害者の令嬢はどんな様子だ?」
「彼女は一時、制御不能となりましたが、ケビン団長が魔力封じを施し城内の結界が張ってある客室にて休んでおります」
「そうか……体調に問題は無さそうか?」
「はい、今のところ異常は見られませんが、早急に長老の元で制御を学ぶべきと考えます」
「それ程の魔力か……モノになると良いな。お前は暫く令嬢について定期的に報告せよ」
「は!承知致しました」
俺の返事を聞いた後、陛下は大きく頷き側近と共に部屋を後にした。さて村に行くなら副隊長に仕事の引き継ぎと……
「リュカ……」
この後に必要な引き継ぎや申請書類を考えていると、後ろからアランの情けない声が聞こえて振り返る。視線の先には床の上に座り込む友人がいた。
「お前は、何やってんだ?」
「……緊張しすぎて腰抜けた」
「……情けない」
立てなくなった友人を近くの椅子に座らせると、ルナ嬢の休学手続きを彼に頼む。友人が歩ける様になってから別れると、先ずは長老に連絡する為に執務室へと向かった。
さて、今日は徹夜かな。
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